8月2日から4日まで、大学の仕事で中国の広州に行って来ました。広東省が省の幹部に行っている研修に早稲田大学から教員を送ってくれてと言うことになり、一人は行政の専門家の先生が選ばれ、なぜか私がもう一人となりました。総長と太田常任理事と一緒に行ってきました。広州は2度目でしたが、前回と違って非常に密度の濃い3日間でした。
そもそも広東省のことをほとんど知らなかったのですが、香港の後ろに控える省で経済特区の深せんを持つくらいのイメージでした。行く前にもらった資料や行ってから教えてもらったところによれば、面積は18万平方㎞と日本の半分しかないのに、人口はほぼ1億人もいるのです。500人を超える人口密度です。しかも、出稼ぎなどを併せた実質人口は1億人をはるかに超えて、ほぼ日本の人口に匹敵するようです。
さらにGDPは中国の省の中で一番だと自慢していました。もちろん総額であって、一人当たりではまだまだのようですが。まさに一つの国といってもいい大きさと経済力です。アメリカのカリフォルニア州がよく一つの国にたとえられることを思い浮かべました。
広州の場所
Aの記号のついているところです
今回の聴衆は、広東省の書記(省でNO.1の人)を始めとして、省長や幹部数百人でした。ちなみに書記はワン・ヤンさん(さんずいに王のワンと洋と書くヤン)といい、中国共産党の中央政治局委員を務める超大物です。
そうした人が私ともう一人の塚本先生のために併せて2時間も使ってくれるのですから、期待の大きさがよくわかります。
右の方に写っているのが、一緒に講演を行った公共経営研究科の塚本教授です。
立派な案内幕でした。幹部の方々が写った写真もあるのですが、そちらはブログにアップして良いのか分からないのでカットです。
一体何を話したかといえば、日本の企業がこれまでどのように発展して、どのように壁にぶち当たってきたかという話でした。日本企業の成功と失敗から学びたいとのことです。これだけ成功してもまだ日本から学ぼうという姿勢に感心しました。
講演はまあまあうまくいったと思うのだが、その後の質疑応答はさんざんでした。相手の言っている質問が通訳のせいでよく分からず、全くとんちんかんな答えをしてしまった。うーん、残念。
さて、向こうでのエピソードをいくつか紹介しましょう。
初日はまず南方日報という新聞社のインタビューでしたが、これは以前も北京で新聞のインタビューを受けたことがあり、そんなに問題なく進行しました。ただ、本当に記事になるのかどうかは全く分かりません。
ちなみに前回は私の仮説思考が中国語で発売になったのを記念して経営者の集まりで講演をやったときに併せて行ったのです。
中国語以外にも韓国語にも訳されています。
初日の夜は早稲田大学で以前1ヶ月という長丁場の研修を受けた広東省の企業の経営者たちとの会食でした。広東省から派遣されたということで、どなたも自信に満ちあふれた顔をしているのが印象的でした。
そのうちの一人が支配人を務める白天鵞ホテル(珠江沿いの絶景の高級ホテルです)での記念撮影です。
ホテルから二次会に向かう途中での珠江の風景です。とてもきれいな景色でした。夜だったせいかもしれません。
その二次会でお邪魔した空中一号というレストランには圧倒されました。早稲田で研修を受けた一期生の方が経営しているのですが、中国で魚介類を中心としたチェーンレストランを経営して成功し、稼いだ金をつぎ込んだ大変豪華なレストランでした。
人気集中で、何ヶ月も先でないと予約が取れないそうです。
ビルの30階くらいに4フロアほどあるのですが、部屋数は30数室しかなく、すべて個室です。しかも一部屋の利用料が最低でも10万円くらいするそうです。各部屋や廊下には1枚数百万円から数千万円する絵や書が至る所に飾ってありました。
ワインのストックも半端ではなく、ロマネコンティ、シャトーマルゴー、シャトー・ムートン・ロートシルトなど超有名銘柄が冗談抜きに山と積まれていました。我々が案内してもらった最上階の部屋はなんと最低ルームチャージが10万元(150万円くらい)するそうで、とんでもなく豪華な部屋でした。何しろ、天井にドームがついていてそれが開閉するのです。驚きました。その時の写真を付けておきます。
イヤー天井が音楽と共に開いて、月とタワーが出現したのには本当に驚きました。
二日目は午前中が既に紹介した講演会で、その後、省の幹部の方と食事をし、午後は工場見学に出かけました。それまでの強行軍で疲労困憊していたのですが、工場を見るのは楽しいので、無理して行ってきました。
最初に訪れたピアノ工場はPearl River と言うブランドの広州珠江ピアノ会社でした。
工場自体は極めて労働集約的で、多くの従業員がほとんど手作業でピアノの組み立てや加工、調整をやっていました。工場もとても近代的とは言えない代物でした。しかし、何がびっくりしたかといってそのマーケットシェアです。世界一の生産量で、世界シェアが19%だそうです。てっきりヤマハが一番かと思っていたので、かなり驚きました。世界需要が40万台くらいで、そのうち珠江ピアノは約8万台の生産量だそうです。ヤマハは5万数千台だと言ってました。しかし驚いたのはその後の話です。世界のピアノ需要の70%が中国なのだそうです。したがって、中国でNO.1になると自動的に世界一になると言うわけです。昔、全く音楽センスがないのにオルガンを習わされたことを思い出しました。中国では子供にピアノを習わせるのがブームというか教育に金をかけていることの証のようです。
さらに驚いたのが、ピアノの世帯普及率はまだ0.3%だということです。それで既に世界需要の70%ですから、これが1%になるだけでも世界需要の90%が中国と言うことになります。恐るべき数の力です。
品質はヤマハ並みで価格は三分の二くらいなようです(これは社長の受け売りです)。ヨーロッパのピアノメーカーがヤマハをバカにしていたのと同じことが将来起こるのでしょうか?
工場見学の途中に見た高層マンションの数々、こちらでは一戸建てはほとんどないそうです。
二つ目はこれもPearl Riverと言うブランド知られている珠江ビールでした。何でもPearlRiverには少し驚きました。こちらは既にサントリーの上海工場なども見ているので、特に新たな感激はなかったです。ただし、既にリサイクルへの取り組みや水の使用量が世界的に見ても少ないという説明には感心しました。
ビール工場とピアノ工場の見学には広東省で夏の間インターンをやっている広東外語大学の学生が3名ついてきたので、少し話をしてみました。出来れば、役所に就職したいのだが、大変狭き門だと言うことでした。優秀な人が皆国家公務員を目指していた昔の日本に近いのかなという印象を持ちましたが、なにぶんサンプル数が少ないのでよくわかりません。
それよりおもしろかったのは、ピアノ工場で日本にはヤマハ以外にカワイピアノというブランドがあると私が説明したときでした。彼らが一斉にエッー「かわいい」ピアノと言いました。もちろんかわいいピアノではなく、カワイピアノだと訂正しましたが、彼らによると『かわいい』はそのまま中国語として通用するそうです。ニューヨークでも『かわいい』がそのまま英語で通用するという話を聞きましたので、今や『かわいい』は万国共通語になったようです。
最後に夜食事をした広東省の高級幹部は早稲田大学は広東省で一番有名な外国の大学だと言いましたが、あながち嘘ではないなという印象持った駆け足の3日間でした。
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