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2007年11月

2007年11月29日 (木)

からくり人形

私の古い友人に高田正隆さんという金にならない仕事をやることにかけては天才的な男がいます。


その彼がまた、金にならないことを手伝っているので、たまには応援しないと申し訳ないと考え、彼が今手伝っている仕事を紹介します。
それは日本古来の伝統工芸である「からくり人形」と呼ばれるものです。私も勉強不足でよく知らなかったのですが、数百年前から伝わる工芸で、技術的にも当時の最先端を行っていたものだそうです。

このからくり人形については、下記のサイトに紹介されていますので、興味のある方はご覧ください。特にビデオの最後の方に出てくる、茶運び人形には感心しました。
からくり人形について:
http://www.karakurirobot.org/
ビデオによる紹介:
http://www.karakurirobot.org/index.php?option=com_content&task=blogsection&id=5&Itemid=28

そのからくり人形の伝統を何代にもわたって守っているのが尾張在住の玉屋庄兵衛さんだそうで、この人形が来月アメリカに渡って紹介されるそうです。
それをいろいろ手伝っているのが冒頭の高田氏で、今回も自費でアメリカまで渡るようですから、力が入っています。高田さんがんばってください。

彼は、これ以外にも文楽人形をフランスに紹介する仕事とか、いかにも儲けに繋がりそうもない仕事をやっていますので、皆さんで是非応援してあげてください。

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2007年11月28日 (水)

嶋口先生への恩返し

先日、恩師の嶋口先生に頼まれて、法政大学のビジネススクールに出かけて、異業種格闘技の講義を行ってきた。嶋口先生は今年慶応ビジネススクールを退官して、法政のビジネススクールに移られた。
場所は市ヶ谷と飯田橋の間にある法政大学そばの専用校舎である。ビジネススクールとしては新しいこともあると思うが、それ以上に法政大学のビジネススクールにかける意気込みが伝わってくるすばらしい校舎だった。

例えば下の写真を見てもらうと分かるように、教室は円形の階段状になっており、クラスディスカッションが大変やりやすい作りになっている。また、PCプレゼンも正面に大スクリーンがあるほかに教室の両端にも天井からつり下げられた形ディスプレイが2台あって、どこからでも見やすい構造になっている。

Hosei002

嶋口先生の講義を取っている30名程度の学生、と言っても全員社会人であるが、を相手に2時間弱の講演と30分強のQ&Aを行った。
全員大変熱心に聞いてくれて、終了後の質問も良い質問が多かった。さすが嶋口先生の教え子たちである。

Hosei003 Hosei004

ちなみに、我々早稲田大学のビジネススクールも再来年の2009年度からは、現在建設中の新校舎に移って講義が始められる予定だ。出来上がりを楽しみにしている。

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2007年11月26日 (月)

大塚先生

今月の嶋口研究会のゲストスピーカーは青梅慶友病院の創業者で理事長の大塚宣夫先生だった。大塚先生は高齢化社会が叫ばれる遙か前の1985年に青梅に老人病院を開院し、これまで大成功を遂げてきたお医者さんです。
慶應ビジネスクールで嶋口先生(現
法政ビジネススクール教授)に教わったことのある人には、必ず一度はやったことのある青梅慶友病院のケースの主人公と言った方が早いかも知れない。

私も大塚先生ご自身の話を聞くのは、3度目くらいであるが、毎回とても深い学びがある
珠玉の講演である。

老人病院というと、暗くて話題にしたくないようだったものを、豊かな老後を過ごせるようにあるいは自分の親を安心して預けられる病院をというコンセプトの下に、病院を抜本的に考え直したという話は以前にも聞いていたが、改めて大塚先生の先見性に頭が下がる思いでした。

大塚先生は病院の役割を1)医療再考、2)生活再構築、3)質の豊かな生活、4)大往生の実現、5)社会への提言の5つと定めて、それに向かって様々な施策を実施している。
たとえば、2番目の生活再構築については、普通の老人病院では手間もかかるし、人手も足りないためにわざと寝たきりになっている患者が多いのを、極力自分でやるように仕向けるそうで、それにより人間が尊厳を取り戻していく話などがあった。
さらに3番目の質の豊かな生活については、食事・アルコールの持ち込みが自由と聞いたときには驚きを通り越して、ウーン、普通の病院って何なんだろうかと考え込んでしまった。

