« 2007年6月 | トップページ | 2007年8月 »

2007年7月

2007年7月31日 (火)

カジノのビジネスモデル

こちらにきて若干時間が空いたので、昨晩カジノを見学して来ました。誰ですが、好きで行ってきたのでしょうなんて言っている人は、あくまでも社会勉強ですよ。大変な賑わいでした。原則外国人だけのはずなのに、結構韓国語が飛び交っていたので、何か抜け道もあるのかも知れません。日本人だけでなく、中国人も結構いましたね。

さて本題である。カジノでは様々なギャンブルが行われているが、その中でもルーレットとブラックジャックは人気が高いゲームである。それではカジノがどうやって稼いでいるかをご存じだろうか?

たとえばルーレットの場合は、1から36個の数字の中から好きな数字を選んでそこにチップを置く。たとえば8という数字を選んでチップを張り、もしルーレット盤の玉が8の位置に止まれば、賭けたチップの36倍のチップをもらえるという仕組みである。これでは長いことやっていれば、必ず収支はプラスマイナスゼロに収斂してしまう。というのは、難しくいえば、確率的な期待値は1になってしまうからである。
これでどうやって儲けるのかというと、実はルーレット盤には0と00という数字もあるのである。となると、自分の賭けた数字にヒットする確率は36分の1ではなく38分の1になってしまう。すなわち、長いことやっていると、必ず38分の2ずつ損をしていくのである。
ということは、たとえば2分間に1回ゲームが行われるルーレット台で1回に10人の人が一人平均20ドルずつ賭けるとしよう。一回ごとに200ドルの掛け金であるから、胴元であるカジノは36分の2ずつ儲かることになる。約11ドルである。となると1時間に換算すると30倍の330ドルということになる。仮にテーブルが1日当たり10時間稼働するとすると3300ドルの利益が毎日上がる。1ヶ月では1テーブル当たり、99000ドルすなわち1200万円近いもうけになる。うーん、悪くない。
道理で飲み物が何でも只な訳だなんて感心している人はきっといいカモですよ。ラスベガスではいいお客さんにはホテル代を只同然にしてくれたり、部屋をアップグレードしてくれますから。

ところでである、何でこんなことを書いたかといえば、ソウルのカジノはもっとすごいのである。数字がヒットしてもチップが36枚返ってこないのである。35枚である。すなわち36分の3の儲けである。もっとすごいのは、4つの枠に一枚賭けたときである。ラスベガスなら36分の4すなわち9枚戻ってくる。ところがソウルでは8枚しか戻ってこないのである。すごい!、胴元の儲け率は38分の2ではなく、38分の6になっている。うわー、高収益!
先ほどの計算式で、計算してみてください、どれくらい儲かるか。

ブラックジャックの方は、ここまであこぎなことをやっているわけではないので、カジノのもうけは少ない、と言うことは顧客に有利というほどではないが、結構悪くない仕組みになっている。その話は機会があれば、また。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月30日 (月)

ユーザーシーン

今日は神戸大学の石井先生がマーケティングにおける関係の重要性ついて講義してくれた。
その中で、消費者インサイトという言葉が出てきた。消費者が持っている当該商品に対するインサイト(洞察)のことだそうだ。企業は消費者の持つそのインサイトを理解することなしに、よい製品を提供したり、よいサービスを提供することは難しいという話だ。

この話を聞いていて、BCGでよく使われるユーザーシーンという言葉を思い出した。
ユーザーシーンというのは、どういう状況でその製品なりサービスを利用しているのかということである。
たとえば携帯電話のimodeなどのサービスは、どういう状況で使われることが多いかというと、ちょっとした空き時間に使われることが多い。いわゆるニッチ時間である。たとえば、電車を待つホーム、待ち合わせの時間、学校の休み時間などである。そうなると、接続に時間がかかる、メニューが複雑で目的のサイトまで到達するのが面倒くさいなどは致命的になる。一方で、目的地までの乗り換え案内や、近隣の飲食店情報などはきわめて有力なコンテンツになりうることがよく分かる。

石井先生の話の中にも、歯磨きのペーストの話が出てきた。あるメーカーが実際に家庭を訪問して、自社製品の使用状況を観察してみると、歯磨きチューブをコップなどに逆さまに挿して使っている家庭が多い。もちろん、横置きしておくと最後まで使い切るのが難しいためである。そこで、そのメーカーではチューブのふたを大きくして、頭を平らにして、縦置きができるようにしたという話である。

自社の製品が消費者やユーザーの間でどのように使われているのかを知らない、あるいは知っている思いこんでいる会社はきわめて危険だということである。

ということで、消費者インサイトとユーザーシーンというのは実は同じことだと悟った。皆さんからも、こんなユーザーシーンというのがあるというのを知っていれば、ぜひ教えてください。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年7月29日 (日)

優れたブランドにはストーリーがある(続き)

