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2009年6月

2009年6月29日 (月)

技・頭・心

朝日新聞のGlobeというサイトにとても良いインタビュー記事が載っていた。

それは、Break-through(突破する力)というシリーズでいろいろな業界のプロフェッショナルを取り上げたものだ。友人であるリクルートの柏木社長も登場している。

その最新版に日本航空で初の女性機長を目指す立川円(まどか)さんが取り上げられている。まだ31~2歳の若い副操縦士であるが、なかなかしっかりしている。
その中に大変興味ある一節があった。プロフェッショナルかくあるべしのお手本のような話だ。とても気に入ったので紹介しよう。

操縦室では、日々替わる機長が座る左席を観察する。乗務中に聞けなかったら、移動時に車中で機長に尋ねる。気づいたこと、感じたこと、指導されたことは、フライトの基本情報を印刷したA5の紙の裏に書き留める。それをファイルし、読み返す。その「バイブル」の中に、酒の席でベテラン機長に言われた言葉がある。
「最初は皆、飛行機を腕で飛ばそうとして、技を磨く。次に経験と知識を生かし、頭で飛ばそうとする。でも、結局は心で飛ばすんだ」

この最後の文章が良い。これはプロフェッショナルな職業なら、みんなに当てはまる言葉だなと思った。

そう思った直後に、ちょっと待てよ。経営コンサルタントの場合はちょっと違うかな、
「最初はみんな頭で答えを出そう、顧客を説得しようとする。次に技を磨いて、顧客を納得させようとして、それでは足りない何かを感じて、最後には心で顧客に答える。」
の方が、ぴんと来る。

でも、コンサルタントに必要な要素はパイロットと同じだ。
私は常日頃、若手コンサルタントにコンサルタントに必要なものは「心」と「技」と言ってきただけにこの機長の言葉はうれしい。

オリジナルのサイトを見たい方は、
http://globe.asahi.com/breakthrough/090622/01_01.html

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2009年6月23日 (火)

戦略の早稲田

来月26日に早稲田大学ビジネススクール(WBS)のプログラム説明会が実施される。場所は実際に講義が行われることが多い早稲田キャンパスの11号館という新しい建物である。

その広告が今日の日経新聞朝刊に掲載された。

Wbs20090726

早稲田大学ビジネススクールは、大きく分けると昼間のコースと夜間のコースの二通りに分かれている。
昼間のコースはMBAのみで1年制と2年制の二通り用意されている。一方で夜のコースは昼間働きながら通えるのが特徴で夜間と土曜日を中心にコースが組み立てられており、こちらはMBAとMOTの2種類が選べる。

ビジネススクールの内容については、今日は詳しく説明しませんので、是非説明会に来ていただきたいと思います。私もパネルディスカッションを担当する予定です。詳しくは下記のURLをどうぞ。http://www.waseda.jp/gradcom/news/090622_WBSfair.html

さて、今日は私の専門分野である戦略の話です。といってもコンテンツではなく先生についてです。
昼間のコースには私と同じ専門分野である戦略領域に山田英夫先生、遠藤功先生、相葉宏二先生がおり、夜間の方には戦略領域では根来龍之先生、井上達彦先生、蛭田啓先生がいる。(井上先生、蛭田先生は昼間の商学専攻が専門です)。

山田先生はデファクトスタンダードに関する日本の第一人者であり、逆転の競争戦略の著者としても名高い。遠藤先生は「見える化」や「現場力」の著書で知られるオペレーション戦略の第一人者である。相葉先生は元BCGのパートナーであり、グロービスのベストセラーMBAマネジメント・ブックの執筆や日経新聞社のMBAの経営の著者として知られている。

