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2008年12月

2008年12月31日 (水)

1年の終わりに

早いもので、今年も一年が終わろうとしています。
私自身は今年はやり残したことが多い一年となりました。
もちろん、初めての新書を出したり、MBAの一期生を送り出したりとそれなりにやり遂げたことがいくつもあったのですが、何かじっくり事を構えると言うよりは、スケジュールに追い立てられるように終わってしまったというのが実感です。
来年はもう少し、じっくりと仕事に取り組みたいなと思っています。

さて、今年最後の話題は今月の私の履歴書からです。経済学者の小宮隆太郎氏が12月12日付の紙面でとてもいいことを書いていました。彼がアメリカ留学で学んだことが3つあるそうです。

最初は経済学の大家レオンチェフから「理論は実際に応用しなければ意味がない」という考えです。学者がどう思うかは知らないが、私のような実務家にはそうだそうだと頷きたくなる話です。ちなみにレオンチェフというのは産業連関分析で有名な人だが、私はそれを使った経済モデルというのを大学の卒論としたので、何となくなじみ深い。ちなみに経済の論文ではなく、線形計画法という手法を応用したプログラミングの論文です。

2番目は、身近な経済問題を経済学の理論に基づいて考えることの大切さです。これは経営学でも全く同じで、日頃起きているビジネスや競争の事例を理論を当てはめながら議論することはとても大事です。

3番目は論文の書き方で、日本でよく見られる外国人の書いたものを適当にまとめたものは、学術論文とは言えない。どこまでが賛成でどこからが反対なのか、あるいは自分の独創性はどこにあるのかをはっきり主張せよと言っている。私のように、他人の話をきちんとレビューせずに自分の独創性ばかり追求しているのも、論文としてはダメなんだろうなと感じました。

ということで、今年一年のご愛顧、ありがとうございました。
みなさん来年もよろしく。

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2008年12月20日 (土)

名古屋にも木枯らし

昨日は仕事で名古屋に行ってきました。
名古屋駅からタクシーに乗ったところ、運転手さんがかつてトヨタの期間工として働いていたことがあると言うことで、最近の名古屋経済の話になりました。

少し前まで、日本で唯一経済成長していると言われていた名古屋もトヨタの不振と共に秋風が吹き、来年は木枯らしが吹くだろうという話をしてくれました。名古屋駅前の高島屋やマリオットのビルの人混みからは景気の悪さは感じられませんでしたが、運転手さんによると、企業の接待禁止や経費削減の影響はもろに水揚げに影響しているという話でした。

私はタクシーに乗ると、時々最近の景気の話を聞きます。どんな業種の人が多くなったとか減ったとかという話を聞けば、業種毎の好況・不況が分かりますし、個別企業名でも接待費や交際費が絞られているのかそうでないのかといった話も分かります。
時には聞きもしないのにタクシーの運転手をやる前は会社を経営していたとか、商社に勤めていたとかいろいろ身の上話を聞かされることもあります。そんなときはタクシーの運転手さんに人生の縮図を見る感じです。

これも花王の前会長の後藤さんの言うキョロキョロする好奇心の一つだと思います。

ところで今週、自宅の引っ越しをしました。駅で言うと一駅、直線距離では1kmくらいのところですが、引っ越しは引っ越し、とても大変でした。まだ家の中が整理されていません。とりわけ私の書斎は段ボールの山です。この際、いらない本や書類を大幅に処分して身軽になろうと思っているのですが、時間が取れません。今日ようやくインターネットがつながってブログの更新をしているのですが、なぜか電話は来週の木曜日までつながりません。ちゃんと正月が迎えられるか心配です。

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2008年12月17日 (水)

縮む陶器

先日、日経新聞の企画でTOTOの木瀬社長と対談をした。

Kise

木瀬社長は海外経験もお持ちで、TOTOのグローバル化にも極めて熱心なので、対談の内容もそうした話が中心になった。詳細については本日16日付の日経新聞をご覧いただくとして、今日は木瀬社長との対談を通じて感じたことを一言。

会談後の雑談の中で、技術屋でもない木瀬社長が製造現場の話を目を輝かせて話していたのが印象的だった。そばにいた女性社員の方も頷いていたが、九州の工場で便器が焼き上がってくるのを見ているのは感動的だそうだ。
言われてみれば当たり前なのであるが、便器は陶器であるために窯で焼き上げる。そして焼き物であるために焼き上がるときに縮む。もちろん一律には縮まない。その縮み具合を計算して元を作ったり、温度が場所によって違う釜の中でたくさんの便器をどこにどのようにおくのかといったことをすべて計算して焼き上げる名人芸だそうだ。
そして、それが見事に焼き上がってくる場に立ち会うと感激するんですよという話に私も感動した。是非現場で見てみたいなと思った次第である。

私自身は航空会社、コンサルティング会社、大学とサービス業ばかりを経験しており、メーカーに勤めた経験がない。物作りに直接かかわることができるメーカーはいいなと感じた一日であった。

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2008年12月12日 (金)

学生たちの作品

今年の夏に、ANAが大学生に海外旅行の商品企画をさせるという企画があり、早稲田大学の内田ゼミの学生も何組か応募した。実際に中国に行った上で、学生の視点で中国旅行を企画するというコンテストで、なかなか聞いたことのないユニークな企画であった。

先月、参加したいろいろな大学の学生たちの企画のうちの何点かが選ばれて、実際の商品として発表された。ANAもなかなか粋なことをやると感心した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081114-00000517-san-soci

