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2007年8月24日 (金)

海底のバドワイザー

久しぶりの20の引き出しである。コンサルタントになるための20冊のトップバッターで紹介した「パラダイムの魔力」という本に載っているネタである。

あるダイバーが50mの深さの海底に落ちているバドワイザーの缶を見て、いつもの赤と白の模様が見えたので不思議に思ったという話である。私はダイビングをしないし、あまりそちら方面の科学的知識があるわけではないので、海底に落ちているバドワイザーの赤白模様が見えて何がおかしいのかと思ったのであるが、実は光の屈折の関係で深さ50mでは赤の光は見えないそうである。そのダイバーは科学的知識があったが故に見えないはずのものが見えたために驚いたと言うことになる。

どうして見えないはずのものが見えるかと言えば、日頃頭の中にバドワイザーといえば赤と白と刷り込みが起きているために、本当はない色を頭の中で作り出してしまうという話である。人間は自分が日頃よく見ているものと違うものを見ると、それを勝手に修正して、元のデザインなり色に直してしまう能力を持っているそうだ。

パラダイムの魔力の著者によるとソ連のチェルノブイリの原子力事故で被害が拡大したのも、科学者たちが目の前で惨事が起きているはずにもかかわらず、こんなことが起こるはずがないと信じ込んでいたために対応が後手後手に回ったことが大きいと述べている。

とても恐い話である。というのも企業活動の中でこんなことはいくらでも起こりうる。たとえば、これまでの実績から自社製品は競争相手のX社より品質が優れていると思いこんでいると、たとえ競争相手がすばらしい商品を出してきても、それがデータの間違いであるとか、たまたま運がよかっただけで、相変わらず自社の方が優れているはずだといった思いこみは平気で起こる。
あるいはユーザーのニーズが大きく変わって、これまでの性能重視からデザイン重視に変わりつつある状況で、今は消費者が気まぐれであの製品が売れいているが、ブームが終わればまた性能重視に戻るはずだなんて言う思いこみもいくらでも起こりうる。
要するに目の前で起きている重要な変化を、自分のこれまでのフィルターで見てしまうことで平然と見逃してしまうと言うことになる。

この話を知って以来、それまで大事な話と思っていた「百聞は一見にしかず」は時として危険であると思うようになった。なぜならば人間は見たいと思っているものを見てしまう、すなわち「信じるものを見る」と言うことが分かったからである。思いこみの恐さである。

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