また、根来先生はITと経営を語らせたら日本有数の学者であり、経営情報学会の会長も務めている。デジタル時代の経営戦略、ネットビジネスの経営戦略、代替品の戦略など数多くの本を出したり、監修している。夜間MBAコースの責任者でもある。井上先生は一橋と並ぶ戦略のメッカである神戸大学出身で早稲田に来られた若手の教授であるが、ビジネスモデルの研究では日本に知られた学者である。事業システム戦略や収益エンジンの論理などの著書がある。蛭田先生はこれからという若手の学者であるが、日本のM&Aが本当に成果につながっているかを感覚でなく、数字で実証する論文などを書いている。昨年度まで夜間の基本科目である「経営戦略」を担当していた。
そして、その末端に私がいるわけである(年齢はいっているが、もっとも新米)。

こうしてみると、早稲田大学のビジネススクールにいかに日本を代表する戦略領域の学者(あるいは実務家出身者)が集まっているのが分かっていただけると思う。今や戦略を学ぶのなら、○○ではなく早稲田なのである。

おまけ
実はこうした学位を取るMBA・MOTのコース以外にも各種のエグゼクティブプログラムも用意されており、企業が人材を育成したり、個人が自分のキャリアを磨くための場、早稲田大学ビジネススクールと言うことが出来る。

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2009年6月22日 (月)

セミナーの案内

時々、外部でオープンのセミナーや講演会があったら教えて欲しいという声があります。私の場合は、あらかじめ参加者の特定されている講演会が多いのですが、来月日経新聞主催の世界ICTカンファレンス2009で基調講演を頼まれているので紹介しておきます。7月15日で、新しい日経新聞本社内に出来た日経ホールです。興味がある方は是非来てください。と言っても希望者多数の場合は抽選だそうです。

Seminar
先週金曜日の日経新聞に出た告知広告です

テーマはICT時代の企業競争戦略を考えるというものなので、インターネットや携帯電話がもたらす消費者の新しい行動形態、それによってもたらせる企業のあり方の変化などを語る予定だ。
ちなみにICTとは"Information and Communication Technology"の略で日本語に訳せば「情報通信技術」だ。

参加希望の場合は下記のURLから、申し込めるようです。
http://www.ictforum.jp/c1/

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2009年6月19日 (金)

ビジネスの黄金比

ビジネススクールのゼミに卒業生に来てもらって、一席ぶってもらう試みを始めた。すでに2回目まで終わっているが、これがゼミ生に好評だ。
1回目は昨年3月に卒業した1期生の岡井さんだった。岡井さんはリクルートエージェント言う人材紹介会社の本社で企画やマネジメントやっていた人だが、今年から営業の方に出て、大きな支社の支社長をやっている。

20090530okai

20090530okai2_3 

岡井さんはビジネススクールで何を学んだか、あるいはそれが卒業後、どんな風に役立っているかなどを話してくれた。ビジネススクールの学生にとっては、仕事との両立のさせ方などの今日からでも役に立つ話や将来へ向けての心構えなどを学んだようである。

私自身も岡井さんの話の中で、一カ所スパークしたところがあった。それは、ビジネスにも自然界や美術界と同じように黄金比があるのではという問題提起でした。
岡井さんによれば、お酒の安売りのカクヤスにはあるお店の配達範囲が半径1.2kmで収まるようになっているそうで、これより広いと効率が悪すぎて、狭いと売上が立たないと言うことだそうです。リクルートのあるビジネスにも駅から○m以内でないと媒体に載せてもペイしないといった経験則があるそうですが、これは企業秘密なようです。

私自身の問題意識はこうした、ビジネス上の成功の秘訣、あるいは黄金律と呼ばれるようなものを集めてみると、もしかしたらそこには黄金比に相当する共通の法則があるのかもしれないと思ったことである。
でも、これくらいのことはすでに誰かが考えて発表しているかもしれないな。

黄金比については知っている人も多いと思いますが、長方形が一番美しく見える比率とか、モナリザの絵画にもそれが現れているとか言われています。あるいは巻き貝やひまわりの花などの自然界にも多く存在することで知られています。

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2009年6月16日 (火)