China001

私のゼミ生の企画も3点ほど選ばれたようだ。
彼らの考えた旅行というのが、比較的豊かな人を対象とした高級旅行、たとえば「上海貴族旅行」や「二人だけのリッチデート上海3日間」などだ。本当に金持ちのニーズをとらえているのか気になるところであるが、せっかく商品になったのであるから、是非売れて欲しいものだ。

China002
China003

学部レベルの学生が考えた商品企画が実際に販売される商品になることは極めて珍しいことであり、彼らにとっては大変良い経験になったのでないかと思う。

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2008年12月 9日 (火)

品質力の磨き方

ちょうど読み終わったばかりであるが、PHP新書の「『品質力』の磨き方」は良い本だった。

Hinshitsu

リコーで長らく、技術者として製品開発や技術開発に従事されてきた長谷部光雄さんという方が書いた品質管理に関する本である。しかし、これまでの品質管理とは大きく異なる、これから起こるかも知れない問題を未然にどう防ぐのかという視点で書かれたユニークな本である。

いつもの如く、いくつのお気に入りを紹介しよう。

「品質最重点という言葉には矛盾がある。品質を最重点に考えると言うことは、無限にコストをかけることになり、非常に高価な製品を作ることである」と、安易に品質重視に走ることを否定している。コストを意識しながら、あるいは今までの大きさや重さを維持しながらどうやって品質を向上させることを考えるところに技術の進歩があると説く。
何でも規制や検査という形で安易に防止策に走り、結果として企業だけでなく消費者に余計な負担を強いている金融庁や厚生労働省に聞かせてやりたい言葉だ。

カラシニコフの設計思想
カラシニコフという自動小銃があって、世界中で使われている。ロシア製である。ロシア製で安いために世界中で使われているのかと思ったら、そうではない。非常にシンプルで余裕を持った設計になっているために、誰にでも作れるという利点があり、かつどんな悪条件で使用されても故障することが少ないという特徴を持つ。そのために人気があるのだという話は新鮮な驚きだった。

「必要な情報とは、次の行動を決定するための情報なので、すべての行動が終わった後では意味がない。」
これは、私の「仮説思考」で言っている話と同じだ。

中でも一番気に入った言葉は、
「適切な目標を設定できたときの技術の可能性というものは、無限であると感じさせる話である。」
この文章で、技術を人間と置き換えても、通用する素晴らしい話だ。実際、どんな話だったかは本書を是非お読みください。

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2008年12月 7日 (日)

優れたリーダーは感情へ働きかける

11月始めの大隈塾のゲストスピーカーは伊藤忠会長の丹羽宇一郎氏だった。
丹羽氏は伊藤忠を立て直しただけでなく、日本のオピニオンリーダーとして多方面で活躍中だ。

その丹羽氏が早稲田ビジネススクールの学生たちにリーダーシップについて語ってくれたのであるが、学生にとっては至極の講演だったと思う。ただし、彼らがどこまでそれをくみ取ってくれたかは・・・。

丹羽さんの話の中で、いくつか印象に残った言葉を上げてみると、
今回のアメリカの金融危機は、金融機関の経営者が他人の言葉や情報を鵜呑みにして意思決定したのがいけない。経営者は一次情報に基づいて、自分の常識を働かせて判断しないといけないと言っていた。同感である。

阪神が巨人に13ゲーム差を逆転されたことを引き合いに出して、リーダーシップにおける精神や気力の重要性を説いていた。また、優れたリーダーは感情へ働きかけることで、共鳴の波長を創り出すことにあるとも言っていた。おもしろい。またノーベル賞を受賞した小柴さんの言葉を引用しながら、経営者は常に問題意識を持ち続けて、昼夜考え抜くことが大事で、そのためには昼間は知性と理性を働かせ、夜は感性と直感を働かせるのだそうだ。私がスパークする思考で言っていることに極めて近いので、驚いた。

さらにトップには自信がなくてはならないが、その自信は「狂いに似た確信」であると断定していた。

学生からのリーダーになるためには我々は何を学ぶべきか、あるいはどうしたらよいのかという学生からに質問には、
最初の10年で底力をつけ、次の10年で自分の仕事を徹底的に勉強し、最後の10年で人間を知ると答えていた。良いこと言うな。したがって最初の10年は死ぬ気で働くことが大事とも言っていたが、今時こう言うことをはっきり言ってくれる経営者は珍しいので、とてもうれしい。

丹羽さんは自社の経営以外にも政府の委員などをたくさんやっているが、それとは別にボランティアで世界食糧計画(WFP)を通じて恵まれない人々への食糧支援活動をサポートしている。

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2008年12月 5日 (金)

デザインとは何かを発想すること

昨日の日経新聞のスポーツコラム「フットボールの熱源」にまたも、おもしろいコメントが載っていた。
英国人曰く、日本ではデザインという言葉の概念が正しく理解されていないような気がする。英国ではデザインとは何かを発想することであって、それを紙の上に絵として描くことではない。

頭の痛い話である。日本ではデザインとがデザイナーというと絵の描ける人あるいはそうしたスキルを持った人というふうにとられてしまう。
サッカーの現場でもクリエティブナ選手を育てようというかけ声の下に、実際には技術を教えることに必死になっているはおかしいではないという主旨であった。

この記事を読んで、ビジネスにおいても全く同じであると感じた。日本の企業では仕事のできる人というと、分析ができる人やリポートを書くのがうまい人あるいは会議をまとめることができる人であって、決して斬新なアイデアを出せる人ではない。若い人や荒削りの人間をもっと自由に発想させて、伸ばしてやる努力が必要なのではないか。
大学で教えているとそんなことを痛切に感じる。

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