昨日終了した、柔道の世界選手権では日本時選手が過去最高の10個の金メダルを獲得した。
これをもって、日本の柔道が強くなったと勘違いしてはいけない。新しいルールのおかげである。今回より各階級に二人の選手を出せるようになった、その結果世界ランキング上位選手を多く抱える日本は全階級で二人の選手をエントリーできた。
マスコミでは、これによって若手選手が抜擢できたり、代表に選ばれた選手のプレッシャーが減ったから、のびのびと出来て好成績に繋がったと書かれているが、私の見方はそうではない。これは単に確率の問題である。
具体的に検証してみよう。例えば、日本選手の平均勝率を9割とする。10試合やれば9試合勝つ=結構な強さだ。ここでは1回戦から決勝戦まで6試合あるとする、一度も負けずに6試合勝ち進んで、優勝する確率は0.9の6乗=0.53しかない。したがって、日本がいくら強い選手をエントリーしても優勝できる確率は5割しかないのである。
ところが、各階級二人ずつ出せるとしよう。そうなると、二人のうちどちらかが6戦全勝する確率は1-(1-0.53)の2乗=0.78となり、ほぼ8割になる。したがって、全階級のうち8割の階級を制覇できることになる(実際には16階級中10階級の約6割であったが)。
このロジックは日本選手が二人とも同じような強さであるという前提で初めて成り立つわけであるが、世界の他の国比べて日本の柔道選手の層が厚いのは、異論はないであろう(実際世界ランク1位だけでなく同時に2位や3位もいる階級があった)。
このことからの学びは、競争というのは自分に有利なルールで戦うのが得をすると言うことであり、日本のように選手層が厚く誰が出てもそれほどの差がない場合は、複数選手エントリーできる方式が圧倒的に有利である。逆に言えば、オリンピックのように一国一人しか出れないルールは日本柔道には不利と言える。これは偶然の結果ではなく、意図的な結果であろうが・・・。
同じオリンピックの個人競技でも陸上や水泳では一つの国から3名くらい出る競技はたくさんある。これらの分野でアメリカが強いのは偶然ではないだろう。彼らは自分たちが得意なようにルールを制定したか、あるいは自国に有利なルールのスポーツに育成のリソースを注いでいるに違いない。
企業競争でも全く同じで、誰か他社が作ったルールで戦うよりは自社の作ったルールで戦う方が有利に決まっている。あるいは自社に有利なルールに業界全体を持ち込むと言うのがセオリーである。PC業界のマイクロソフト、音楽配信のアップル、自転車業界のシマノなど、こうして成功している企業は数多く存在する。
注)本稿では、確率の数式を多少いい加減に扱ったが、主旨には影響ないと思いますので、ご容赦ください。
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