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2007年11月26日 (月)

大塚先生

今月の嶋口研究会のゲストスピーカーは青梅慶友病院の創業者で理事長の大塚宣夫先生だった。大塚先生は高齢化社会が叫ばれる遙か前の1985年に青梅に老人病院を開院し、これまで大成功を遂げてきたお医者さんです。
慶應ビジネスクールで嶋口先生(現
法政ビジネススクール教授)に教わったことのある人には、必ず一度はやったことのある青梅慶友病院のケースの主人公と言った方が早いかも知れない。

私も大塚先生ご自身の話を聞くのは、3度目くらいであるが、毎回とても深い学びがある
珠玉の講演である。

老人病院というと、暗くて話題にしたくないようだったものを、豊かな老後を過ごせるようにあるいは自分の親を安心して預けられる病院をというコンセプトの下に、病院を抜本的に考え直したという話は以前にも聞いていたが、改めて大塚先生の先見性に頭が下がる思いでした。

大塚先生は病院の役割を1)医療再考、2)生活再構築、3)質の豊かな生活、4)大往生の実現、5)社会への提言の5つと定めて、それに向かって様々な施策を実施している。
たとえば、2番目の生活再構築については、普通の老人病院では手間もかかるし、人手も足りないためにわざと寝たきりになっている患者が多いのを、極力自分でやるように仕向けるそうで、それにより人間が尊厳を取り戻していく話などがあった。
さらに3番目の質の豊かな生活については、食事・アルコールの持ち込みが自由と聞いたときには驚きを通り越して、ウーン、普通の病院って何なんだろうかと考え込んでしまった。

先生のところでは、究極のサービス業を目指すと言うことで「あなたのための一食」というオーダーメイド食事をプロのシェフが作るサービスをやっているそうだが、もう死期が近い人にそれをやってあげると大変喜んで、次は2週間後だよと言うと、とても持ちそうもない人まで2週間生き延びて食事を食べるそうである。いい話といえばいい話だし、人間の生命力ってすごいなと言ってしまえば、そうも言える話である。

また、今話題になっている介護の問題については、「やはり自分の親は自分で面倒を見なくては」という素人考えが患者、介護者の両方に悲劇をもたらすという話も大塚先生の口から聞くとそうだろうなと思ってしまった。先生に言わせれば、介護には「知識」、「技術」、「道具」、「仕組み」の4つが必要なのに、普通の人はどれ一つ備わっていないという。仰るとおりである。自分の浅はかな知恵を反省した。

大塚先生、これからも日本の高齢化社会を豊かにするために、よろしくお願いします。

 

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コメント

zuKaoさんへ

コメントありがとう。
大塚先生がすごいのは、今なら当たり前とも言えることを20年以上も前から、唱えるだけでなく、実践していたことだと思います。

投稿: 内田和成 | 2007年12月 3日 (月) 22時31分

zuKaoです。また御邪魔いたします。

医療関係の仕事に従事しながら、また多摩地方の住民でありながら大塚先生の御名前を存知あげなかった自分に少々恥ずかしさを覚えつつもコメントさせて頂きます。

大塚先生の提言される5つの病院の役割のうち私が知っている情報をコメントいたします。

まず2番目の「生活再構築」。大塚先生は「普通の老人病院では手間もかかるし、人手も足りないためにわざと寝たきりになっている患者が多いのを、極力自分でやるように仕向ける」とおっしゃっていたようですが、同じような話をワタミのCEO・渡邉美樹氏が著書「もう、国には頼らない。」のp.205で以下のように記しています。

私たちは介護の世界で、「おむつゼロ」「経管食ゼロ」「特殊浴ゼロ」の、3大ゼロ達成を掲げてきました。その方針に「車椅子ゼロ」も加えて、4大ゼロにしました。ロレーターを普及させて、車椅子をなくす運動を起こしてやろうと思っているのです。

http://787.blog22.fc2.com/blog-entry-402.html

次に3番目の「質の豊かな生活」ですが、これは先週、聖路加の日野原先生(96歳だそうです)の御講演を拝聴した際「食品は医療の中で最も基本的な事」とおっしゃっていた事と同意と思います。(メモを読み返して確認してきたので間違いないです。)

介護の問題は非常に難しい問題だと思います。私の母も実の母(私の祖母)を自宅で介護していましたが、やはり体調を崩しました。幸いにも私の祖母が入った老人ホームの方は皆親切で祖母の通夜にも仕事着のまま駆けつけてくださいました。私は仕事の合間に駆けつけてくださったホームの方々の姿を見て、本当に祖母は幸せな最期を迎えられたのだなぁとつくづく感じました。

以上雑多な感想も交えながらのコメントでした。

投稿: zuKao | 2007年11月27日 (火) 21時49分

嶋口先生のケースを学んだ際にも感動したのですが、大塚先生のお話を直接お聞きし、より一層感動が深まりました。

ご講演の中で、事業のコンセプトを「老後の安心と輝きをつくる」と定義され、①3K(汚い、くさい、暗い)の打破、②病院をサービス業に、③新しい価値をつくるを軸に展開されてきた、とのことです。

例えば、サービス業ということで、ホテルと同様に「お客さま」ならぬ「患者さま」と呼びかけることをいち早く定着させました。お話をお聞きして初めて気付いたのですが、勤務されている皆さん自らが患者さまに対して発するよりも、他の病院関係者が居る中で「患者さま」と呼ぶことの方が、「なんだあの病院は!」ということで辛かったようだとのこと。

この例一つとっても、勤務されている皆さんの強い意思を感じます。この背景には、閉鎖的と思われる業界環境の中、大塚リーダーという名経営者が理念を共有すべく語り続け、全体が一丸となることができたからなのであろうと思いました。

理念を支え、実践しやすくするための評価制度、理念共有の研修、勤務形態など仕組みとしてここまで作られてきたすごみは、勉強させていただくことばかりでした。

お忙しい中、本当にありがとうございました。


投稿: 城出(内田ゼミ) | 2007年11月27日 (火) 08時43分

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