パナソニック
今日の日経に松下電器が社名をパナソニックに変更する話が正式に決定したと載っていたいた。「えっ、松下がなくなっちゃうの!」と言う驚きである。
松下は一昔前まで『国内での松下』、『海外でのパナソニック』以外にも、『AV関係ではテクニクス』という別のブランドまで持っていて、ブランド・アイデンティティの分かりにくさは以前から指摘されていた。おまけに、ビクターという別会社ブランドまで存在していた。
しかし、ここ数年は社名以外の部分でパナソニックへの統一が進んでいたため、社名変更も時間の問題と言えば、時間の問題だったのかも知れない。ビクターも売却してしまったし・・・。
松下と逆のブランド統一を行ったのが日産のケースだ。日産は昔は『国内では日産ブランド』を使い、海外特に最重要マーケットの『アメリカではダットサン』という別ブランドを使っていた。10年以上も前であるが、グローバルブランドに統一する必要があるというときに、海外で慣れ親しんだダットサンを捨て、すべてを国内と同じ日産(NISSAN)に統一した。当時は新ブランド浸透のためだけにアメリカで200億円という巨額の金を広告宣伝やCIに使って、成果があまり上がらず失敗だったと言われた。しかし、今から考えるとあのときやっていなければ今頃は大変だったのではないかと思う。今やNISSANは世界で知られた統一ブランドとなっている。
松下の話に戻ると、我々の世代であれば、経営の神様としての松下幸之助の現役時代を知っているだけについに松下の名前が消えるのかとそちらの面で感慨深い。個人的にももっとも尊敬する経営者を二人あげろといわれれば、本田宗一郎と井深大と松下幸之助の3名の中から選ぶのではないかと思っている私にとっては、頭では正しい戦略と理解しても、やや寂しい思いはぬぐいきれない。
こうした思い切った意思決定は中村社長が徹底的な破壊を行い、次に大坪社長が再構築を行うための象徴と見ると分かりやすい。この話、新聞では大坪社長の決断のように書かれているが、今回の仕掛け人は実は大坪社長ではなく、中村会長なのではないかと思う。
ここまで思い切った意思決定をしたのだから、後はパナソニックブランドを徹底的にグローバルブランドに育て上げて欲しい。かつては安売りブランドの代名詞だったサムスンが今では高級ブランド化しているのがいい先生になるのではないか。
やや飛躍するが、ソ連が崩壊し、一度どん底まで落ちてからロシアとして再度大国に生まれ変わるまでには、破壊したゴルバチョフ、再構築に失敗したエリツィン、再構築に成功したプーチンと3代にわたるリーダーを必要している。松下も中村、大坪という二人の経営者が違うステージをマネジすることになったと思わえば分かりやすい。3人目が必要になることのないように祈っている。
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コメント
ViViさんへ
コメントありがとうございます。
ViViさんが言うとおり、少し遅すぎたのかも知れませんね。
松下がソニーと同じようなグローバルブランドとして羽ばたくことが出来るのか温かく見守りたいと思います。
また、これは個人的な意見ですが、パナソニックが世界に冠たるブランドになるためには、マーケティングやブランディングだけでは不十分で、消費者から見たときに「なくてはならない製品」あるいは「パナソニックらしい製品・サービス」を提供していくことが出来るかにかかっていると思います。
投稿: 内田和成 | 2008年1月14日 (月) 23時08分
Keyさんへ
先ほどViViさんへのコメントを書きましたが、Keyさんのコメント見落としていました。どうもすみません。
私が書いたことは既に書かれてました。
keyさんの言うとおり、消費者視点でどれだけ組み立てられるか、あるいは支持を得られるようなマーケティングを展開していけるかと言うことだと思います。
投稿: 内田和成 | 2008年1月14日 (月) 23時01分
TKCさんへ
私は経営者にとってもっとも大事な仕事の一つに次世代へ経営基盤を引き継ぐことがあると思っています。もちろんその中には、後継者の指名や育成も入っています。