以前優れたブランドにはストーリーがあるという話をしたが、今日また新しいネタを仕入れた。現在ソウルで行っているセミナーで前東大教授でブランドの第一人者である片平秀貴先生が語っていた話だ。
ベンツのシンボルカラーといえばシルバーという定説があるが、それがどうして生まれたかという話である。
1920年代にメルセデスがあるレースに出ようとしたら、750kgの規定を1kgだけオーバーしていたために、そのときの塗られていた白い塗料を急遽はがして、重量オーバーをまぬがれたそうである。塗料をはがしたために下地の金属がむき出しになり、シルバー色に輝いたメルセデスが矢のようなスピード走り回り活躍したそうである。
そこから、ベンツのシルバーアロー(銀色の矢)というのが、シンボルカラーになったそうである。

だからなんなのだという声が聞こえてきそうであるが、片平先生に言わせると顧客の頭の中に記憶に残るストーリーがブランドを形成するには大事だと言っていた。
私が言っていたことは、ブランドの専門家から見ても正しいのだと思って、意を強くした次第である。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年7月28日 (土)

コメント投稿できず

非常に困ったことに、ここソウルからはコメントが投稿できなくなりました。城出さんや名無しさん、やまかつさん、ごめんなさい。

投稿できるようになったら、いただいたコメントは返事書きます。

自分のブログに自分でコメントできないなんて、ココログさん、何とかして。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

とんぼ返り

本日は早稲田大学ビジネススクールの2008年度入試説明会(MBA夜間コース)があった。
現在行っているマーケティング協会のエグゼクティブプログラムinSeoulとスケジュールが重なってしまったので、ソウルから東京への日帰りを行った。
東京からソウルへ日帰り出張なら、まだ分かるがソウルから東京への日帰りというのはなんか妙な気分だ。ソウルのホテルを出るときも私が、書類鞄一つで空港へと行ったので、ホテルマンも不思議そうな顔をしていた。

こんなことが可能なのも、成田空港ではなく羽田空港が使えるためだ。もちろん羽田は国内専用空港であるが、元々台湾行きのびんが政治的な理由で羽田を使っていたこともあり、国際線空港としてのファシリティはある。それを利用して、一日4往復だけ、形式的には臨時便だが実質の定期便が羽田空港とソウルの金浦空港の間を飛んでいる。それを利用すると東京での移動時間を除いても5時間程度の仕事をこなすことが出来る。もちろん逆も真成りでソウルで5時間程度の仕事をこなす日帰りも可能である。便利になったものだ。といっても、成田空港のなかった今から30年前に戻っただけとも言えるが・・・。
成田に比べてダントツにアクセスが良いこともあって、ビジネスマンはむろんのこと観光客にも人気があるようで、行き帰りとも大変混んでいた。羽田の沖合展開が完成すれば、近距離国際線は羽田が実質国際空港化するのだろうなと思った。

ところで、肝心の入試説明会の方だが、大変な盛況で例年を上回る100名以上の参加者があった。もちろん私は一教師に過ぎないので、私がいなくてもこれくらいの参加者はいたと思うが、わざわざ帰ってきたかいがあったというものである。

第2回の説明会は秋を予定しているが、詳細が決まり次第、また紹介する。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月26日 (木)

ぼったくり料金

今日から、マーケティング協会の仕事で韓国のソウルに来ている。
2年ぶりくらいであるが、相変わらず活気にあふれていて、そんなに不景気な感じはしない。外人がバブル崩壊後の日本に来て、渋谷や六本木を見て、どこが不景気なのかといぶかったのに似ていて、所詮表面しか見ていないせいかも知れない。

ところで以前は10ウォン=1円程度でわかりやすかったのに、円安とウォン高の両方が効いているせいか、7.4ウォン=1円程度になっていて、物価が高くなったと感じた。

たとえばホテルのインターネット接続は30分10000ウォンであるため、日本円に換算すると1350円という法外な値段になっている。1日にするとかなり安くなって20000ウォンすなわち2700円くらいだ。しかし、それでも滅法高い。

これは、ウォン高のせいというより、世界中どこに行っても似たようなぼったくり料金で、高級ホテルでもインターネットの接続料が無料なところはない。かつ一日あたり1000円ですめば安い方で、3000円程度取るところも多い。
要するにかつての国際電話料と同じで、顧客の足元を見ているのである。電話はかけなくていけないし、ほかに選択しかなければいくら高くても部屋から国際電話をかけることになる。やがて、国際電話のコーリングカードや携帯電話が普及すると、こうした国際電話料で稼ぐやり方はかなり少なくなった。
ホテルの客室のインターネット接続もかつての国際電話と同じで、今は過渡期なのであろう。ほかに選択肢かがないから使うが、やがて無線LANのスポットがそこかしこにできたり、国際ローミングが可能な携帯電話によるデータ接続が可能になれば、大幅に安くなるのであろう。

それまでの辛抱である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月25日 (水)

RHODIAその後

以前、このブログでメモ帳のRHODIAを紹介したが、その後も快適に使用を続けている。
相変わらず、古いメモ帳の分をどこまで保存すべきか悩んでいるが、そうかといってMJGBさんに教えてもらったように過去のメモをすべてスキャンして取っておくような面倒なことはしたくない。もちろん、メモを書いたらすぐスキャンする癖をつければいいのだろうが、仕事場が何カ所かに分かれているので、そうもいかない。
やはり、使い終わったら片っ端から捨てていくのが常道かなと思いつつ、決心がつきかねている。

