2008年7月24日 (木)

男の死に様

北方謙三の『水滸伝』全19巻を読み終わった。イヤーおもしろかったな、でもちょっと切なくなる小説だった。

以前このコラムで紹介した同じ北方謙三の『楊家将』が男の生き様を扱った小説だとすれば、宋の国で革命を成功させるという志を持ちながらも夢破れて散っていく梁山泊の男たち108人を描いたこの小説は漢(こう書いて“おとこ”と読ませている)は如何に死ぬべきかを語りかけてくる。

中で好きな人物を上げろと言われればやっぱり林沖かな?
なんか自分にないものを持っているし、男らしいし・・・。

リーダーで一番難しいと言われるの自分の引き際だという話を思い浮かべながら、この小説を読んでみると、みんなやけに格好良く散っている。それに比べて、格好良く生きたいと思い続けていつまでも悪あがきしている私は世俗的なのかな?

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2008年2月 4日 (月)

マネーボール

昨日のNHKスペシャル、日本とアメリカの3回目は「日本野球は“宝の山”」と称して、アメリカのメジャーリーグのボストン・レッドソックスの経営が取り上げられていた。アメリカのメジャーリーグが日本のプロ野球と違って、まるで企業のように経営している話を取り上げたドキュメンタリーでおもしろかった。

ちなみのボストン・レッドソックスは2000年頃に倒産の危機にあったのを現オーナーが買い取り、再建に成功したそうである。彼は元々は投資で巨額の富を築き、メジャーリーグ球団を買収したそうだが、彼は金融における投資とリターンの関係を野球に持ち込んで成功したと紹介されていた。その担い手として雇われたのが当時弱冠28歳のセオ・エプスタインだった。
彼はこれまでの野球の常識として使われている評価尺度ではなく、新しい評価尺度を導入した。これによって、より勝率の高くなるチームを作れると同時に、そうした選手は過小評価されているので、大変安く雇い入れることが出来る。
たとえば投手を評価する指標として、従来もっとも大事とされていた防御率ではなく、新たな指標として三振÷四球を使ったところ、日本の岡島が大リーグ平均を遙かに上回る良い成績だったのに目をつけて、FA宣言すると同時に雇い入れた。岡島の場合は、従来の尺度ではそれほど高く評価されていなかったの、大変安い年俸で雇えたそうである。
こうしたことの結果、買収当時から売上は5倍になり、今や1100億円を超えていると言うから驚きだ。

このあたりの話は以前BCGの同僚の御立氏から勧められてとてもおもしろかった「マネーボール」という本の内容にそっくりだった。ある意味オークランドアスレチックの二番煎じなのだが、金のない中で苦労して作り上げたアスレチックモデルと、金の力にものを言わせて作り上げたレッドソックスモデルといった違いなのかもしれない。
いずれにしてもオークランドアスレチックスのGMだったビリービーンは偉大だったなと思う。興味のある方は、単行本の「マネーボール」をご覧ください。野球に興味がない人でもビジネス書として、あるいは企業変革物語として大変ためになる本です。

またこの番組の中でも日本のプロ野球が親会社の広告等して経営されているのに対して、アメリカのメジャーリーグは単独の事業として経営されている点が大きく異なると紹介されていた。このあたりは、Jリーグとプロ野球の違いと全く同様である。
たとえば、メジャーリーグの放映権はリーグ全体で管理されており、全体で年間2000億円に上る放映権の内、海外のテレビやインターネットでの放映権分はリーグに属する30球団に均等に配分されるそうである。

このあたりの野球とサッカーのビジネスモデルの違いについて興味のある方は、私が以前書いた下記の記事を参照してください。
プロ野球とJリーグは本当に競争しているのか(2007.1.8)

プロ野球のビジネスモデル(2007.10.25)

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2007年7月12日 (木)

居眠り磐音

海外出張などで、時間が取れるというか、もてあましそうなときに最適の小説がある。佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙」である。双葉文庫というマイナーな出版社から出ている書き下ろしの時代小説である。全部で20巻くらい発売になっているが、すべて合わせると数百万部出ていると出版社が言っているので読んだことがある人もいるに違いない。

九州の小さな藩の家老の息子が事情があって藩を出て、江戸の下町で暮らしているが、その正義感と剣の腕のおかげで毎回、とんでもない事件に巻き込まれていくというどこに出もありそうな単純なストーリーである。
何がいいっていって、全くが肩がこらずに、何も考えずに、快感に身をまかせて読めてしまうので、最高の暇つぶしである。飛行機などで、仕事に疲れ、眠るのにも飽きたときなどに最適である。