先生のところでは、究極のサービス業を目指すと言うことで「あなたのための一食」というオーダーメイド食事をプロのシェフが作るサービスをやっているそうだが、もう死期が近い人にそれをやってあげると大変喜んで、次は2週間後だよと言うと、とても持ちそうもない人まで2週間生き延びて食事を食べるそうである。いい話といえばいい話だし、人間の生命力ってすごいなと言ってしまえば、そうも言える話である。

また、今話題になっている介護の問題については、「やはり自分の親は自分で面倒を見なくては」という素人考えが患者、介護者の両方に悲劇をもたらすという話も大塚先生の口から聞くとそうだろうなと思ってしまった。先生に言わせれば、介護には「知識」、「技術」、「道具」、「仕組み」の4つが必要なのに、普通の人はどれ一つ備わっていないという。仰るとおりである。自分の浅はかな知恵を反省した。

大塚先生、これからも日本の高齢化社会を豊かにするために、よろしくお願いします。

 

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2007年11月23日 (金)

空間認知能力

数日前の日経新聞スポーツ欄「駆ける魂」というコラムにおもしろい解説記事があった。それは、昨年度のJリーグチャンピオンで、先日アジアのチャンピオンにもなった浦和レッズのミッドフィルダー長谷部誠選手についての記事である。

長谷部選手は中盤の選手で、レッズの要になる選手である。プレーも結構目立つ。しかし、その記事によると「同僚の田中達也のように俊足で突き進んでいくわけではない。懐の深い永井雄一郎のゆるゆるとしたドリブルとも違う。」それにもかかわらずドリブルするとするすると前に進んでしまう。そのわけを本人に聞くと、長谷部が「ああ、それは空間認知能力です」と答えたという。

始めて聞く言葉なので、大変興味を持った。長谷部によると「相手がどこどこに立っているかを瞬間的にとらえて、ではどこにどうボールを出していったら、次のスペースにうまく運べるかを見つけるんです」と言うことらしい。
これはビジネスにも全く当てはまる話だと思った。仕事が出来る人間は、「これを相手に言ったらこういうに違いない。そうしたら次はこう言おう。」、「こういう提案をしたら、こんな反応があるに違いない。そのためにこんな答えや二の矢を用意しておこう」といった具合に常に先を読んで仕事をしている。それに対して、仕事の出来ない人間はまず目の前の仕事をこなすのに手一杯で、それを終えるとほっと一息ついてしまう。そこに相手から次のタマが飛んでくるともう避けられない。

長谷部によれば、こうしたことが出来るためには、一つ一つのプレーの質を高めないといけないと言う。たとえば、「FWに縦パスを入れるとき、その背後にいるDFがどの方からボールを狙っているかを見極めて、どちらの足にパスを当ててあげるべきか」を考えるという。すごいことだ。
そうして、こうしたことがちゃんと出来たかどうか、毎回反省して自分のプレーの幅を広げていくそうだ。内田流に言えば、20の引き出しをたくさん用意していくと言うことになるのだろう。

仕事でも、空間認知力ばかり高くても一つ一つの仕事をきちんとこなせないとうまくいかないと言うことなのだろうが、ずば抜けた才能を持たない人にとっては、一つ一つの仕事の質もさることながら、こうした先を読んだ上で仕事をこなしていく能力というのもあったらありがたいに違いない。

私もこれからこの言葉を使わしてもらおうと思った。コピーライトはもちろん長谷部選手である。

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2007年11月22日 (木)

ハンバーガーを待つ3分間の値段

本屋でふと見つけた文庫本「ハンバーガーを待つ3分間の値段」(斎藤由多加著、幻冬舎文庫)が結構おもしろかった。私はゲームをやらないので全く知らなかったが、ゲーム業界では有名人らしい。一時大変にはやったシーマンなどのゲームの生みの親だそうだ。

基本的に「ほぼ日刊イトイ新聞」に載せた記事が中心で構成されているのだが、彼が街の中で見つけた、ちょっと気になることや頭に来たことを題材にしてちょっとユニークな見方やなるほどなというものの見方が満載の本である。また街中にどこでもありそうだが、よく考えるとちょっと変といった写真を豊富に取り入れている。

Hamburger

たとえば、タワーというゲームというコラムでは、「人間が一つの目的を持ったとき、必ずしも『情報量が多いこと』がリアルとはならないようです。-略- どんなに素晴らしいCGをつくったところで、プレイヤーの思考の中で化学変化を起こせないものは、不要なノイズに過ぎないのがゲームです。」
うーん、そうなんだ。航空写真と手書き地図のコラムと合わせ読むとより参考になる。
(情報とはマイナスのエントロピーの話と共通だな。)