さて、今日は世の中にはたくさんのRhodier(RHODIAの愛好者という意味)がいるなと思ったので紹介しておく。下記のようなブログを発見したためである。
http://3points.blog10.fc2.com/blog-entry-17.html#more

ブログの本文もさることながら、それに対するコメントの多さと多様さに驚いた。
私は文房具大好き人間であるが、私以上に文房具大好き人間が世の中にはたくさんいるらしい。ということは、ステーショナリー評論家で食っていくのは難しそうだな。しばらくは現職で食べていくことにしよう。
皆さんはスタパ斎藤氏を知っているだろうか。いろいろなガジェットを紹介することでたぶん生計を立てていると思われる不思議な人物だ。私は人のことはあまりうらやましがらないのであるが、スタパ斎藤氏はうらやましい生き方をしている。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年7月23日 (月)

人間における勝負の研究

コンサルタントを目指す人へ贈る本の第4弾は、将棋棋士の米長邦雄さんの「人間における勝負の研究」である。

1982年に新書として発売された多少古い本であるが、現代においても通用する生き方・考え方、あるいは人生観が書かれた本である。
何がいいっていって、プロフェッショナルかくあるべしと言う言葉が随所にちりばめられていて、とても参考になる。
Photo_2
私の手元にあるのはオリジナルの新書の方であるが、文庫本も出ているので、なんとか手に入るのではないかと思う。

たとえばこんな一文がある。
強い者は威張らないものです。威張る必要がないから威張らない。実力がなくなってしまうと、大きく見せたがる。(新書版ではp79)
うーん、気をつけなくては・・・。

「中学校を卒業するとすぐに、私はプロの初段になりました。どの世界でもそうでしょうが、プロの将棋の世界でも、段位以上の実力がないと出世できません。初段の者が初段の実力ですが、勝率は5割くらいになりますからパッとしません。初段で優秀な成績を残す者は、既に3、4段くらいの実力がある者なのです。それが初段を相手に指すから、連勝して2段に上ることが出来るのです。
いわば初段の肩書きで、3、4段の手をさせなければダメなのです。初段の肩書きで初段の実力では、後から来る人にどんどん追い抜かれていき、それっきりで終わってしまいます。」(同p36)
コンサルタントにも、「自分は実力があるのに、どうしてこのポジションのままなのだ。あの人は自分より仕事が出来ないのに、何であんなに給料をもらっているのだ」と文句を言う人がたまにいます。そういう人に限って、上のポジションに上がったときにそこで終わってしまいます。本当に上を目指す人や仕事が出来る人は、自分の実力の絶対値を上げることにエネルギーを使っていて、他人との比較などにうつつを抜かしていません。

米長氏は人間にとって一番大事なものはカンだと説く。そして、仮説思考を書いた私に対してのエールではないかというような一文を残している。(同p92)
「カンというのは、一つの仮説でしょう。あるいは仮説というのは、カンを基にして生まれるものでしょう。だから、仮説を立てられないようでは、仕事にしろ、何にしろ、新しいことは出来ないと考えていい。何か新しいものの創造が、偶然の幸運によって成されていると思ったら、これはとんでもない間違いです。」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年7月21日 (土)

ベンチャー経営者

ゼミ生紹介第3弾は、ベンチャー企業の経営者である久保田修さんだ。彼は、最近自分の会社を興したばかりだが、それ以前にもベンチャー企業の役員として経営に当たっていた。経営者という忙しい身の上で、ビジネススクールに通っているから立派だ。他のゼミ生から「だから自分の時間が自由になってうらやましい」というやっかみの声が聞こえてきそうだが・・・。

一見まじめな人間には見えないが、実は事務処理能力も高く、逆転の競争戦略というユニークなテーマで修士論文にまじめに取り組んでいる。10数年分のデータをまめに拾って分析するというような地道な作業を行っているが、どこで時間を捻出しているのかは不明だ。というのも、あまり学校で見かけないからである。

マイケル・ポーターの競争分析のフレームワークにファイブフォースというのがあるが、それにちなんで自分の会社に「ファイブフォース・マネジメント」と名付けているのは愛嬌である。

別件であるが、来週の土曜日(7月28日)に私がゼミを持っている早稲田大学ビジネススクールの夜間コース2008年度カリキュラムの説明会があるので、興味がある方は是非来てください。各モジュールを担当している看板教授の人たちがそれぞれ説明を行います。
http://www.waseda.jp/gradcom/news/07_MBA_setsumeikai.html
私も自分のモジュールの紹介をやります。


| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年7月20日 (金)

孤高のプロフェッショナル

早稲田のMBA、リーダーシップの講義の最終回に登場してもらったリーダーは三菱UFJ証券の取締役投資銀行本部長の中村昌義氏である。彼は元々三菱銀行を飛び出して、リーマン・ブラザーズやモルガンスタンレーでやり手のM&Aバンカーとして業界に名を馳せた、知る人ぞ知るM&Aの専門家である。
その彼が、どういう訳か昨年から古巣の三菱UFJ銀行グループに戻って、和製投資銀行のトップとして頑張っている。

