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2010年9月

2010年9月30日 (木)

三菱地所の挑戦

今週の月曜日に日経ユニバシティーコンソーシアム丸の内サミットというイベントがありました。ごく少人数のオーディエンスを対象に、丸の内に本社のある企業の社長を招いてパネルディスカッションを行うという集いです。もちろん、場所は丸の内です。

今回は第3回目で私がパネルのモデレータを務め、参加いただいたのが鉄鋼メーカーJFEホールディングスの馬田社長、半導体大手のルネサスエレクトロニクスの山口会長、光源メーカーのウシオ電機菅田社長という豪華メンバーです。

ウシオ電機は販売の70%を海外で上げているだけでなく、生産も70%海外と聞いて、既に他の日本企業のお手本となるようなグローバル企業になっているのだなと感心しました。ルネサスの山口さんも元々ドイツの企業に入社してから、NECに移り今では社長にまでなったという異色の経歴です。馬田さんは、生産の現場が長かったという日本の大手メーカーの社長らしい方でした。

100名にも満たない参加者が近いところでは各パネリストからわずか1mほどの隔たりで接するという他にないユニークな試みで、参加者もライブ感が良かったと言ってました。
また、会場の適度な狭さから来るアットホームな雰囲気もあって、オフィシャルな場面では出てこないような本音トークが、各参加者からたくさん飛び出してとても良いパネルになったと思います。もちろん私の力量もあったことは認めますが・・・(笑)。

実はこのパネルを仕掛けているのが、他ならぬ丸の内の大地主の三菱地所さんです。当日も副社長の飯塚さんが見えられていました。

私が感心するの、三菱地所が丸の内の価値を高めるために矢継ぎ早にいろいろな手を打っていることで、以前このブログでも新丸ビルの事を書きましたが、それ以外にも仲通りにブランド店誘致やイルミネーション、あるいは最近の三菱一号館美術館開館など様々な手を打っていることです。

こうした総合的な努力の結果が、街のポジショニングを決めると同時に価値を高めているのだと実感します。こうした施策のせいで、ビジネスマンだけでなく、若い女性や地方からの観光客あるいは家族連れなど幅広い集客に成功したとのことです。

パネルでどんな話がされたかは参加された方だけの特権ですので、ここでは紹介しません。一部は後日日経新聞に掲載されると思います。

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2010年9月25日 (土)

台湾企業訪問

先週末から、先週の火曜にかけてビジネススクールのゼミで台湾の企業訪問を実施した。訪問した企業は、海運会社のワンハイ、証券会社の華南証券、プラスチックの加工メーカーの日福精工、同じくプラスチック加工の易発精機、台湾の半導体大手のTSMCであった。

私は遅れて参加したので、最初の訪問は台湾の大手海運会社ワンハイでした。台湾で大手といえばEverGreenが有名であるが、ワンハイも後発ながら中型船によるアジアフォーカスで力を付けてきた有数の海運会社である。社長自らミーティングをセットしてくれて、我々にプレゼンテーションを行ってくれた。

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2社目は台湾の金融財閥である華南金融グループの証券子会社である華南証券を訪問した。業界6番手ということであったが、未だに昔懐かしいブラウン管式の株価ボードが店頭に置かれ、そこに昼間から株価を眺めている顧客がいるというのは一昔前の日本の証券会社とそっくりである。

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社内見学後は、会議室でプレゼンテーション&質疑応答 

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御曹司(画面には映っていない)のプレゼンに聞き入るゼミ生達

3社目は台北から車で1時間ほどの工業都市新竹にあるプラスチック加工メーカーである日福工業である。こちらは日本企業の合弁企業であるため総経理の迫田さんと工場長の川口さんが工場を案内してくれた。

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NCマシンを興味深げに見入る学生達

4社目は、半導体製造装置の部品メーカー易発精機。こちらは台湾系の企業で、工場内はクリーンルームのため外から見学。

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昨年のモンゴルでも日本の生産活動5Sが見られてたが、ここでも日本の生産活動が取り入れられており、こちらは6Sだった。整理、整頓、清潔などである。

夜は日福の迫田さんを始めとした、台湾駐在の日本人ビジネスマンとの懇親会が行われた。台湾の日とは普段の食事ではあまり酒を飲まないのだという話を聞いて意外に思ったが、それは宴会の時に思い切り飲むことの反作用なのかなと思ったりした。台湾の人々が日本に来てとても驚くことが、新幹線に乗ると、たくさんの日本人が座席に着くなり缶ビールを空けて飲み出すことだそうで、こちらの新幹線では誰も酒など飲んでいないそうだ。

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中央付近で立って挨拶しているのが迫田さん。

その後は各自、夜の台北に繰り出したが私は駐在員の人とゼミ生と一緒に、そばにあるお茶の店に、そこでお土産にお茶を購入。

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試飲するゼミ生(手前)&レジに並ぶ牧口さんと菅原さん。
北京でも同じ仕組みだったな

一足早く買い物が終わった私は隣にあったセブンイレブンに

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市内のそこかしこにあります。

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店内の風景。日本のセブンイレブン同様、きれいに清掃されています。手前右に見えるのはおでんではなく、煮卵。こちらの人の大好物のようです。