あるいは「デジタル情報産業に関わっていた感じるのは、情報とお金の相性の悪さです。-略- 極端すれば情報提供の対価は情報でしかあり得ないのではないか、とすら思えます。』
けだし、名言である。

でも一番すごいのは、前書きにある現象と本質の違いについて述べた以下の文章であろう。
「私たちが目にするものはすべて『現象』ですが、もし『本質』がその反対側にあるとすれば、それを発見するためには、少しあまのじゃくな視点が必要に思えます。」
これって、ビジネスにも全く通用する話で、その業界の常識に浸っているとつい表面だけの理解で終わってしまい、その現象の根底に横たわっている大きなパラダイムシフトを見逃すことがあるということだと思います。

昨日書いた、カンブリア宮殿ドトールコーヒーの話にも通じるでしょう。

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2007年11月21日 (水)

ドトールコーヒー 鳥羽博道氏

今週のカンブリア宮殿はおもしろかった。ドトールコーヒーの創業者で、現名誉会長の鳥羽博道氏(とりばと読む)がゲストである。

私自身ドトールコーヒーの愛用者であるが、それ以上にビジネススクールでスターバックスのケーススタディをやるときに必ず対比させるのがドトールである。そのドトールに対する理解がさらに深まったがうれしい。

価格を先に150円に決めてからドトールを始めたとか、今でも直火焙煎にこだわり備長炭を使っているとか、ジャーマンドッグをつくるために最適のソーセージを探して羊の腸にたどり着いたとかいろいろおいしい話が満載だった。ちなみに私もジャーマンドッグがおいしいと思っていたのだが、今回でなるほどねと思ってしまった。
しかし、実は一番おもしろかったのは司会の村上龍が、みんなが同じものを見てどうして鳥羽さんだけがそれに気がついたのですかという質問とその答えだった。

1971年に業界の人間30人くらいでヨーロッパ視察に出かけたときに、パリのカフェでおもしろい現象を発見したそうである。それは、店内にテーブル席があるのに、そちらはがらがらで、一方カウンターの横でコーヒーを立ち飲みしている人が山ほどいた。不思議に思って聞いてみると、テーブル席よりカウンター席のコーヒーの方が半値で済むそうである。朝の忙しい時間帯では、テーブルに座ってゆっくりコーヒーを飲むより、カウンターで飲んでそのまま会社に向かう方が効率的なことにも気がついたそうである。そうして、「これだ!日本でカウンター式でセルフサービスのコーヒーを毎日飲んでも懐に響かない価格で提供しよう」と思ったそうである。
そして、日本に戻ってからドトールコーヒーを始めて大成功したわけであるが、村上氏の質問に答えて「それは危機感のある人とない人の違いでしょう。関心があれば見えるものが、関心がないと見えていても気がつかないのでは。」と答えていた。素晴らしい。全く同感である。

なぜ鳥羽さんが危機感を持っていたかというと、彼は元々喫茶店にコーヒー豆を卸す商売をやっていた。そして喫茶店ブームとも相まって、コーヒー豆の価格が上がり、喫茶店のコーヒーの値段も上がっていった。同業者はこうした状況が当たり前と思ったり、特に危機感を抱かなかったのに対して、鳥羽氏はこれではいつか消費者が払える価格を超えてしまう。そんなビジネスは長続きしないと思ったそうである。

以前直にお会いしたときには十分話す時間もなかったこともあるが、こんなにすごい人とは全く気がつかずに、ごく普通の経営者に見てしまった。
「同じものを見ても意識している人には見えるが、ただ見ている人には気づかない」とは私のことだったんだ・・・。私の眼力のなさを痛感してしまった。

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2007年11月20日 (火)

創造力感想文(続き)

創造力の感想文をたくさんもらっています。
皆さん遠慮っぽくて、ブログにアップしてくれないので、一部を私の方で転載しています。

まずは、以前早稲田のビジネススクールで私の講義を取ってくれた植木さんからです。

「読み終えた多くの方々がこの本を通じて多くの示唆を得たように、私もこの本を通じて改めて確信したことがありました。

 それは、今後、社会や経営のリーダーを目指すものは、仮説思考力を身につけるべく、常日頃から仮説思考力を鍛える訓練をしなくてはならないということです。

「創造力」P255にこのようなことが記されています。
「リーダーは、部下からの新しい提案の相談を受けたときに、そのアイデアの着想の実現可能性を認識させることである。実現可能性を立証するには、その着想全部をやってみる必要はなく、それが可能であることを示すだけでよい。ポイントがどことどこにあるかを要領良く見つけて、そこさえ押さえれば可能性が立証できることを担当者に教えてやる。」

