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2008年3月 8日 (土)

サプライヤーロジック

昨日タクシーに乗ったら、後部座席の広告ポケットにこんなチラシが載っていた。

Ic001

要するにNTTがICテレホンカード用の公衆電話サービスを終えるに当たって、未使用のICテレホンカードがあれば、使えるテレホンカード(テレカ)に交換しますよ。というお知らせだ。
皆さんICテレホンカードを使ったことがあるだろうか?
偽造テレホンカードに手を焼いたNTTが磁気の代わりにICチップを埋め込んだ安全性の高いテレカとして導入したものだ。

Ic002_2

ところが、全く普及せずに結局廃止の憂き目を見るに至った。
新しい技術(IC)が古い技術(磁気)に置き換わったというか逆戻りした珍しい事例である。それではICカードが問題なのかと言えば、もちろんそんなことはない。
同じ時期に同じように磁気カードからICカードに変わって、テレカとは逆に大成功を収め今日もまだ進化し続けているカードがある。イオカード改めSUICAである。

Suicaの方が非接触式のためICテレホンカードに比べて多少使い勝手は良いが、技術的にはどちらも同じようなものであり、いわゆるICカードである。
それではなぜ、片方が廃止され、片方はますます発展しているのであろうか?

内田流の解釈は、ICテレカはNTTにとってのメリットは明確だったが、消費者には磁気式と比べて特段のメリットがなかった。それに対して、Suicaの方は消費者に明らかなメリットがあったためである。
もう少し具体的に言えばテレカは偽造で被害を被っていたNTTが自分たちにとってメリットの大きい(すなわち偽造しにくい)ICカードを入れたのに対して、消費者から見ると従来の公衆電話では使えないICテレホンカードは却ってサービスレベルが劣る商品だったと言える。ちまたに磁気カード用の公衆電話とICカード用の公衆電話が混在していたのを覚えている人もいるかも知れない。
JRの方はもちろん事業者のメリットもあるが、それ以上に消費者の利便性が向上したことが上げられる。例えば、定期を使って乗り越しした場合は、従来は精算窓口で支払いをしなくてはいけないのが、チャージさえしておけばそのまま改札を通り抜けられるとか、あるいは定期券を紛失した場合再発行してもらえるとか、明らかに従来の磁気カードより使い勝手が良かった。

こうした基本機能の充実があって、初めて電子マネーとしても普及したのだと思う。
今やクレジットカードになったり、携帯電話に組み込まれたり、私鉄と相互乗り入れになったりととどまるところを知らない。Edyに代わって電子マネーのスタンダードになるのではないかという声すらある。ICテレホンカードの末路とは大きな違いである。

新しい製品を発売したり、新しいサービスを提供する場合は、事業者側の論理(サプライヤーロジックという)ではなく消費者側の論理(ユーザーロジックという)が大事なことを表す好例である。

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