現実は教科書とは異なる

今月の私の履歴書は経済学者の篠原三代平氏だ。私は工学部出身だが、卒業論文で線形計画法を使用した経済モデルをプログラムしたので、その時に必要に迫られて勉強したのが篠原氏の近代経済学だった。詳しくは覚えていないが、産業連関表を使った産業連関分析を行った記憶がある。そういう意味で大変懐かしい。

その篠原氏が11日の稿で、経済学者が陥りがちな罠について書いており、大変示唆に富んでいた。たとえば経済学では静態的なかつ完全競争を前提に考えるので、たとえば八幡制定つと富士製鉄が合併すると、独占(寡占)になるので鉄鋼価格が上昇し、生産量が減ると考える。だから合併には反対となる。
ところが、実際には両社の合併により同社の技術力は増し、価格は国際価格と比較して下がることになったという。篠原氏に言わせれば、「現実は教科書とは異なる」。もっと時間軸を長く取って、発展過程の中で独占や寡占の問題をとらえるべきだと言っていた。なるほどねという話だ。

こういう文章を読むと、時には経済学も企業経営の役に立つのかなと思う。

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2009年6月 8日 (月)

間合い

一週間ほど前の日経新聞のスポートピアというコラムに元サッカー選手の水沼貴史氏がおもしろいことを書いていた。現在の日本代表チームの完成度を誉めながらも、まだ足りないものに「間合い」があるというものだ。

サッカーの間合いとは、相手選手にどれくらい前に立たれると威圧を感じるのかということで計れるという。たとえば中村俊輔や長谷部、遠藤などはどんなに眼前に立たれても焦ることなく、落ち着き払ってパスを出せるという。それに対して他の選手はまだまだということだ。

間合いは、ボールの置き場所、顔が下がらない、何かしそうな雰囲気、こうしたことが積み重なって作られると水沼氏は主張する。そして、それを修得した選手は、相手が「寄らば切るぞ」というオーラを放ち、相手は刀を抜くに抜けなくなるそうだ。中国の故事にある「木鶏」もまさにこの境地であろう。

分かる、分かる。と言ってもサッカーのことではない。私はこの間合いというのはすべてのプロフェッショナルに当てはまると思う。たとえば、コンサルタントをやっていると全く同感だ。優秀なコンサルタントはみんな自分の間合いを持っている。これは経営者もしかりである。

一方で、私自身は若い頃から、相手の間合いの中に入ってしまうことを得意としてきた。敢えて相手の懐に飛び込むのである。それによって、相手が胸襟を開いてくれればしめたものであるが、時には「若造が生意気な」と相手を怒らせてしまうこともある。でも、そうしたことの繰り返しが私の間合いを作ってきたことは間違いない。
水沼氏もいろいろなタイプの選手とと切り結ぶことで、自分の間合いを獲得できると述べている。

それはさておき、サッカー日本代表、ワールドカップ出場おめでとう!
素直に喜んでいます。後は本大会でどれだけ上位に行けるかですが、こればかりは一年後になってみないと分かりません。

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2009年6月 4日 (木)

ビジネスインサイト

久しぶりに読み応えのある本を読みました。石井淳蔵先生の「ビジネス・インサイト」(岩波新書)です。

一言で言えば、成功した企業では、経営者が当たり前のことをやり続けて成功したり、既存のやり方の延長から新しい事業が始まるのではなく、どこかで飛躍して初めて事業は発展を遂げたり変質を遂げたりする。こうした経営者の飛躍はどこから生まれるのかと言うことを科学的に解明するとどうなるかを述べてある書である。

難しいがおもしろい、アカデミックに見えるが経営に対する含蓄に富んでいる。

Businessinsight

キーワードは事象(物)への棲み込み(dwell in)である。一言で説明するのは大変難しいが、私の理解したところで言えば、学者のように客観的に眺めるわけでもなければ、自分の主観で見るのとも違う。相手(もの)へ入り込んで、相手の立場で眺めることで新しい発想やビジネスが見えてくると言うことだ。それをポランニーという哲学者の言葉で「棲み込む」と言うらしい。