 つまり、部下から提案を受けた際に、上司に仮説思考力がなければ、実現可能性を判断することができないために方向づけをしてやることができない。結果として、せっかく貴重な提案もふいになってしまっているケースが、多くの企業の中で見られるのではないでしょうか。今では社員が新たな商品やサービスを提案できる提案制度のような類のものを取り入れる企業も増えていると聞きます。しかし、そもそもリーダーや上司に、部下からの提案を受け入れられる能力(実現可能性を判断できる能力)がなければ、単なるハコモノに過ぎません。肝心なことは、新しい提案からインパクトある成果を上げたければ、その前に「リーダーや上司は、仮説思考力を身につけるにはどうしたらよいか?」という大論点に対する打ち手を考えないといけないことです。」(以下略)

次に蒲池さんからです。

「お礼のご返事がおそくなり、申し訳ありません。
「創造力」読ませていただきました。
創造力の出発点である「個性(人間性)」を尊重し、
労働に影響する「働く」「考える」「喜ばれる」の3要素
をうまく循環させ、組織を活性化させ運営していく。
その実現にはリーダーの役割が重要である。
ということが、特に印象に残りました。
「自分個性を主張しながらも、他者の個性を認める」
ということも、自分がリーダーになったときには
一番肝に銘じておきたいことです。

2回読みましたが、何度でも読み参考にさせていただきたいと
思います。
この度は、素晴らしい本を無償で送っていただきありがとうございました。そして、ご返事がおくれましてすみませんでした。

わたしも、地方で働いており、大学院などアカデミックな所に
通えませんので、先生のブログいつも拝見し参考にさせて
いただいています。今後もお仕事頑張ってください。

最後に、お忙しいところ恐縮ですが、
「リーダーシップ」で一番重要なものはどんなこととお考えですか?
是非、参考までに聞かせてください。
ちなみに、私は「決断して、責任をる」ことだと思います。」

蒲池さんの問に対する答えは、一義的というか直感的には「決断して、実行すること」と思いますので、蒲池さんの意見にかなり近いです。しかし、最近はそれ以上に、後継者を育てる、あるいは組織が継続的に機能する仕組みを作ることが、もっと重要かなと思うようになりました。人物的には大嫌いですが、徳川家康がその資質に優れていると思います。

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2007年11月19日 (月)

リーダーの引き際

民主党の小沢一郎が演じた辞任劇から2週間ほど経過した。
この間に小沢氏に対する毀誉褒貶がいろいろあったが、私はそれを論じるつもりはない。しかし、今回の事件(あるいは騒動と呼ぶべきか)を通じて学んだことはリーダーの引き際の難しさと後継者育成の難しさの両方である。
要するに小沢氏が引退の花道を飾り損なったのではないかということであり、さらには民主党には小沢氏に変わる後継者が育っていないのではないかと言うことである。後者については、小沢氏が自分のことばかり考えており、後継者育成のことを考えていないことが明らかになったという方が正確かも知れない。

先週火曜日(11月13日)の日経スポーツ欄に元プロゴルファー村口史子が書いたスポートピアというコラムにスポーツ選手の引退の話が出ていた。1999年に賞金女王になったほどだから、実力はある。その村口選手が2003年のシーズンが終わったとき、「優勝争いをするレベルで戦うのは難しいな」と考え、あと1年プレーして引退しようと決めたそうだ。やれるだけのことはやって引退しようと考えてプレーしたこともあり、翌2004年は、翌年のシード権を獲得できたとのことなので、結果として満足いく成績は残せたようだ。しかし、彼女は当初予定通り、惜しまれながら引退したそうだ。なかなか出来ることではない。
彼女曰く、会社員なら定年がある。プロ野球選手やJリーガーなら、現役を続けたくても球団から肩たたきにあう。ところがゴルフはプレーと同じで自己判断を求められる。だから辞め時が難しいと説く。その通りであろう。
この記事を読んで、今回の騒動を思い返せば、経営者でも辞め時は難しいが、政治家はもっと難しいと言う印象を持った。

経営者の辞め時に関しては、また回を改めて述べてみたい。

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2007年11月16日 (金)

グーグル対マイクロソフト場外編

11月に入ってから、グーグルが携帯電話用の基本ソフトウエア(OSなど)を開発して、無償で通信会社やハードウエアメーカーに提供するというニュースが発表され、それに対してマイクロソフトをはじめとして競合がどうなるのかという記事が続いている。
日経の見出しだけ見ても、
「グーグル、無償で携帯ソフト」11/6
「携帯基本ソフト、グーグル、無償提供、メール・閲覧も、ドコモなど33社と提供」11/6「マイクロソフト OS搭載携帯 出荷が倍増 グーグル参入、影響は限定的」11/6
「優位性は変わらない、英シンビアンのクリフォードCEO]11/7
「無償ソフト、グーグルが携帯向けも マイクロソフトに転機」11/13
と目白押しである。