その中村さんに日本のM&Aの現状と将来展望について語ってもらった。この話自体も、もちろんおもしろかったが、さらに興味深かったのが実際にM&Aに20年以上携わってきた経験から来る彼のプロフェッショナルとしての迫力と哲学の部分だった。

たとえば、「どんなM&AがよいM&Aで、どんなM&Aが悪いM&Aか?」という質問に「M&Aに良いも悪いもない、M&Aが成立したかしないかしかない。売る側には売る側の理屈があり、買う側には買う側の理屈・事情がある、それを第三者が良い悪いを言うのはおかしな話だ。M&Aが成功だったか、失敗だったかは歴史が証明してくれるだろう。」と答えていた。うーん、なるほど。しかし、普通ここまで言うか・・・。

また、日本の社会が持つ変革への抵抗、あるいは法律の規制などの苦労を身にしみて感じてきたものだけが持つ、独特の雰囲気を漂わせていた。
今後は伝統的日本企業でもこうしたタイプの経営者が増えてくるのだろうか。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年7月19日 (木)

ネガティブスケールカーブ

先日、嶋口研究会にBCGOHBで百年コンサルティングの社長を務める鈴木貴博さんがやってきて、ロングテールについて講演してくれた。
いくつもの愉快な話をしてくれたが、一番印象に残ったのがロングテールのスケールカーブの話だった。
BCGにはエクスペリアンス・カーブという発明がある。日本語では経験曲線という言葉で知られている。簡単に言うと、ものをたくさん作ると経験効果によって一つ当たりのコストが下がっていくというものだ。カシオの電卓が、この効果をうまく使って低価格戦略で成功した話などが知られている。これとは別のコンセプトとして、スケールが大きくなると単位当たりコストが下がるという、いわゆるスケール効果もよく知られている。

この2つの話の話を合わせたような話なのだが、ちまたに知られているロングテールのグラフを想像して欲しい。横軸に商品の売れ行きの順位を取り、縦軸に売上(量)を取ると、急速に減少していくグラフが描かれる。この順位を、量に置き換えたとすると(ここがかなり強引ではあるが)、ちょうどエクスペリエンスカーブ(あるいはスケールカーブ)のようなグラフと見ることが出来る。そこで、このグラフを両対数グラフで描き直すというのがミソになる。このあたりは文章ではわかりにくいと思うので、読み飛ばしてもらって結構です。

そして、そのグラフの傾きを読み取るとおもしろいことが分かるというのが本題です。要するに現実世界ではあり得ない傾きになるというのが彼の発見というか目の付け所です。現実世界では、スケールカーブの傾きは50%が限界です。というのも、ものを2倍作ったときに、一つ当たりのコストが8割で済むときに80%カーブといいます。ということは50%カーブというのはモノを倍作ったときに一つ当たりのコストが半分になるということは、2個作っても1つの時と同じコストということですから、余計にかかる限界コストがゼロと言うことになるからです。すなわち作っても、作っても一切余分なコストがかからない魔法のような状態が50%カーブです。

ところが、ロングテールで傾きを測ると30数%になるというのが彼の発見です。現実世界で言えば、一匹200円のサンマが二匹だと300円というのはよくある話です。これは二匹飼うと一匹当たり150円になるので、スケールカーブが75%といいます。それに対して50%を割るというのは一匹200円のサンマが二匹買うと150円というのがネガティブスケールの世界です(この話が変なことに気がついてもらわないと話が先に進みません)と鈴木さんは説明していました。

そして、鈴木さんの解釈でもっともおもしろかったのが、こうした現象がなぜ起こるかを吉本の芸人と同じことだと言い切っていたことです。これ以上は、本人の著作権に引っかかりそうなので、説明しませんが、要するに売れない芸人をいくらたくさん集めても売れている芸人一人に及ばないと言うことです。これがロングテールの本質だそうです。
本当かどうか、信じるかどうかは別として、とってもおもしろい解釈でした。
そのうち本にすると言ってましたので、期待してます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月17日 (火)

異色のJR役員

先週のリーダーはJR東日本の見並常務だった。現在は、鉄道事業本部の副本部長で営業担当という要職にあるが、元々はJALで営業や旅行代理店業を担当していたという一風変わった経歴の持ち主である。

JRに移ってからは、元々の特技を生かして旅行業の推進などを担当していたが、その後はビューカードなどのクレジットカード事業などを推進してきた。一時、ITないしはSuica事業なども担当していたと記憶している。

見並氏はJRというどちらという堅いイメージの企業では、かなり標準偏差の外に位置している方であろう。とにかく物言いがストレートで、歯に衣着せぬ言い方をする。財閥系企業やJRのような由緒のある企業ではユニークなタイプのリーダである。

しかし、今回早稲田にきてもらって、旅行需要の拡大策について彼がやってきたことや今後JRが目指していることが聞きながら、結構戦略的かつ地道にやっているなと改めて彼を見直した。

