2015年2月 3日 (火)

マーケティングの嘘

久しぶりに、これはというビジネス書を読みました。

辻中俊樹さんと櫻井光行さんの二人が書いた「マーケティングの嘘」という新潮新書です。先月発売になったばかりの新刊です。

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簡単に言えば、生活日記調査という手法で消費者を観察し、そこから示唆を導き出す手法の説明なのであるが、これが面白い。

若いママは料理の手を抜いたり、ひどい食事を用意しているとか、忙しいときにはカレーライスで済ませるといった世間の常識を否定している。著者によれば、 若いママは手抜き料理なんかしていないとか、カレーは忙しいときには作らないそうだ。そして、それが生活日記という行動観察によるものなので、きわめて説得力があるのだ。

第5章 シニアが出歩くのは健康のためではないという章が秀逸である。
物事を頭だけで考え、判断してはいけないと言うことを教えてくれる本である。

本文の最後の方にある、「私たちは定量調査を否定しているわけではない。しかし、定量調査は吟味された仮説を検証するために行うものである」はまったくその通りだと思う。

アマゾンでは以下の通り

マーケティングの嘘: 団塊シニアと子育てママの真実 (新潮新書)

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2013年5月13日 (月)

海賊と呼ばれた男と永遠の0

話題の書、百田尚樹さんの「海賊と呼ばれた男」を読みました。とても面白かったです。小説ですが、実在の人物出光興産の創始者出光佐三さんの伝記小説です。

Kaizoku

権力に立ち向かっていくところが、宅急便で運輸省と闘ったヤマト運輸の小倉昌男さんや高杉さんの不撓不屈」で知られるTKC創始者の飯塚毅氏が国税庁と闘った話に通ずるものがあって、痛快で面白い。
実は私が中学生の時に出光佐三氏が私の中学に講演に来てくれて、彼が作った世界一のタンカー章丸をしてくれたのが子供心に印象に残っていて凄い人だなと思いました。
しかし、そのときはタンカーの大きさが世界一と言うことしか覚えていなくて、こんなに凄い人だったのかと改めて感心した次第です(もちろん小説上の出光氏に対してですが、かなりの真実が含まれていると思っています)。一読の価値ありです。

小説自体は、だいぶ前に読んだ北康利「白洲次郎 占領を背負った男」にきわめて近い読後感です。

ただし、百足尚樹さんの小説のレベルとしては、この海賊と呼ばれた男よりは2年ほど前に読んだ「永遠のゼロ」の方が秀逸と思います。どちらも涙なしには読めませんが、永遠のゼロの方がストーリーに優れていて、最後は本当にぼろぼろと泣きました。

Eien

話は第2次世界大戦で亡くなった祖父足跡を訪ねる話ですが、これがとても素晴らしいストーリーで、最後のどんでん返しにぐっと来ます。 

アマゾンのリンクは以下の通りです。

百田尚樹海賊と呼ばれた男」

百田尚樹「永遠の0」

高杉良不撓不屈

北康利「白洲次郎 占領を背負った男」

 

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2012年11月 2日 (金)

ビブリア古書堂の事件手帖

少し前になるが、ベストセラーになっている三上延著「ビブリア古書堂の事件手帖」を読んだ。

Koshodo

元来が本好きと言うこともあって、本屋の話はとても面白い。といっても舟を編むのような編集者の話ではなく、書店主とそこで働くアルバイトの話だ。
主人公は大学を出たがまともな就職先がなく、地元鎌倉の古書店でアルバイトしている。本を読むと頭が痛くなるという特質を持っている。一方でもう一人の主人公が栞子(しおりこ)という古書店の女主人。亡くなったお父さんの後を継いで、書店を経営するが、本に関する知識と推理力が半端でない。おまけに大変な美人。

形は推理小説のようだが、中身は殺人と言った深刻な話ではなく、どちらかというと人情ものだ。以前にも紹介した「神様のカルテ」と同じテイストを感じた。
新刊についてはそれなりに知識を持っていたが、古書の世界は全く知らなかったので、その部分も楽しめた。

既に第3作まで出ているが、あっという間に3冊とも読んでしまった。あまりに手軽に読めるので時間つぶしにもならないかも知れない。しかし、好きなタイプの本。

アマゾンのURLは以下の通り。
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)

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2012年4月10日 (火)

舟を編む

少し前に読んで感想をブログにアップしようと思っていた本が、三浦しをん著「舟を編む」だが、本日2012年度の本屋大賞に決まったというニュースを聞いて、慌てて紹介することに