既存のOSメーカーであるシンビアンとマイクロソフトの製品が有料なのに対して、グーグルは無料を打ち出している点に特徴がある。グーグルは携帯電話でも、広告で稼ぐつもりなのであろう。うまくいくかどうかは別として、その徹底度合いには頭が下がる。
ちなみに新聞報道によれば、直近時点でシンビアンをOSとして採用している携帯端末が6千万台に対して、マイクロソフトのWindowsMobileを採用している端末は2千万台という。もちろん携帯電話の総端末数は数億台であるから、まだまだ白地のマーケットは大きい。議論のポイントは、一体どこが携帯のOSないしはビジネスの覇権を握るかという話である。

翻ってみれば、マイクロソフトもグーグルも元々は携帯電話とはなんの関係もないビジネスをやっていたのが、ともに携帯電話を重視し始め、そこで場外乱闘ならぬ異業種格闘技を始めているのだからおもしろい。PCでマイクロソフトにOSを独占され、収益が上げられずに苦しんだメーカーがたくさんあった中で、マイクロソフトが携帯でもOSを独占出来るとしたらこれはすごいことだ。

それに加えて、グーグルまで参入となると、いったいどうなることやら、はたまたこうした新興勢力に対して元々の先住民族である通信会社系のシンビアンがどう巻き返しに出るのかも興味深い。この場外乱闘にはアップルもiPhoneをひっさげて参入しているわけで、さらに幅広い業種格闘技が繰り広げられている。
そのフィールドに日本のメーカーや通信会社、IT企業が有力なプレーヤーとして参加していないのは少し寂しい。

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2007年11月14日 (水)

日本ジェノス 上野善久

BCGの元コンサルタントの上野善久さんが代表取締役(COO)を務める会社が日本ジェノスだ。簡単に言えば、江戸時代から続く酒問屋2社が合併して出来た会社であるが、単に合併しただけでなく古い流通構造が今も残るお酒の流通を改革していくという志を持った会社だ。今まだ決して大きくはないが、これから注目してもらいたい会社の一つである。私も個人的に応援している。

上野さん自身は、大学を出た後三菱総合研究所に務め、英国に留学した後BCGに移ってきた。しかし、最終的には実家を次ぐために、BCGをずいぶん以前に辞めた。その後、いろいろ苦労しながら、あるいは楽しみながら、家業だった酒卸の業界に改革を起こそうという野心を抱き、同じ志を持つ老舗イセトーの代表取締役だった伊藤哲也氏(現ジェノスCEO)と組み、現ジェノスを創業して、現在に至っている。
そのあたりの詳細については、下記のサイトを見ていただくとよいかも知れません。
http://gakusei.enjapan.com/2008/top_view/2415/1

その上野さんから、彼の会社が今週金曜(10月16日)夜10時にMXテレビで放映される「FC東京ホットライン」という番組の中で紹介されるという連絡をもらった。
日本ジェノスはサッカーJ1のFC東京の経営にかかわっており、その関係でサッカー番組に出るそうである。わずか1分ほどということであるが、日本ジェノスの会社紹介が内容で、上野さん自身も出演するという。
サッカーに興味のない方も、BCGに関係ない方も、是非ごらんになって感想をお寄せください。実際に放映される時間は22時10分過ぎのようだ。
私も楽しみにしています。

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2007年11月12日 (月)

BCGへの恩返し

先週、BCGの社内でスタッフ向けのミニ講演会をやった。
BCGにはコンサルタント以外に、様々な職種のスタッフが働いているが、それをBCGではGSと呼んでいる。そのGS向けのセッションだった。
コンサルタント向けにはいろいろなレクチャーや勉強会の機会が多いが、GS向けは数が少なく、今回も何年か振りぶりの催しだった。お世話になったBCGへ少しでも恩返しが出来ればと思い、引き受けた。以下はそのときのスナップである。

Bcggs001 Bcggs002

ちなみにテーマは仮説思考で、コンサルティング以外の業務に如何に仮説思考を使っていくかという話だった。参加者からの反応も悪くなく、それなりに役に立つ話が出来たのではないかと密かに自負している。