ということで、一見豪放磊落に見えながらも、実は結構戦略的にものを考え、かつ人を動かすコツをよく知っている繊細な一面もある見並さんだからこそ、JRの役員が務まるのだなと改めて感じた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月16日 (月)

便利なカーナビの落とし穴

カーナビが登場して、ドライブは格段に楽になったことは間違いない。特に見知らぬ場所に行くときに、住所あるいは電話番号あるいは名称を入れるだけで、行くべき場所はむろんのこと、その行き方まだ教えてくれる。さらに、途中に渋滞が予測される場合は、それによって時間がどれくらいかかるかも教えてくれるし、代替のルートも探してくれる。これが出てきたおかげで地図を見る必要がなくなったと喜んでいる人も多いに違いない。

でも人間というのは贅沢なもので、便利になったら便利になったで文句を言いたくなる。たとえば、我が家には免許を持った人間が5人いることもあって、車が3台ある。その3台のカーナビが同じメーカーのカーナビならよいのであるが、これが困ったことに自動車メーカー純正のカーナビがついていたり、一世代前のカーナビだったりして、それぞれの操作方法が全く異なり、使いにくいこと甚だしい。車も外車だと、ウィンカーがハンドルの左についていたりして国産車と異なるといった違いがあるが、それも運転しているうちにすぐ慣れる。ところがカーナビの操作方法は、いくらやっても慣れない、あるいは地図の表示の仕方や渋滞時の迂回路の表示の方がてんでんばらばらであり、使いにくいというか、下手すれば事故るのではないかというくらい違っている。各メーカーが他社のカーナビに対して差別化しようとするのでこうしたことが起きるのであるが、ユーザーから見るときわめて使いにくい。(誰ですか、車をたくさん持っている内田が悪いと非難している人は?そういわれると弁解しようがないのですが)

さらに、困るのは便利になったはずのカーステレオ機能である。最近のカーステレオにはハードディスクを搭載しているものが多く、一度かけたCDを自動的にハードディスクに録音してくれて、ライブラリーを作成してくれる。そして2度目からはもうCDを必要としない。これ自体は大変便利な機能であるが、これを家族がみんなで使うと結構とんでもないことが起きる。たとえば、私が70年代のポップスを聴いた後に息子が私が聞いたことがない最近の音楽を聴いたとしよう。さらに娘がロックを聴いたりすれば、これらがみんな続けてライブラリーに入るので、次に聞く人がカーステレオから音楽を聴くと、はちゃめちゃなライブラリーの音楽を聴くことになる。
要するに家庭で1台のPCを共有しているときに、家族で同じメールボックスを使うようなことになってしまうのである。これでは便利なようで不便この上ない。後から、自分の入れた曲だけ聴くのがとんでもなく、面倒くさいことになってしまうのである。

こうしたことは、新しい技術が定着するときには必ず生じる現象であるが、昔であれば楽しめたこうした違いが面倒くさいと思うようになったのは、私が年をとったせいかもしれないと思う今日この頃です。

ちなみに、私は最後のところで機械を信用していないのと、地図が好きなために、念のために車には必ず地図を積んでいる。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年7月15日 (日)

現代の経営者に求められるもの

先週ゼミに日経新聞の編集局次長である野村裕知氏に来ていただいて、「新聞記者からみた日本の経営者」というテーマで話をしてもらった。


野村さんを知っている方も多いと思うが、彼は日経新聞のニューヨーク特派員や日経ビジネスの編集長、産業部長、証券部長などを歴任している。私とは10数年来の友人である。

野村氏によれば、バブル崩壊後、日本でも優れた経営者が出てきているという。野村氏は現代の経営者に必要な資質を豊富な具体例と一緒に解説してくれた。ここでは経営者の固有名詞は紹介しないが、その資質について触れておく。

一つ目は「現場力」だそうである。優れた経営者は、大所高所の話を本社にいてするだけではなく、現場の話や競争相手の製品の実際の使い勝手まで分かっていてそうだ。それによって現場にゆるみがなく、上から下まだびしっと決まっているそうである。
二つ目は「清貧、無私」をあげていたが、同感できる。あまりに自分中心や金儲け志向が強い世の中でこうした無私の精神が重要になっているということであろう。
三番目は「知力&体力」だそうだ。事業の見直し、リストラ、大型M&Aなどを、果断に意思決定し、実行していくためには知力だけでは不十分で体力も必要ということらしい。
4番目は「マイクロマネージャー」ということで、トップ自ら細かいところまで熟知して意思決定しているタイプである。一番目との違いは、単に知っているだけでなく、実際に行動したり、意思決定したりする点なのだと思う。
最後の五番目は「常識」だそうだ。これも最近のえっと耳を疑うような不祥事の連発を考えると、納得のできる話である。

これ以外にも、経営者の難しいのは引き際と後継者選びだという話も、そうだそうだと頷いていた。

野村さん、ありがとうございました。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年7月12日 (木)

居眠り磐音

海外出張などで、時間が取れるというか、もてあましそうなときに最適の小説がある。佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙」である。双葉文庫というマイナーな出版社から出ている書き下ろしの時代小説である。全部で20巻くらい発売になっているが、すべて合わせると数百万部出ていると出版社が言っているので読んだことがある人もいるに違いない。

