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2007年6月 8日 (金)

MBOの本質

今週はコバレントマテリアルの香山晋社長に来てもらって、MBOについて話をしてもらった。コバレントマテリアルと聞いてもなじみのない人がほとんどだと思うが、この6月1日に東芝セラミックスから社名変更したばかりである。というのもMBOという手法を使って、東芝の子会社ではない独立した会社となったために社名に東芝の名前が残っているのがふさわしくないからである。1千億円の売上があり、かつ儲かっている会社を東芝が手放したというので話題になり、昨年10月に日経新聞の一面を飾る大きな記事が出たので、記憶に残っている人も多いと思う。

MBOとは、知っている人も多いと思うがManagment Buy Out の略で、経営陣による企業買収のことを指す。通常のM&Aが第三者による買収であることが多いのに対して、現経営陣が大株主から株を取得して独立することからmanagement buy out と呼ばれれている。

このMBOを決断し、実行したのが、元東芝の常務で2004年より東芝セラミックスの社長についていた香山氏である。

香山さんの言葉で印象的だったのは、大企業の子会社でいる限りあるいは上場企業である限り、いくら成長戦略を描いて見せても、それが投資を伴うものである限り、evidence(証拠)を見せろと迫られるが、それを見せて説得するのは至難の業であるという話だった。1位や2位の企業ならともかく、3位以下の企業が投資を伴う成長戦略を示しても信用してもらえない。そうなると、せっかくのチャンスをみすみす逃すことになる。しかし、投資しなければやがてジリ貧になり、座して死を待つことになる。なんとかして、その状況から脱して資金を確保するためには、投資をサポートしてくれる資本家を捜す必要があったがそれが今回出資してくれた2つのファンドだったそうである。一方で香山さんたち経営陣も、投資家に対して逃げ出さずに最後までやり抜くというコミットメントを見せなければ投資は約束してもらえないことになる。

一言で言えば、東芝の子会社である限り、成功を100%約束出来ない投資を親会社から引き出すことは難しかったし、上場企業であることも投資家に対してそれだけの投資を正当化することが難しかったという。
そのどちらの制約からも脱する唯一の解がMBO&非上場化だった言うのが香山さんの信念である。世の中にはいろいろなタイプのMBOがあり、その理由も様々であるが、これが真のMBOであるという彼の信念と将来へのこだわりが感じられた今回のレクチャーであった。

氏は大学時代サッカー部のフォワードでならしただけあって、攻撃型の経営を行って東芝セラミックス社の再建を果たし、同時に同社を東芝から離脱独立させることに成功したのかもしれない。
がんばれ、香山さん!

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コメント

Jさんへ
久しぶりです。
そうですね。最近は企業にしろ、ファンドにしろ、インベストバンクにしろ、やや金儲けが前面に出た動きが多いようです。
すべてを満たす最適な資本形態がないとすれば、上場もしたいが経営をフリーハンドの方法はないかというように考えるのではなく、経営の軸として何は失いたくないかという視点から資本政策(上場・非上場、資金調達の方法)あるいはガバナンスのあり方(取締役の構成など)を考えるのではないかと思います。
私が知らないだけで、そのあたりをきちんと考えてやっている隠れた優良企業もあるのではないかと信じていますが・・・。

投稿: 内田和成 | 2007年6月10日 (日) 22時46分

香山さんのような、前向きのリスクに果敢に挑んでいくような力強いMBOの話は気持ちがいいです。

同時に(形態はMBO、PEファンド、いろいろですが)非上場化しなければ企業価値を生み出しにくい昨今の(日米の)状況を見ると、上場している意味とは何か、資本市場の役割とは何か、いろいろ疑問が出てきます。

そもそもの「企業のための金融」が、最近は「金融のための企業」に引っくり返っている感もあります。

(コバレントのケースは、上場よりも、大企業の子会社ゆえの制約の方が主な問題だったのだろうと推察しますが。)

投稿: J | 2007年6月 9日 (土) 01時46分

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