Funewoamu

この本のすぐれている点は、辞書を編纂するというきわめてマニアックな世界を描きながら、辞書に人生をかけている人々の人間性に溢れる日常を結構ドラマチックに描いているところにある。

日頃あまり問題意識なく使っている辞書が実は非常に論理的でかつ地道な作業の積み重ねで作られていると言うことが分かっただけでも勉強になる小説だ。

加えて、ほんわかとした愛情物語も含まれており、結構楽しめる本に仕上がっている。読後感は、夏川草介「神様のカルテ」に大変似ている。

本屋大賞は知っている人も多いと思いますが、全国の書店員が顧客に読んで欲しい本を選ぶという賞で、過去にはテレビドラマになったものや映画化されたものも多い。
ちなみに昨年度の大賞は東川篤哉著『謎解きはディナーのあとで』(小学館)、これもテレビドラマ化された。
         
テレビは見ていないが、もちろん本は読んでおり、ごく気楽に読めるエンタテイメント小説だ。
書店員が選ぶだけあって、他の文芸賞とは違って、読みやすいものが多いのが特徴だ。

今年の賞の詳細下記のURLをどうぞ。
http://www.hontai.or.jp/news/index.html

http://www.hontai.or.jp/about/index.html

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2012年2月19日 (日)

再生可能エネルギーがわかる

私の知人の西脇さんが書いた日経文庫「再生可能エネルギーがわかる」を読了。

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原発事故の影響もあって、自然エネルギーに対する関心は非常に高いですが、その現実や可能性をきちんと理解している人は少ないのではないかと思います。
私もそうですが、どうしても自分の感覚に基づいた議論になりがちです。

そうした人にとって、この本は太陽や水、風、地熱など様々な分野の再生可能エネルギーについて、現状どのようになっており、何が課題で、どのように考えればいいかわかりやすく解説されています。
入門書としてはまさに適切ではないかと思います。私も勉強になりました。

これを書いたのが元興銀のバンカーだった西脇さんですから驚きですが、彼は他にもレアメタル・レアアースに関する入門書も書いており、多才ぶりを発揮しています。

ところで、昨日まで上海と香港へ出張に行ってましたが、相変わらず現地はすごいエネルギーです。機会があれば、こちらもブログにアップしたいと思っています。

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2011年8月18日 (木)

最後の証人

いつもなら夏休みの真っ最中で長野の山で涼しい生活を送っているはずが、今年は事情があって東京から離れられず。あまりの暑さに活動量が通常時の10%~20%とまったくまともに動けていない。

そんな中、娘に勧められて読んだ本がこれ。柚月裕子氏の『最後の証人』という裁判小説である。

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実に良い小説でした。何となく、筋は予想がつくものの、ぐいぐいと引き込まれてしまい、一気に読み切った。最後で主人公の溜飲が下がるのかと思ったらそうでもないところに余韻が残って、とても素敵でした。誰が主人公なのかにも異論が出そうですが、私は旦那の方と思っています。

全く筋が違うのですが、横山秀夫の『半落ち』を読んだときと同じような印象を持ちました。おすすめの一冊です。

全く違う話ですが、今週発売になったThink!別冊「ビジネスリーダーのFacebook&Twitter活用術』に私の取材記事が載っています。
私の場合はSNSの活用が情報を収集したり、人とのコミュニケーションを取ると言うよりは、自分の情報発信の場として使っているので、一般の人の参考にどこまでなるのか分かりませんが、興味があれば是非ご覧下さい。

Fbtwitter

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2011年1月31日 (月)

まとめる技術は書く技術から

知人の橋本淳司さんが新しい本を書いた。
『瞬時に「話す」「書く」技術』というタイトルだ。タイトルだけでは何の本かわからないが、インタビューしたり、取材したり、企画の打ち合わせをしたりするときに誰かがメモをとる。しかし、そのメモの取り方一つで、その後の生産性が大きく変わってくるという話を橋本さんの経験から編み出した、2つのメモの作り方で説明してくれる本だ。

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一つは情報メモというメモ。一言で言えば、メモはメモでとるのだが、それを後で整理したり、膨らませることができるようにあらかじめ余白を用意してメモをとるという手法だ。

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もう一つはパノラマメモというメモで、マインドマップに似た形式の関連した情報を線付けしてまとめたり、新しいことを考えたりするためのノートだ。

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手軽に読める本ではあるが、実用性はとても高い。
以前このブログでも紹介したが、私はロディアのブロックメモを愛用している。しかし、これは手軽にメモは取れるのだが、メモの内容を関連づけるのが難しい。橋本さんのやり方は、メモを単なる備忘録とするのではなく、知的創造なための道具とするやり方だ。