九州の小さな藩の家老の息子が事情があって藩を出て、江戸の下町で暮らしているが、その正義感と剣の腕のおかげで毎回、とんでもない事件に巻き込まれていくというどこに出もありそうな単純なストーリーである。
何がいいっていって、全くが肩がこらずに、何も考えずに、快感に身をまかせて読めてしまうので、最高の暇つぶしである。飛行機などで、仕事に疲れ、眠るのにも飽きたときなどに最適である。

既に20巻近く出ている大作であるが、1巻ごとに大きなテーマがあり、その中の章ごとにちょっとした話になっている。ということで、章ごとに読んでも、いつでもやめられるし、自分のペースで読める。
したがって、飛行機の中や現地のホテルで過ごす時間を考えて、日帰りか1泊なら1冊、1週間の出張なら3冊くらい持って出るとちょうど良い。
どこから読んでもいいようにはなっているが、是非1巻の陽炎ノ辻から読むことを勧める。

今月からNHKでテレビドラマ化されるそうであるが、こればかりは本で読んだ方が、好きなときに時間がつぶせるので、良いのではと思う。
北方謙三の水滸伝などもぐいぐい引き込まれていくが、こちらは「良し読むぞ」という気合が必要だ。しかし、この佐伯泰英にはそれが必要ない。

先日会食した高校時代の友人も彼の本を愛読していると言っていた。
高木さんへ あのとき題名をど忘れしてしまったので、ここに出しておきます。ごめんなさい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月10日 (火)

ガリバーのビジネスモデル

20の引き出しのリクエストが時々あるので、カテゴリーとして独立させて、これから少しずつ紹介していくことにする。これまで内田の情報術として紹介してきた記事の中にも20の引き出し関連がたくさん入っていたので、折を見てこのカテゴリーへ移しておきます。

ガリバーという中古車買い取りチェーンがある。テレビコマーシャルなどを見たことがある方も多いと思う。中古車の買い取りというときわめてユニークなビジネスに見えるかもしれないが、実は中古車の買い取りそのものは昔からある。一つは街の中古車販売店であり、もう一つは新車を買うときの下取りである。

前者の街の中古車屋さんで車を売るのは、一部の自動車に詳しい人か、新たに中古車を買う時に今乗っている中古車を下取りする人に限られる。というのも中古車屋さんというのは普通の素人が車を売ろうとした場合に結構敷居が高いからである。

後者はほとんどの人が車を売るという意識なしに売っているから、売ったと思っていない。講演などで、ガリバーの話をする前に車を売ったことありますかと聞くと2-3人しか手が上がらない。ところが、新車を購入時に自分の今乗っている車を引き取ってもらう、いわゆる下取りは立派な販売であり、譲渡証明書を用意したり、契約書を交わしたりしているはずである。

ガリバーがユニークなのは、従来の中古車販売店が持っている「中古車をなるたけ安く買いたたいて、出来るだけ高く売る」という小売業の発想がないことである。では、彼らはどのようなビジネスモデルかといえば、買った車は市場価格、すなわちオークション市場の価格で販売する。そして仕入れ値はその市場価格に適正なマージンと言うより手数料を載せるだけ(実際に市場価格より、手数領分安く買い入れることになる)という発想である。そのマージンは1台あたり10万円前後といわれている。
それに対して、通常の中古車販売業者の場合は、販売の方が目的であるから、売りやすい車は喜んで仕入れるが売れそうにない車は買いたたくことになる。そうしないと売れなかった場合の在庫コストや転売のコスト、その間の価格目減りコストなどをすべて自分でかぶってしまうからである。したがって、買い取る場合には出来るだけ安く仕入れようとする。小売業が売れる商品は多少仕入れ価格が高くても買うのに対して、売れそうにない商品はリスクを見込んで安く買いたたくかあるいは敢えて仕入れないというのと同じことである。

結果的にガリバーのやり方なら消費者から見ると、通常の中古車販売店に比べて、かなり高い価格で自分の車を買い取ってもらえると言うことになる。こうした小売業型ビジネスモデルから、手数料型あるいは消費者のための販売代理店型ビジネスモデルに転換させたことがガリバー成功の秘訣ではないかと思う。

一方で、新車ディーラーの下取りというのは、純粋な中古車の売買ではなく、あくまでも新車販売のための販促ツールと一体化しているので、価格が不透明というのが最大の課題になる。これについては、機会があれば別途述べてみたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 9日 (月)

プロデューサーは経営者?