既に20巻近く出ている大作であるが、1巻ごとに大きなテーマがあり、その中の章ごとにちょっとした話になっている。ということで、章ごとに読んでも、いつでもやめられるし、自分のペースで読める。
したがって、飛行機の中や現地のホテルで過ごす時間を考えて、日帰りか1泊なら1冊、1週間の出張なら3冊くらい持って出るとちょうど良い。
どこから読んでもいいようにはなっているが、是非1巻の陽炎ノ辻から読むことを勧める。

今月からNHKでテレビドラマ化されるそうであるが、こればかりは本で読んだ方が、好きなときに時間がつぶせるので、良いのではと思う。
北方謙三の水滸伝などもぐいぐい引き込まれていくが、こちらは「良し読むぞ」という気合が必要だ。しかし、この佐伯泰英にはそれが必要ない。

先日会食した高校時代の友人も彼の本を愛読していると言っていた。
高木さんへ あのとき題名をど忘れしてしまったので、ここに出しておきます。ごめんなさい。

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2007年3月23日 (金)

楊家将でストレス解消

仕事がハードすぎて疲れを取りたいとか、考えが煮詰まってしまって気分転換を図りたいときに最高の本がある。特に経営者の方にお勧めである。実際に何人かの経営者にも勧めたが好評である。

北方謙三の楊家将(ようかしょう)(PHP文庫)で、とにかく文句なしにおもしろい。
10世紀末の中国は宋の時代の武将である楊業(ようぎょう)の活躍を描いた時代小説です。小国の武将だった主人公が、国を捨て宋に降るところから小説は始まる。そして宋の北にある強国の遼から、宋を守るために楊業とその子供たちが獅子奮迅の活躍をする。ところが、宋の国生え抜きの将軍たちと官僚が共に無能であるために、武将の楊業はやたらと苦労し・・・という非常に単純な話です。

しかし、とにかく
1)ストーリーのおもしろさ、スピード感
2)大活劇(戦闘シーン、ライバルのすごさ)
3)男ならこうありたい
がみんな詰まっていて、上下巻を一気に読めます。
私自身は、読み終わるのがもったいなくて、途中でわざとペースダウしましたが。

企業にたとえると経営者自ら優秀な営業担当役員を中途採用したところ、同じ社内で営業生え抜きの人から足を引っ張られたり、競争相手に優秀で強力な営業担当役員が現れたり、経営者の取り巻きスタッフが官僚主義で現場のことを何も考えなかったりする。そうこうする内に結局会社の業績が・・・みたいな話です。

ノッてるときよりは、無茶苦茶にテンパッテいて、思い切り息抜きしたいときにお勧め。

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2007年3月 5日 (月)

日本一ベンツを売る男(続編)

客の喜ぶ顔

最近の新聞で、続けて顧客志向に関するおもしろい記事を見つけたので紹介する。
ひとつめは西麻布の老舗イタリアン「アルポルト」のオーナーシェフの片岡護さんが日経新聞の2月25日(日)のSundayNikkeiαのマイバランスというコラムに、こんなコメントを発表している。
『若い人には「この仕事はお金にならないから、お金が欲しいならばやめた方がいい』とよく話しています。計算や商売に走ると客に伝わります。『おいしかったよ』と言ってもらいたいから、この仕事をしているのです。客の喜ぶ顔を見て、自分もうれしいと思わない人にはつとまらないでしょうね。』
これも先日のベンツのセールスマンの話に通じると思う。自分が心底顧客を好きにならないと、結局長続きしない。これはコンサルティングも全く同じだ。逆に言えば、顧客が成功するのを見て喜ぶだけでは満足できないひとは、コンサルタントには向いていない。自ら経営者になるか、実業の世界で羽ばたくべきだ。ただし、その場合でもその事業の顧客を喜ばせることを忘れてはならないことは言うまでもない。

次は日経マーケティングジャーナル誌の2月28日号に載っている招客招福というコラムにオラクルひと・しくみ研究所の小阪さんが書いている記事である。
ある会社が社内を活性化するために「日本一のスタッフ名鑑」というカラー写真入りの社員紹介名簿を作成したそうだ。そしてその紹介文を本人ではなく、他人が書く、しかも褒めて書くそうだ。たとえば、「誰とでもすぐ会話ができる特技を持っている」と言った紹介文や、「万年好青年」といった肩書きがつけられていると言うから、楽しいではないか。この会社には「お客さんや社内の仲間を喜ばせる」というテーマがあるという。
そしてそのスタッフ曰く「他人の良いところを書いていると、その人のことが好きになる。」そうだ。

この言葉には、すごく感動した。

もちろん顧客に喜んでもらうというのはビジネスの基本だが、それに加えて社員にも喜んでもらう重要性を再認識した次第である。

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2007年2月21日 (水)