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そこで購入した森永ミルクキャラメル。日本のお菓子がかなり現地化されて売られている。日本の文化だけでなく、食べ物も人気なようだ。

二日目は台湾トップというよりは世界有数の半導体メーカーであるTSMCを訪問した。こちらも秘密保持とクリーンルームのためか、工場そのものは見学できず、会議室でのプレゼンテーションが中心だった。それにしても今年の第2四半期の営業利益率は49.5%、リーマンショック後の2009年でも43.7%というから、日本のメーカーが聞いたらがっくりするだろうな。大変な高収益会社である。

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新竹という工業団地にあるのであるが、周りにある他の企業も含めて、シリコンバレーを彷彿とさせる近代的な工場でした。

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TSMC本社前での記念撮影

その後、新竹市内の水餃子屋で昼食、こちらは地元の人しか行かないような汚い店だったが、大変おいしかった。

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今回の台湾訪問でお世話になったゼミ生の武山さんと店の前で。
武山さんはおじいさん、お父さんがこちらの人で地元にも詳しい。
武山さん、いろいろなアレンジどうもありがとうございました。

私自身は数回目の台湾であったが、ゼミ生では初めてのメンバーも多く、大いに刺激を受けて帰ってきたようである。

閑話休題

私自身は目にすることが出来なかったのであるが、現地の書店で私の仮説思考の中国語訳が平積みされて売られていたそうである。これは素直にうれしい。

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私の本を手に取る学部ゼミ生の中見さん

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2010年9月16日 (木)

癒しの研究

今月の嶋口内田研究会は、一橋大学の松井剛先生を招いて、流行語とマーケティングについて語っていただいた。

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松井先生の語ることを私なりの理解で言えば、はやっているから流行語になるのはもちろんのこと、その逆に流行語が一つの新しい味方や価値観を生み出し、世の中が変わってしまうこともあるというものである。

今回は具体例として、癒し系という言葉を取り上げ、それが様々な分野で新しい現象を生み出し、需要創造につながっているという話をしてくれた。
ITの世界ではバズワードと呼ばれる流行語が、研究対象になることはあるが、「癒し」が学者の手にかかると見事に分析されるのを見て、ずいぶん刺激を受けた。


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最近の嶋口内田研究会は、参加者がとても多い。これも嶋口先生の来るものは拒まずの方針の成果だと思われる。

会の終了後に松井先生と一緒に居酒屋?で懇親会を行ったが、そこで出てきたサラダの容れ物(チーズ)とコショウの容器の大きいこと。思わずパチリ

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2010年9月14日 (火)

柔道世界選手権金メダル量産の訳

昨日終了した、柔道の世界選手権では日本時選手が過去最高の10個の金メダルを獲得した。
これをもって、日本の柔道が強くなったと勘違いしてはいけない。新しいルールのおかげである。今回より各階級に二人の選手を出せるようになった、その結果世界ランキング上位選手を多く抱える日本は全階級で二人の選手をエントリーできた。

マスコミでは、これによって若手選手が抜擢できたり、代表に選ばれた選手のプレッシャーが減ったから、のびのびと出来て好成績に繋がったと書かれているが、私の見方はそうではない。これは単に確率の問題である。

具体的に検証してみよう。例えば、日本選手の平均勝率を9割とする。10試合やれば9試合勝つ=結構な強さだ。ここでは1回戦から決勝戦まで6試合あるとする、一度も負けずに6試合勝ち進んで、優勝する確率は0.9の6乗=0.53しかない。したがって、日本がいくら強い選手をエントリーしても優勝できる確率は5割しかないのである。

ところが、各階級二人ずつ出せるとしよう。そうなると、二人のうちどちらかが6戦全勝する確率は1-(1-0.53)の2乗=0.78となり、ほぼ8割になる。したがって、全階級のうち8割の階級を制覇できることになる(実際には16階級中10階級の約6割であったが)。

このロジックは日本選手が二人とも同じような強さであるという前提で初めて成り立つわけであるが、世界の他の国比べて日本の柔道選手の層が厚いのは、異論はないであろう(実際世界ランク1位だけでなく同時に2位や3位もいる階級があった)。

このことからの学びは、競争というのは自分に有利なルールで戦うのが得をすると言うことであり、日本のように選手層が厚く誰が出てもそれほどの差がない場合は、複数選手エントリーできる方式が圧倒的に有利である。逆に言えば、オリンピックのように一国一人しか出れないルールは日本柔道には不利と言える。これは偶然の結果ではなく、意図的な結果であろうが・・・。

同じオリンピックの個人競技でも陸上や水泳では一つの国から3名くらい出る競技はたくさんある。これらの分野でアメリカが強いのは偶然ではないだろう。彼らは自分たちが得意なようにルールを制定したか、あるいは自国に有利なルールのスポーツに育成のリソースを注いでいるに違いない。

企業競争でも全く同じで、誰か他社が作ったルールで戦うよりは自社の作ったルールで戦う方が有利に決まっている。あるいは自社に有利なルールに業界全体を持ち込むと言うのがセオリーである。PC業界のマイクロソフト、音楽配信のアップル、自転車業界のシマノなど、こうして成功している企業は数多く存在する。

注)本稿では、確率の数式を多少いい加減に扱ったが、主旨には影響ないと思いますので、ご容赦ください。

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