私がひらめきや右脳を大事にしろと主張するのに対して、石井先生はひらめきやジャンプあるいはインサイトがどうして生まれるのかを一所懸命解き明かそうとしている。
大変示唆に富んだ本だ。久々に脳みその奥深いところまでたっぷり刺激を受けた本で、現時点の本年度ベストワンである。

私の書いた「スパークする思考」は石井先生の本のようにアカデミックではないが、私の本に対するアンサーソングを書いていただいたような気もしてうれしい。

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2009年6月 2日 (火)

All About

5月の嶋口研究会のゲストスピーカーはオールアバウト(AllAbout)の江幡社長だった。
江幡氏はリクルートの新規事業としてオールアバウト事業を始め、ナスダックに上場するまで成功させた企業内創業社長である。立ち上げの時点でリクルートは退社したそうであるが、現在もリクルートが筆頭株主の会社である。一時はやった言葉を使えば、大企業から新規事業を別会社として立ち上げることを意味する「カーブアウト」に当たる。

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オールアバウトがどんなサイトかと言えば、日常生活の様々な分野について専門家が、ユーザーの参考になるような記事を多数紹介しているサイトである。実に細かく分類されているので、広告主としては自分のターゲットユーザーに見てもらえる可能性がとても高い、セグメントされたサイトといえる。江幡社長に言わせると、インターネット上の雑誌であり出版社であると語っていた。実際にどんなものかは実物を見てもらった方が分かると思うのでURLをあげておきます。
http://allabout.co.jp/

立ち上げから3年は予定通りに成果が上がらず、大変苦労したそうである。しかし今では200万人近いユーザーが利用する人気サイトで、広告収入で採算の取れるモデルになったと語っていた。
現在のビジネスモデルを思いついたきっかけはトイレに常備してあるアイデアノートに"人ネット"と書き込んだことだったという話がおもしろかった。

また、これは話を聞いていての私の印象であるが、江幡氏は多くの創業経営者に共通のポジティブシンキングの持ち主だと感じた。

会員に対するメーリングリストでしか案内していないにもかかわらず、最近の嶋口研究会は毎回席が足りなくなるくらいの大盛況である。上の写真を見ていただくとよくわかると思います。大変ありがたい話ではあるが、事務局を引き受けている私のゼミ生(社会人と学部生)は大変である。ご苦労様。

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2009年6月 1日 (月)

漆さん再び

先週の大隈塾「リーダーシップ論」には昨年度に引き続き、品川女子学院校長の漆紫穂子さんが来てくれました。

受講生も漆さんの企業経営者と変わらぬ、あるいはそれ以上の経営者ぶりに驚いたり、感心したりしていました。
企業改革にたとえれば、「自分は設備投資などのハードウエアに手を付けたわけでもなく、あるいは従業員のリストラや入れ替えをやったわけではなく、同じ器、同じ教師でこの改革を成し遂げたことを誇りに思っている」と語っていました。

前回書いたことの繰り返しになりますが、企業変革は組織の構成員のやる気のスイッチを如何に入れるかにかかっているという彼女の言葉は、組織変革のカギであると同時に、大隈塾で学ぶミドルクラスの人間にとってのリーダーシップの秘訣でもあります。

今回の新たな学びというか気づきは、人間にはプロセス型と結果型があるという話でした。彼女によると、結果型というのはまずゴールやビジョンから考える人間で、人に語るときも結論やゴールから入るそうである。もちろん漆さんはこのタイプだ。
それに対してプロセス型というのは、何かをやるときにまずどうやってやるかを考える人間で、この違いを理解してコミュニケーションしたり、マネジすることが大事だという話は、目から鱗でした。どうもありがとうございます。

漆さんは校長日記というブログを付けており、その中でも今回の訪問のことがちらっと触れられていました。ご紹介しておきます。
http://diary.shinagawajoshigakuin.jp/fromPrincipal/?m=200905

また、前回の講演内容に興味がある方は下記のブログを参考にしてください。
http://uchidak.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-63a4.html

これを見ると、今年から講義の教室がいかに良くなったかがよくわかると思います。

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