お陰様で仮説思考の講演もたくさんやらせていただいたが、今回がもっとも女性比率が高く、次のスナップにもそれが表れている。(意地悪い人はこれが私のリクエストによるやらせではないかと思っているかも知れませんが、そうではありませんので、念のため)。

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ちなみに昨年出版した仮説思考はビジネス書としてはとても珍しく女性読者が多いと出版社の人が驚いていた。書店でも一般書コーナーなどに置かれていたこともあり、普段ビジネス書を手に取らない女性も読んでくれたようである。大変うれしいことである。書評などを見ても、日常生活に使えるといった声や、事例が分かりやすいなどの声をたくさん頂戴した。

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2007年11月 9日 (金)

学部ゼミ生からのプレゼント

以前に私は早稲田で学部もゼミ生も担当していることを書いたと思いますが、来年4月からの新ゼミ生が決定し、昨日はその歓迎会がありました。学生らしく安い会費でできる大学そばのカフェで行いましたが、現ゼミ生が3・4年生併せて25名くらい、新ゼミ生が20名ほど集まり、大いに盛り上がりました。(少なくとも私からはそう見えましたが、若い新ゼミ生がどう感じたかは後でよく聞いてみないと分かりません)。

今日ここに記したいことはこのことではなく、その歓迎会で現ゼミ生の3年生が私に誕生日プレゼントをくれました。それは、ゼミ生一人ひとりの写真とメッセージが1枚ずつ収められているミニアルバムでした。全くのサプライズだったので、少し感激しました。そのお裾分けです。

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Album002

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ゼミ生の皆さん、どうもありがとう。

このブログにはあまり日記的なことは載せていないのですが、早稲田の現役ゼミ生たちの紹介を兼ねて、取り上げました。早いもので、来年の3月には4年生(1期生)が巣立っていきます。どれだけ社会で活躍してくれるのか未知数ですが、楽しみです。がんばれ一期生。
4年生も3年生も私のかわいい子供たちです。

実は、別の日ですが、社会人ゼミ生たちもホテルですてきなランチをごちそうしてくれました。こちらも、遅くなりましたがお礼を言っておきます。どうもありがとう。
でも、修士論文には手心は加えませんから、覚悟しておくように・・・。
こちらは社会人ですので、かわいいと言ったら申し訳ないので、頼もしいと言っておきましょう。

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2007年11月 7日 (水)

大局観

先日、テレビを見ているときだったと思うが、将棋では大局観が必要だという話の中で、実は大局観というのは勝負の序盤、中盤、終盤で違うことを指すという話におもわずハッとした。

そこで語られていた大局観とは、例えば中盤では、今は攻めるべき時なのか、あるいは守るべき時なのかを判断するのが、大局観になるそうだ。
それに対して、序盤では形勢を有利にするにはどの当たりに着手するのがよいのか、あるいはどんな陣形で臨むべきかなどがそれに当たるのだろう。一方で、終盤では自分の王様に詰みがあるのかないのか、あるいは逆に敵に詰みがあるのかないのかを判断するのがそれに当たるに違いない。

言われてみれば当たり前の話であるが、大局観というものを常時固定して考えていた私には目から鱗の話だった。私は将棋はしないので、よく知っている囲碁にたとえれば、大局観というのを対局当初から終局まで変わらない大所高所からのものの見方であり、ぶれないものと思っていた。要するにこの勝負をどのような勝負にしようかというようなもので、いわば大局観というよりは対局観のようなものであった。

しかし、考えてみれば、実際に仕事をする上では、場合場合で大局観を使い分けていたような気もする。
例えばコンサルティングの初期においては、いったい何が論点(すなわち解決すべき課題)で、さらに落とし所(答、仮説)は何かを考える。これが大局観であろう。
ところが仕事が始まってからは、この答は合っているのか、あるいはその問題を解くためにどんな作業をすればよいのか、あるいは効率的かを考えることが重要になる。これもその段階での大局観的なものの見方と言うことになろう。
さらに、仕事の終わりの段階になれば、その答をどうやって証明しきるのか、あるいは顧客はどうしたら納得してくれるのか、さらには実際に企業の現場で実行してもらうにはどうしたらよいのかを考える。これもまた大局観からの見方と言うことになろう。

もちろん大局観というのは、従来通りに仕事全体を全体をどう捉えるかという定義でも良いと思うが、場合にはよっては仕事のステージに応じて大局観の軸足を変えてもよいかなと思った次第である。
皆さんにとっての大局観とはどんなものであろうか?

