« プロ弁護士の思考術 | トップページ | リクルートのDNA »

2007年8月15日 (水)

観、感、勘

現在、夏休みで蓼科の山の中に来ている。頭が休みモードな上に、ネットもうまくつながらないときもあり、すっかりブログも半休状態である。ごめんなさい。

以前、経営は最後は勘だという話をしたことがあるが、今日はその続きである。

経営に大事な要素に3つのカンがある。観と感と勘である。語呂合わせだと言われそうであるが、その通りである。

最初の「観」は、ものを見る力である。大局観とか、観点といったときの観と同じ意味の観である。経営者にとった、今何が起きているか、あるいはこれから何が起きているかを、大局的な視点から見ると同時に、現場の目線で見ることもきわめて大事なことである。要するに眼をしっかり開けて今自分の周りで起きていること、あるいは今後起こるであろうことをしっかり見ると言うことである。これについては、そんなに異論はないと思う。
しかし、物事を正しく見るというのは実は難しい。もちろん何が正しいのかというのも、状況によって異なるわけだから、人によって見るものが違ったり、大事に思うものが違うのは当然である。しかし、ここで難しいというのは正しさの定義の問題ではなく、見方の難しさのことである。というのも、人間というのはどうしても主観的に物事見てしまう。すなわち自分の見たいものを見てしまったり、自分のフィルターを通してしかものを見られないからである。

二番目の「感」は文字通り、感じるの感である。顧客が何を思い、自社の社員が何を見て、どんな思いを抱いているのか知るといったごく当たり前の感情である。あるいは競争相手や社会も含めて、何が起きているのかを感じる力である。こうした感じる力を忘れて理屈に走った経営者はどこかで足下をすくわれる。もちろん感情ばかりで経営する経営者の方がもっと危ないが。
ここで言う感には、通常の感覚の意味以外に、風向きが変わるとか、ツキを感じるといった場合に使う感も含まれている。経営にこうした個人的な感覚とか非論理的な考えを持ち込んでよいのかという意見もあるかと思うかが、こうした自分が感じることを大事にするのも人生だけではなく経営においても大事だと思う。
一番目の観が、自分の目で見たものを大切にしろという意味だとすれば、こちらの観は目を閉じて心の声を聞くと言うことになろうか。
私はこうした感じる力のことを経営者の方やコンサルタントに、肌感覚を忘れないでくださいと伝えている。

最後の「勘」は、こんなもので経営をしてはいけないと、ビジネススクールでは教わるだろう、いわゆる勘である。昔から、日本人は経験と勘と度胸のKKDで仕事をしているからダメなのだと言われる勘の話である。もちろん、日々の仕事をすべて理屈や戦略なしに自分の直感と経験ばかりで仕事しては、自分に進歩がないだけでなく他人にノウハウが移転できないために組織の力が発揮されない。
しかし、企業を経営したり、組織を預かる人間がどうしても理屈では決めきれない判断、すなわち意思決定をしなくてはならない場合は意外と多い。その場合、黒白はっきりするまで意思決定を延ばしたり、あまり数字ばかりで判断するとうまくいかない。時には自分の勘を信じて、これだと意思決定する必要がある。
もちろん、この意思決定に至るまでには、いわゆるロジカルシンキングも必要だし、あの人が言うのならしょうがないと他人に思わせるだけの実績も必要である。だが最後は、これだと信じた道を行くのも経営者の大事な仕事だ。こんな時に、多数決で決めたり、いくつかの項目の○×表を作って、○の数で決めたりするのは最悪の意思決定だ。

観、観、勘の話はまだあまりロジカルに組み立てができていないので、是非皆さんの意見を聞いて、進化させていきたいと思っています。

|

« プロ弁護士の思考術 | トップページ | リクルートのDNA »

コメント

西田さんへ

おもしろい考察ありがとうございます。
確かに歴史上の人物や過去の経営者を、この観、感、勘の視点で分析してみるのはおもしろいですね。
私は武田信玄の大河ドラマは見ていないのですが、西田さんの分析にはうなずけるものがあります。

投稿: 内田和成 | 2007年8月24日 (金) 13時42分

今、大河ドラマの武田信玄にはまっていますが、信玄に「観・感・勘」が備わっていたのか?考えてみました。観は抜群でした。たとえば、領内に「のろし」による情報伝達網を構築したり、全国に女性の忍びを配置し、当時としては先端の情報収集の仕組みを作っていたあたりが、「観」力の重要性を理解していたからではと推測できます。「感」も、領民レベルで大きな問題であった治水事業に取り組むあたりが、「感」力があったからと思います。「勘」については、山本勘助の重用で、家臣の反対を押し切って取り立てて、信じて使いつづけた「勘」力が、その後の勢力拡大に寄与しました。
 こうやってみてみると、歴史上の戦略家や日本の有名な経営者等を、「観・感・勘」の観点で見てみるととてもおもしろいのではないかと思いました。西田 岳(嶋口研究会参加者)

投稿: | 2007年8月18日 (土) 15時51分

あかまっちゃんへ

どうぞ、どうぞ、自由に使ってください。

投稿: 内田和成 | 2007年8月15日 (水) 22時29分

観・感・勘・・・・・・
良いお話なので、早速使わせていただきます。
ありがとうございます。感謝。

投稿: あかまっちゃん | 2007年8月15日 (水) 00時36分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 観、感、勘:

« プロ弁護士の思考術 | トップページ | リクルートのDNA »