先週登場のリーダーはフジテレビの常務で映画事業局長の亀山千広氏である。氏は、経営者としてよりもテレビや映画の辣腕プロデューサーとしてよく知られている。テレビでは月曜9時に放映されることから月9と呼ばれた時間帯で「あすなろ白書」、「ロングバケーション」などの30%を超えるヒットを連発し、映画では踊る大捜査線をヒットさせたことで知られている。

プロデューサー論をお願いしたが、私の持論で経営者とプロデューサーには共通項が多いからである。
それは、組織の共通の目標を設定し、それを達成するために必要な経営資源、すなわち人・物・金を調達し、期日までに完成するようにプロジェクトをマネジしていく。ときには夢を語り、時には現実をふまえ、時には励まし、時には叱る、なだめる、謝る。権限があるようで、ない。メンバーに頑張ってもらわないと自分では何一つ生み出せない。といって、必要ないかと言えば、リーダーやプロデューサー無しには全く前に進まない。すごく似ていると思う。

彼の講演の中では、他人の言葉ながら「人の琴線に触れることは金銭になる*」というのが印象に残っている。というのも、彼はテレビドラマや映画を芸術作品ではなく、ビジネスとして捉えているからである。
ところで、脱線であるが、ビジネススクールのカリキュラムというのは、「人の琴線に触れると言うより理性に働きかけるので、お金にならない」というのがよく分かった。こんなことを書くと大学の方から、教育の理念が分かっていないとか怒られるのだろうな。

注*「人の琴線に触れることは金銭になる」という文章が私が使っている日本語変換ソフトATOKでは一発で変換できた。偉い!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 8日 (日)

神楽坂

最近、ちょっと気になる街が神楽坂である。

これまでほとんど行くことはなかったが、大学から東西線で一駅の距離にあるために、会食などでちょくちょく利用するようになった。近くに大学がたくさんあることもあって、若者向けの店も多いし、ちょっとしゃれたカフェや気の利いたレストランなども数多く並んでいる。一方で、昔花街であった名残からか、裏通りには昔ながらの料亭や古くからある割烹なども残っており、これはこれで味がある。

要するに、新しさと古さが同居しているおもしろさがあるのである。これは、新しさ一辺倒の青山とも違うし、どちらかというとふるさと格式で勝負している銀座とも大きく違う。

もう一つのメリットは、コストパフォーマンスが高いことである。接待に使えるような店では、銀座などの店の半額程度で済む。

街全体もコンパクトでこぢんまりしており、散策にも適してそうだ。夜だけでなく昼間にも訪問して、もう少しなじんでみたいと思っている街である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 6日 (金)

内田モジュールの紹介(続き)

昨日紹介した、早稲田大学大学院商学研究科夜間MBAコースの説明会の詳細が決まりました。

下記のURLをご覧ください。7月28日(土)の午後です。私も顔を出して自分のモジュールの説明をします。

http://www.waseda.jp/gradcom/news/07_MBA_setsumeikai.html

興味のある方は是非どうぞ。お待ちしています。

また、私の記事に、ゼミ生がたくさんコメントしてくれましたので、是非読んでください。

左の欄の最近の記事の「内田モジュールの紹介」に直接飛ぶと下の方にコメントが書いてあります。あるいは、右の欄にある最近のコメント一覧をクリックしても見られます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月 5日 (木)

内田モジュールの紹介

現在早稲田大学のビジネススクールで私が担当しているのは社会人大学院で、2年でMBAを取るプロフェッショナルコースと呼ばれるものである。昼間働きながら、夜間と土曜日を使って講義を受け、修士論文を完成させてMBAを取る。結構タフなコースだ。

この夜間コースには他のビジネススクールとはちょっと違ったユニークな仕組みがある。それはモジュール制と呼ばれるもので、それぞれのモジュールの責任者が設定したテーマに沿って統一されたカリキュラムを編成し、趣旨に添った内容が学べるようになっている。さらにどのモジュールを選択するかを入学前に決めるのである。

私のモジュールの宣伝をしておこう。来年2008年度にも再び開講される「市場競争戦略」モジュールである。
このモジュールでは異業種格闘技に代表される、新しいタイプの競争戦略を主に勉強する。但し、私がコンサルティング会社出身と言うこともあって、理論もさることながら、実践で使える戦略論を謳い文句にしている。
もちろん、全MBA生共通のコア科目である、経営戦略、組織・人事、マーケティング、財務、会計、経済学、企業分析などを学んでもらうのであるが、それに加えて市場競争戦略固有の科目として、私が担当する「競争戦略研究」(主に異業種格闘技を扱う)、慶応ビジネススクール出身でマーケティングの大家の嶋口先生による「市場競争戦略」、BCGの現役コンサルタントによる「実践競争戦略」、企業の経営者やリーダーに語ってもらう「戦略とリーダーシップ」、ビジネスモデルを正面から取り上げる「仕組み革新」、マーケティングと戦略のコラボレーションを取り扱う「マーケティングと競争戦略」がある。
どれも日々のビジネスに役立つ内容であると同時に、将来ビジネスリーダーになったときに振り返ると役に立ったなと思うこと間違いない。加えて知的な刺激に富んでいることは言うまでもない。より具体的な内容については、このブログを見た現役ゼミ生がコメントするはずである(希望的観測?)。

内田のモジュール以外にも、経営戦略モジュール(根来龍之教授)、グローバルサービスビジネスモジュール(太田正孝教授)、企業価値の評価と経営(辻正雄教授、河榮徳教授)、マーケティングマネジメントモジュール(守口剛教授)などの、興味深いモジュールがいっぱいあります。