日本一ベンツを売る男

昨日と同じ本からの抜粋である。p68に以下のようなくだりがある。「お客さまとセールスマンという立場をわきまえた上でのことですが”対等な目線”で接するというのが、もっとも大事だと思っています。
メルセデスという車が、頭を下げてまでして売るような商品ではないということも大きく働いているのでしょうが、それ以上に、私には、お客さまよりも車に精通し、その方の好みにあるメルセデスを提供できる自信があるからです」
また、別の箇所に「・・・媚びを売れば売るほど、お客さんとの関係は離れていってしまうもの。使い走りになってしまっては、いい付き合いはできない。礼儀も尽くしますが、どんな人とでも、同じ目線で、ということを肝に銘じていました。」(p161)とある。
どちらも車のセールスマンだからといって相手に卑下することなく、顧客と対等な立場で接することが顧客のためにもなり、関係も長続きするというメッセージである。

実は、全く違う文脈から私も似たようなことをコンサルタントに言い続けてきました。それは、顧客と接するときに、「顧客とは同じ目線で話をせよ、ただし視座は高く、視野は広く」というものです。私が視線を顧客と対等にといっているのは、コンサルタントは放っておくと自分が偉いと勘違いして、本人は意識していなくても顧客を見下す態度が相手に分かってしまうことがある。こうなるとうまくいかない。顧客と長続きする関係を続けたければ、顧客と同じ目線でものを見る、すなわち顧客と同じ感覚で課題を理解する、人々の悩みを感じ取る、実行の困難さに気づくなどが重要である。
しかし、これだけで終わってしまっては、彼らの同僚や友人と変わりがなくとても高い金は取れない。コンサルティング料を高くないと思ってもらうためには、顧客よりもっと高い視点でものを見る力が必要である。それによって顧客が毎日の仕事に埋没しているところから助け出すことのできるものの見方や解決策を提供できる。ただし、し、その場合も単に高い視点だけでなく、前から、後ろから、横から、斜めからといったように幅広い視点での見方、すなわち広い視野が必要となる。
こうした私の考えは汎用性があるなと裏付けることがで来た点でも価値ある本でした。

これ以外にも「セールスマンが自分に投資したり、努力したりすることは、とても大事なことだと思っています。そこには一切の無駄はありません。」(p45)とか、「客にとってのサプライズとは、その人が予想していることを、少しでも超えたものを提供したときに、感動し、満足してもらえたかどうかにかかってくる。」(p56)など、大変参考になるコメントが載っている印象に残った本でした。もっと詳しく知りたい方は是非、現物をお読みください。

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2007年2月20日 (火)

本がおもしろくて、電車を乗り過ごしました。

今朝、読んでいた本に夢中になって駅を降り損なってオフィスに遅れてしまいました。前島太一さんの書いた「日本一メルセデス・ベンツを売る男」という本です。
1994年から2003年まで10年連続で日本で一番たくさんメルセデス・ベンツを売ったメルセデスベンツ麻布のセールスマン・吉田満さんについて書かれた本です。自慢話やどうかなという話も多いのですが、それでも圧倒的な迫力とユニークさで一気に読んでしまいました。

私は、いわゆるハウツー本を読むのが好きである。なぜかというと、そこに書いてある表面的なスキルに興味があるのではなく、その中からビジネスの本質を学べることが多いからである。

この本の中から気に入ったフレーズを紹介しましょう。
p24に「セールスマンにとって、達成感をもてる瞬間は、商談成立の時かもしれない。しかし、吉田がもっとも満ち足りる瞬間は、客に新車を届ける納車の時だという。」とある。彼は、普通のセールスマンと違って、顧客第一主義を徹底している。顧客のためなら、自分の所属する会社と戦いもするという。その彼が一番うれしいのは自分が売上げを上げたときではなく、顧客が一番喜んだ瞬間すなわち顧客が自分の買った車を受け取ったときとなるとのことだ。
これはコンサルティングでも全く同じだと思った。コンサルタントにとってプロジェクトが売れた時や、プロジェクトの最終報告がうまくいってお客さんが満足してくれた瞬間はとてもうれしい。しかし、実はこれは顧客が一番うれしい時とは違っているということは、長年の経験で私も実感している。
では、顧客が一番うれしい時がいつかと言えば、それはプロジェクトの提言を実際に経営や現場で実行に移して、それがうまくいき成果を上げた時である。コンサルティングが成功したかどうかもそこで判断すべきである。ちなみに、こうした顧客の成功を喜びと感じられるコンサルタントは長続きする。
しかし、私は顧客のトップがもっとうれしそうにする瞬間を知っている。それは、自社の社員がコンサルティングプロジェクトを通じて、明らかに成長したことをトップが感じ取ったときである。私自身そういうコンサルティングを心がけてきたが、結果がそうなったかどうかは、私の判断よりは私のお客さんの判断にゆだねるべきであろう。

皆さんの会社の仕事に関連して、お客さんが一番喜ぶことって何でしょう。本当に分かっているかどうか、考えてみる価値はあると思います。

明日もこの本から、もう一つテーマを取り上げたいと思っています。

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