実際の書き方や使い方に興味を持った方は是非現物をお読みください。

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2010年10月31日 (日)

蒼穹の昴

最近読んだ本ではないが、15年近く前に読んだ本で感銘を受けたのが浅田次郎の「蒼穹の昴」だ。ではなぜ今取り上げるかといえば、NHKで日中合作の連続ドラマとして毎週放送中だからである。

これを読んだからリーダーシップが学べるとか歴史が勉強できるといった書籍ではないが、一言で言えば男のロマンが描かれている。こんなところで、「男のロマン」なんていう時点で、私は時代錯誤かも知れませんが、いい話なんです。

テレビの方は、まだ25回中5回を見ただけですが、今のところ期待を裏切っていません。大河ドラマはどうも話のテンポが遅く、途中でイライラしてみるのを止めることが多いのですが、この分では最後まで行けるかも知れません。

中国の歴史小説では、宮城谷昌光の一連の作品が最高ですが、蒼穹の昴に関しては宮城谷昌光に勝るとも劣らない傑作だと思います。

興味がある方は是非ご覧下さい。今晩11時から放送です。
また詳細に興味ある方はNHKのホームページをどうぞ。
http://www.nhk.or.jp/subaru/

でも一番良いのは浅田次郎の原作を読むことです。
彼の本の中での最高傑作だと勝手に思っています。

ちなみに期待して読んだ次作の珍妃の井戸は駄作でした。

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2010年10月 5日 (火)

BCG流競争戦略

BCG時代の同僚であるデビッド・ローズとダニエル・ステルターの二人が書いた"Accelerating out of the great recession" (副題 How to Win in a Slow-Growth Economy)の翻訳本の解説を頼まれたので夏休み中に読了して解説を書いた。その本がいよいよ2-3日中に発売になる。邦題は「BCG流競争戦略」である。

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一言で言えば未曾有の大不況の中で企業経営の舵取りをどうするべきかということが書いてあるが、いわゆるハウツー本ではない。過去の代表的な大不況3つを取り上げて、そこに共通する要素を抽出し、過去の企業はどのように対応して成功したのかを述べている。そこから現代の不況に通じる対応策もあるはずだという主張である。
過去の3大不況の一つに日本の失われた10年が入っているのが、日本人には「そうなの?」と言う感じだが、それだけ世界に与えた驚きが大きかったのであろう。

この本を読んで感じたことは今回のリセッションが一時的な不況ではなく、長期的なトレンドであり、そのために企業としては、回復を待つのではなく、低成長に見合った戦略を採用することがいかに大切かと言うことであった。

 

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2010年8月18日 (水)

フェルマーの最終定理

夏休みに入って読んだ本の中で、気に入った一冊がこれである。17世紀フランスの数学者ピエール・ド・フェルマーが残した数論の命題x³+y³=z³を満たす整数解はないという仮説(予想)をフェルマーの最終定理と呼ぶが、それを解き明かした数学者とフェルマーにまつわる数学者達が主人公のドキュメンタリーである。
(内田注:実際は三乗ではなくn乗であるが、記号が入力できなかったので三乗で代替してある)

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x²+y²=z²と言う式は直角三角形の直角をなす2辺の二乗の和は斜辺の二乗に等しいという有名なピタゴラスの定理であるが、それを3乗あるいはそれ以上になるとこの式を満たす整数解はないというのがフェルマーの最終定理である。
フェルマーはこの定理を提示したものの証明がついていなかった。そのため、その後300年にわたってこの定理を証明しようと数々の学者が挑戦したが誰も成し遂げなかった。

それを1900年代後半も後半1993年になって、フランス人のアンドリュー・ワイルズがついに証明を成し遂げた。それをイギリス人のサイモン・シンがドキュメンタリーに仕立てたのが本書である。

ギリシャ時代のピタゴラスの定理はもちろんのこと、インドのゼロの発見や、決闘で命を落としたフランスの若き数学者ガロアの話まで登場して、飽きることがない。
道中、日本人の数学者谷山氏と志村氏が出てくるが、彼らの仮説がきわめて重要な役割を担っているくだりは読んでいてわくわくする。

文中には、コンサルタントや学者に必要な資質についての示唆も多く、勉強になった。一例だけ紹介する。
問題解決のエキスパートは、相矛盾する二つの資質を備えていなければならない-たえまなく湧きあがる想像力と、じっくり考えるしぶとさである。ハワード・W・イーヴズ(p319)

しかしながら、読み物としておもしろいので、この夏のお薦めである。

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