個人的には好きなタイプではないですが、徳川家康はこの点に於いて最も優れていた経営者と言えるでしょう。
中村さんが織田信長(破壊と創造を行ったといわれている)に終わらず、将来への経営基盤まで整備して大坪さんに渡したとしたら、それはすごいことだと思います。
ちなみに経営者にとって大事な要素には、上に上げたこと以外には先を見通す力(先見性)と実行力(意思決定を含む)の2つがあると思います。
投稿: 内田和成 | 2008年1月14日 (月) 22時52分
週末でブログ更新をさぼっている間に多くの人からパナソニックへのコメントいただきました。ありがとうございます。
ともゆきさんへ
渦中にある人としては、私のような感傷に浸っている暇はないでしょうね。是非、社名とブランドの統一&再構築に成功してもらいたいと思います。応援しています。
投稿: 内田和成 | 2008年1月14日 (月) 22時48分
欧州、米州では1960年代から全製品Panasonic、アジアでは2003年からPanasonicに統一。それに比べ日本での統一は遅すぎる。もっと早くPanasonicにすべきだった。
National・Panasonic・松下では広告費も他社より3倍かかる。
日本でのメディアや新聞では「松下」として報道され商品はPanasonicなので、シャープ=液晶のように、Panasonic=プラズマ、Panasonic=ブルーレイという確固たるイメージの定着ができにくいという問題があった。
シャープは日本国内だけだけど液晶が売れたから、少なからず相乗効果が出て電子レンジや冷蔵庫、空気清浄器といった商品でも躍進することができたが、Panasonic・Nationalと分かれていては相乗効果も期待できない。
これからのユビキタスネットワーク時代に商品によってブランドが分かれているのはナンセンス。混乱を招き不利。
今の若者はPanasonic・National・松下は一緒のメーカーだと知らない人がたくさんいるのでブランド力が分散で非効率だ。若者に一番人気のPanasonicに統一する事でブランド力分散も防げる。
今回の社名ブランドのPanasonic統一は当たり前の事であり、もっと早い時期にしておくべきだったと考えるのが常識。
(同社の調査)松下電器の知名度は北米、欧州で10%以下。Panasonicの知名度は約95%。
(インターブランド社の調査)Panasonicブランドは名誉ある【世界トップブランド100】に8年連続ランクイン。
投稿: ViVi | 2008年1月14日 (月) 06時41分
「ブランド」とは・・・
以前は、企業側がマスメディア(広告など)を通じブランディングを行っていたが、ネットの普及で、そのブランディングが消費者によって行われていると思います。
商品の品質自体に圧倒的な差がなくなってきた今
松下がどうブランディングしていくのか、楽しみです。
基本は、当たり前ですが、「消費者の視点から
すべてのブランディングが始まる」ということですかねぇ。
投稿: key | 2008年1月13日 (日) 18時07分
>今回の仕掛け人は実は大坪社長ではなく、中村会長なのではないかと思う。
中村さんは、社長時代に、破壊だけでなく創造のロードマップも同時に描いていたということでしょうかね。
自分の社長在任期間だけでなく、次、次々の社長の時代にも大きく正の影響を与えるという意味で素晴らしい経営者と言えるかもしれません。
トヨタの奥田さんもその一人かな。
投稿: TKC | 2008年1月12日 (土) 10時27分
Panasonicに係る者として、今回のブランド統一は前向きに捉えています。中村会長が掲げたグローバル・エクセレンスという世界の優れた企業となるには、もはや国内市場だけには留まっていられない状況です。
もちろん、白物家電でNationalというブランド名が消滅することに、一抹の不安を抱いている人もいると思いますが、次第に馴れてくるでしょう。
そのためにも良い製品づくりをしていくことが使命だと思います。大坪社長が言いたいのは、そうしたメッセージもあります。
投稿: ともゆき | 2008年1月12日 (土) 07時53分