2008年11月25日 (火)

商社のビジネスモデル

先月の16日に早稲田大学の井深大記念ホールで、リクルートイベントとして丸紅の朝田社長との対談を実施した。
その様子が先週の読売新聞に載ったので簡単に内容を紹介しておこう。

Kigyonavi_2

一言で言えば、商社は以前のような口銭を主体としたビジネスからビジネスモデルの変更を行い、自ら投資を行ってリスクを取る形の事業へ変貌を遂げたと言うことだ。
はやりの言葉を使えば、これまでは水平分業型の事業モデルで、メーカーや小売りの間に入って販売代理や斡旋の機能を果たしていた。それに対して、最近の商社は川上や川下に出て行くことでバリューチェーンの垂直統合を目指す形に変わりつつある。具体的には天然資源の鉱区を押さえたり、港の港湾施設を自前で持ったり、流通業のSCMを自らの設備を駆使して手伝ったりしているのがわかりやすい例であろう。
そうすることによって利幅は大きくなっているかも知れないが、リスクも大きくなっていることは言うまでもない。今後の商社はこのリスクをどうコントロールするかがきわめて重要であると朝田氏も強調していた。

もう一点、私が述べたのは商社に必要な人材はこれまでの営業マンからプロデューサーに変わってきている点である。すなわち、ものを右から左へ流す人でなく、新たなビジネスを生み出せる能力を持った人が求められていると言うことである

しかし、私が商社がすごいなと思うのは、私の大学時代から「商社冬の時代」とか「商社無用論」とか叫ばれており、何度となく同じようなことを言われながらも今日に業態として生き残っていることである。これほどまでにダメだダメだと言われながらも、依然として収益を上げ続け、就職戦線での人気もかげりを見せない、きわめて希有な存在である。そういう意味できわめて生命力の強い総合商社であるが、翻って考えてみれば、商社は人が唯一の財産であり、その人材が思う存分働ける限りは商社は輝き続けるのかも知れない。結局、商社のビジネスモデルとは、人につきるのではないか。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2007年11月 1日 (木)

小さな池の大きな魚

HOYAという会社が以前掲げていた戦略をご存じだろうか?それは前社長・会長を務めた鈴木哲夫氏が提唱した「大きな池の小さな魚になるより、小さな池の大きな魚になれ」というものである。ここでいう大きな池とは、市場の大きさのことを言い、小さな魚とはその中でHOYAの占める売上の大きさのことを言う。要するに市場規模の大きなところに出て行って、売上を稼ぐより、小さな池、すなわち市場規模の小さなところで圧倒的なシェアを稼げという考え方である。
その理由は、当時のHOYAは売上も小さく、大きな市場に出て行っても大企業を相手に戦うだけの体力もなく、またいざ競争になったらひとたまりもなくやられてしまうと考えたためである。
一方で、市場規模が数百億円の市場であれば、大企業から見て全く魅力のない市場で、大企業が参入してくる恐れはない。そこで200-300億円の売上を稼ぐ方が、競争相手も強くないし、自社が成功する可能性が高いと考えたのである。
なぜ大企業が進出してこないかと言えば、売上が数千億円から数兆円の大企業にとって、新規事業といえども売上は最低でも数百億円、場合によっては1千億円程度を期待されている。そのため市場規模が5百億円の市場に参入して30%のマーケットシェアをとっても150億円しか売上が立たないところには、大企業は絶対出てこないからというものである。
こうしたやり方をとることで、HOYAはオリジナルのクリスタル製品から、半導体のフォトマスク、めがねのレンズなどで強みを発揮していった。

どうしてこんなことを思い出したかと言えば、本日の日経新聞にスズキ自動車が業績好調で、主にインドやパキスタンなどの西アジアで成功していると出ていたためである。スズキといえば日本で長らく軽自動車のトップメーカーとして君臨していたのだが、その市場をトヨタ自動車系のダイハツが荒らしにかかっている。そのため、スズキは日本市場でダイハツと利益なきシェア争いをするより、大企業がまだまだ地歩を固めていないインド市場(そこではスズキが50%のマーケットシェアを持っている)に力を入れているのだろうなと感じたからである。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2007年10月 2日 (火)

成熟市場の活性化

Wii & DS その後

本日の日経新聞朝刊に日本のゲーム市場(上半期:4-9月)が前年度に比べ22%増の2900億円強になったという記事が出ていた。内訳はハードが1380億円、ソフトがそれを上回る1540億円となっている。好調な理由が主に任天堂のWii(ウィー)と携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」にあることは、皆さんの想像通りである。

2-3年前まで国内ゲーム機市場は成熟市場どころか、若年層の減少やPCのゲームや携帯のゲームが普及することで、衰退市場だと言われていた。それが今年は過去最高だった昨年を上回る勢いと言う。
これがどうして、一転成長市場に様変わりしたかと言えば、ひとえに任天堂の開拓した新市場によると言うことが出来る。従来型のゲーム機(例えばプレイステーションやゲームボーイ)ではなかなかソニーに勝てない中で、彼らが考え出したのが、あるいは窮余の一策と呼ぶべきかもしれないが、これまでゲームをやっていなかった層にスポットライトを当てることである。とりわけ中高年と女性というのは、これまでのゲーム機市場では全く相手にされていなかったセグメントである。その結果の大ヒットが「脳トレ」だったのは皆さんもよく承知の話である。このあたりはPS3とイノベーターズジレンマの項も参考にしてください。

さて、今日の本題は成熟業界や成熟市場で悩んでいる企業の方が、再度企業を成長させようとするときにどんなオプションがあるのかということである。
一つ目は新規事業を始める。但し、自社にとって新規でもその分野に既に前からいる企業にとっては既存事業なので、成功確率は低い。
二つ目は海外進出である。これも不慣れな海外に行っても、既にいる企業と戦うことになり、しかも仕事の進め方、すなわち業界の慣習や法律・文化などが異なるので、結構苦労する。しかし、日本のメーカーの多くはこのパターンで成功してきている。造船・鉄鋼・精密機械・電気・自動車など皆このパターンである。
三つめは、M&Aである。成熟市場で過酷な競争を展開しているより、競合と一緒になった方が企業規模も大きくなるし、競争も一時的に弱まるというわけである。しかし、この考えは顧客(市場)のことを無視しているので、長い目で見て本当に成長できるのかは疑問である。
四つめは既存市場の再活性化である。例えば、昔セイコーがやった「なぜ時計も着替えないの」というキャンペーンは今も語りぐさになっている。というのも、それまで時計は一度買ったら一生もので、そう簡単には買い換えないものという認識があった。そうなると、一人に一台しか売れないし、しかも滅多に買い換え需要が発生しない。それを打ち破って、一人で複数個持ったり、ファッションとして頻繁に買い換えるようにし向けたのがこのキャンペーンである。結果として時計市場は活性化された。

今回の任天堂によるゲーム市場再活性化、あるいは自社の再成長はこの四番目のパターンと見ることが出来る。ちなみに9月29日付日経新聞に、今年の上期末での時価総額ランキングが載っていて、任天堂はなんとトヨタ、三菱UFJ、NTTについて4位というポジションにおり、キヤノン、ドコモ、ホンダ、武田薬品などを上回っている。この株価が正当かどうかは別として恐るべし任天堂である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)