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2007年11月 6日 (火)

ウィンドウズ・ライブ

昨日の日経新聞にマイクロソフトが11月8日からウィンドウズ・ライブと呼ばれる新しいサービスを開始するという記事が出ている。SaaS(さーす)と呼ばれる新しいタイプのソフトウエア利用サービスが普及するかも知れないという内容だ。

ウィンドウズ・ライブというのは、マイクロソフトが電子メール、画像編集、地図情報などをネット経由で無償で提供するというものだ。さらに来年に入ってからは本命のワードやエクセルなどについても同様のサービスを提供開始すると書かれている。

これは、私のブログでも再三紹介しているグーグルのDocs&Spreadsheetsが引き金となって、マイクロソフトが対抗策を出してきたということであろう。10月3日に取り上げたものと同じサービスと思われる。
昨日の記事の中でも、OS市場の独占を背景に業務ソフト分野で高い収益を上げてきたMS(マイクロソフトのこと)の事業モデルは揺らぎかねないという、前回と同じ論調の取り上げ方をしている。

しかし、ことはそう単純な話ではない。というのも現在のPCの仕組みではどう頑張ってもデータのセキュリティー(安全性)が保証されないので、それに対する有効な手段という意味合いも持つ。
もう少し分かりやすく話をすれば、現在のPCではソフトウエア(たとえば、ワードやエクセル)もそのデータもすべてそれぞれのPC内に存在することを前提に仕組みが出来ている。そうであるが故に、PCそのものを盗まれてしまった場合のデーターのセキュリティーには限界がある。たとえパスワードをかけていたとしても、そのパスワードが解析されてしまえば、データは丸裸である。あるいは、ハードディスクの内部構造を理解していれば、たとえパスワードを知らなくてもデータを読み取られてしまう可能性がある。
それに対して、今話題になっているネットワークでソフトウエアを使う仕組みは、ソフトウエアだけでなく、データそのものもサーバーあるいはネットワーク上に置くので、PCを盗まれただけでは、PCの中にはデータが入っていないので、盗まれようがない。
これが今、この方式が大きく注目されているポイントである。

このSaaSの副次的効果として、ソフトウエアを利用できるウエブブラウザさえ搭載していれば、ソフトウエアは積んでいなくてもよいことに留まらず、OSさえ何でもいいということになる。これがMSを恐がらせている最大の理由である。これが普及するとオフィスソフトだけでなく、Windowsすら不要になってしまうのである。あるいは、携帯電話で済むことになればPCすら不要になってしまう。それを防ぐためには、ネットワーク上でも、現オフィスソフトを標準ソフトにしてしまうことが一番である。そう考えて、ウィンドウズ・ライブを導入したと考える合点が行く。

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2007年11月 5日 (月)

必ず売るための発想力30

私の持論は医者とコンサルタントは似ているというものであり、どちらも技術(スキル)に加えて患者・顧客の気持ちを理解する心がないといい医者あるいはコンサルタントになれないというものである。これを称して、コンサルタントには「技」と「心」の両方が必要であると言っている。

私自身は決して人の気持ちがすぐ分かるという感受性豊かな人間ではないが、それなりに患者すなわち顧客の気持ちが分かるようになったのは、一つにはたくさん失敗して痛い目にあったことと、もう一つには意識してそちらの方を勉強したことがあると思う。

私が初期の頃にいろいろ読んだ中でも特に勉強になったのがこの本である。ご多分に漏れず、私の好きなハウツーものの一つであるが、その第一号かも知れない。原三郎さんの「必ず売るための発想力30」という本である。

Photo

損保の代理店のナンバーワンセールスマンがその売り方についての秘訣を伝授した本であるが、そこら中にラインマーカーが引いてある。今読み返しても勉強になる本である。営業とは「魅力学」である。ひたすらに自分を磨け!と帯の部分に書いてあるのが、この本の真髄かも知れない。

さわりだけを紹介しよう。
営業に行くと、「それはもう持っているからいらないよ」といった理由で断られるケースがよくありますが、相手の本心は「私は、あなたのことを魅力的に思わない。だから、あなたと話をしたくないし、契約もしたくないんだ」といっているに過ぎないのです。(p24)
どうです、思い当たる節はありませんか。だからこそセールスマンは、お客から「あ、福の神が来た」とか、「あ、おもしろそうな奴だな。たまたま暇だから、ちょっと会ってみようかな」と思わせることが大事だと説く。そして自分を魅力的な人間にするために投資を惜しむなと言う。

洞察力を磨く効果的トレーニングという節では、
「セールスをやる上で、もっとも重要な能力は何か」とたずねられたら、私は迷わず、洞察力と答えます。
お客さまが今何を考え、何を望んでいるのか、顔や目の表情、ちょっとした仕草から読み取る---これが洞察力です(p96)