今月7月28日(土)に早稲田大学キャンパスで説明会が開かれるので、希望者は是非来てください。詳細は近々大学のホームページで紹介されると思います。
http://www.waseda.jp/gradcom/
もちろん、受験するかどうかは全く分からないけれど、興味があるので、ちょっと覗いてみたいという方も歓迎ですので、是非寄ってみてください。

| | コメント (7) | トラックバック (0)

2007年7月 4日 (水)

ある日の午後の喫茶店風景

私の勤務する早稲田大学の周辺で昼食を取ろうとすると結構苦労する。というのも店の主たるターゲットが学生のことが多く、価格は500円から700円とリーズナブルだが、店構えとか内装、雰囲気でいうと入るのを少し躊躇する。さらに誤解を恐れずに言ってしまえば、味より量の店が多いのだ。さらに、そうした店で1時間腰を落ち着けるのも無理だ、というのも店側が単価が低いことを回転率を上げることで補っているからだ。

一方で、これまで働いていた大手町・丸の内、赤坂、青山などでは、しゃれたインテリアで、味も結構いけるランチが1000円から1500円くらいで味わえる。しかも1時間居座っても文句を言われることはない。しかし、早稲田近辺にはそうした店はきわめて少ない。というのも、そもそもそうした価格帯の顧客層は絶対数が少ないのである。

学生に聞くと昼飯に出せる金額は700円止まりで、それ以上になると特別なときにしか行けないという。普段は定食屋、弁当屋、コンビニ、学食などが主な行き先になるそうだ。私は食い物にそれほどこだわらない方ではあるが、さすがに学生が主体の店は入りにくい。しかし、マーケティングの観点からは、店の方はそれでよいのである。要するにターゲットでない顧客層は来てもらわなくても良い、あるいは満足してもらわなくても良いのだ。これを顧客の選別とも言う。

実は表題の「ある日の午後の喫茶店風景」というのは、私が20数年前に慶應ビジネススクールに入学したときに、恩師の嶋口先生からマーケティングを習ったときの、セグメンテーションに関するケースのタイトルである。
未だに、自分の中に鮮明に残っているために、昼飯を食べるときにもこんなことを考えてしまう。

このケースから学んだことは、「マーケティングで大事なことは、ターゲット顧客層と自分たちが提供する商品やサービスのマーケティングミックスとの整合性がとれていることである。」だ。早稲田近辺では、学生が主たるターゲットとなるので、価格は高くても700円、雰囲気よりも早さと量、さらにどちらかといえば腹持ちのするメニューと言うことになる。

成功しているブランドは、こうしたターゲットセグメントとマーケティングミックスの整合性がとれている。飛躍した例ではあるが、ルイ・ヴィトンなどが典型である。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年7月 2日 (月)

勝者の思考法

コンサルタントを目指す人への3冊目は、二宮清純著「勝者の思考法」(PHP新書)である。一言で言えば、プロフェッショナルのなんたるかを教えてくれます。

この本にはスポーツに関する日本人の勘違いや感情をベースにした議論を木っ端みじんにしてくれる気持ちよさがある。そして、また人生のヒントにもあふれた本である。
日本人は弱者と敗者を同情的な視点で同一視しているが、これらは別物であり、弱者には理解と配慮が必要であり、敗者には復活のチャンスを与えるべきだと主張している。その通りである。日本人はつい敗者に同情しがちで時にそれを美化さえする。しかし、それは間違いであり、負けは負けであると認識するところから、真の進化が始まる。サッカーのワールドカップ出場を逃した試合を「ドーハの悲劇」と言っているのがよい例である。
一方で著者は弱者がどうしたら勝者になれるかについても考察している。「凡」から「非凡」を引き出す魔術といった思わず読んでみたくなるタイトルがついている。

さらに、5章の「勝者の思考法」のp181にはこんな一節がある。
FWとして大成するのは、例外なく強烈な構成を持った人材である。極端に言えば、「右向け右」と言われたときに左を向くような感性が、ゴールを決めるに際してイマジネーション豊富なプレにつながるのだ。(途中略)組織の中に乱気流を巻き起こすような存在。指揮官にすれば扱いにくい存在であるが、しかしそうした個性は強い組織作りに逆行するものではない。
あるいは別のところでこんなことも言っている。
サッカーのゴールについて、「予定通りのことをしていてもゴールは奪えない。ゴールを想定してディフェンスの練習をするのだから、当然のことである」。ではどうしたら、ゴールが奪えるのかと言えばアイデアと決断力だという。
私が大好きなコメントであり、コンサルタントもかくあるべしと思う。言われたことをこなすことが身についた人々には耳が痛い話だろう。

また、同じく5章のp202には、「勝負師とギャンブラーの違いがここにある。ギャンブラーは運を天に任せるが、勝負師は最後まで自分で運を仕切ろうとする人種のことを言う。」なんてしゃれた文章が載っている。この言葉を何人の経営者に贈ったことだろう。

そんな彼が、さんざん勝負に勝つ方法について語りながら、「ゲームの勝者が人生の勝者とは限らない」と言っているところがまたいい。
リーダーシップ論、コンサルタントの心構え、若手コンサルタントの育成方法について学べる名著である。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2007年6月 | トップページ | 2007年8月 »