後は現物を読んで感じ取ってください。

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2007年11月 2日 (金)

リーダーの決断

昨日の日本シリーズ最終戦をたまたまテレビで見ていたら、リーダーとしてのきわめて難しい意思決定を迫られる場面に遭遇した。
それは、チャンピオンシップがかかった大事な一戦で、8回まで中日が1点リードで迎えて9回表にピッチャーとして誰を送るかという問題だ。1点差で勝っている場面で、9回となれば中日には絶対的な押さえのピッチャー岩瀬がいる。セオリー通りであれば、岩瀬を送るのが常道だ。何せ、岩瀬はこうしたポストシーズンでの自責点がゼロ、すなわち一点も許したことがないという実績を持っている。

ところがみんなも知っての通り、話は単純ではない。8回まで投げていた中日のピッチャー山井が日本ハムを零点に抑えていただけでなく、一人のランナーも出さない完全試合ペースだったのである。通常であれば、山井に完全試合の記録に挑戦させたいと思うし、ファンも明らかに山井の続投を望んでいた。これが企業経営であれば、間違いのない岩瀬投入を選ぶと思うが、プロ野球がエンタテイメントと考えるのであれば、山井を投げさせるのがショー的には人気を呼ぶと思う。

しかし、冷静に考えれば、山井を続投させれば本人も完全試合を意識するし、守備についている選手もそれを意識せざるを得ない。そうなると、単に走者を出してしまうだけでなく、それがきっかけで同点ないしは逆転の可能性が十分あり得た。そして、万が一そうなったときに、ファンやマスコミの非難が落合監督に向かっていたことは想像に難くない。それに対して、岩瀬を投入していれば、かなりの確率で昨日と同じ試合結果、あるいは走者を出したとしても、点を許さずに日本シリーズを制覇した可能性が高かったと思う。また、仮に岩瀬でダメだったとしても、落合監督としてはあきらめはついたのではないかと思う。しかし、山井で言ってダメだったとしたら、リーダーとしては悔やみきれない気がする。

そういう点、昨日の落合監督にリーダーとしての資質を見た。しかし、こういう落合監督をかわいくないと思う自分がいる。そして、逆に私だったら、理屈では落合監督と同じ意思決定をすべきと分かっていても、実際には山井を続投する意思決定をしただろうなと思う。そこが私のリーダーとしての限界なのだと思う。

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2007年11月 1日 (木)

小さな池の大きな魚

HOYAという会社が以前掲げていた戦略をご存じだろうか?それは前社長・会長を務めた鈴木哲夫氏が提唱した「大きな池の小さな魚になるより、小さな池の大きな魚になれ」というものである。ここでいう大きな池とは、市場の大きさのことを言い、小さな魚とはその中でHOYAの占める売上の大きさのことを言う。要するに市場規模の大きなところに出て行って、売上を稼ぐより、小さな池、すなわち市場規模の小さなところで圧倒的なシェアを稼げという考え方である。
その理由は、当時のHOYAは売上も小さく、大きな市場に出て行っても大企業を相手に戦うだけの体力もなく、またいざ競争になったらひとたまりもなくやられてしまうと考えたためである。
一方で、市場規模が数百億円の市場であれば、大企業から見て全く魅力のない市場で、大企業が参入してくる恐れはない。そこで200-300億円の売上を稼ぐ方が、競争相手も強くないし、自社が成功する可能性が高いと考えたのである。
なぜ大企業が進出してこないかと言えば、売上が数千億円から数兆円の大企業にとって、新規事業といえども売上は最低でも数百億円、場合によっては1千億円程度を期待されている。そのため市場規模が5百億円の市場に参入して30%のマーケットシェアをとっても150億円しか売上が立たないところには、大企業は絶対出てこないからというものである。
こうしたやり方をとることで、HOYAはオリジナルのクリスタル製品から、半導体のフォトマスク、めがねのレンズなどで強みを発揮していった。

どうしてこんなことを思い出したかと言えば、本日の日経新聞にスズキ自動車が業績好調で、主にインドやパキスタンなどの西アジアで成功していると出ていたためである。スズキといえば日本で長らく軽自動車のトップメーカーとして君臨していたのだが、その市場をトヨタ自動車系のダイハツが荒らしにかかっている。そのため、スズキは日本市場でダイハツと利益なきシェア争いをするより、大企業がまだまだ地歩を固めていないインド市場(そこではスズキが50%のマーケットシェアを持っている)に力を入れているのだろうなと感じたからである。

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