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2007年4月

2007年4月27日 (金)

mixiと根来先生

先日、ある企業のWeb2.0に関する勉強会で、早稲田ビジネススクールの同僚である根来龍之教授にmixiについて講演してもらいました。

根来先生によれば、mixiをもっとも特徴づけているのは世間で言われている招待制や新しい書き込みを知らせてくれるお知らせメール(専門用語ではRSS機能という)にあるのではなく、自分で誰に情報を伝えようとするかを制御できる「自己制御性」だそうです。
平たくいえば、自分の日記を公開する範囲を自分のことをよく知っている友達(いわゆるマイミク)に限定するのか、それとも友達の友達まで広げるのか、あるいはmixiの会員全体に公開するのかを選べる仕組みのことです。これによって、参加者の書き込みに対する心理的障壁を下げることになり、ひいてはリアルのネットワーク(現実の友達関係)に近い効果が生まれ、結果として場が荒れにくい(激しい議論が起きたり、誹謗中傷が多発し健全なコミュニティーにならないこと)ということです。

これ以外にはmixiのネットワークというのは現実の知り合い(すなわちリアルのネットワーク)とバーチャルでしか知らない知り合いの両方から構成されているところに特徴があるが基本はリアルのネットワークであると言われて、なるほどなと思いました。確かにmixiを使っている人は多くの場合は普段もよく知っている友達とやりとりしているようですが、その中に友達の友達が入り込むことで、元々は知らない人がネットワーク上で友達になってしまうという現象です。
別の言い方をすれば、mixiと言えども、普段知らない人ばかりと交流の輪が広がるということはほとんどないという意味で、リアルのネットワークの写し絵なのですという説明には妙に納得しました。

私自身はmixiのおもしろさがよく分からないのです(何でも試す方なので、メンバーにはなっています)が、自分の子供たちが熱心に何時間もやっていたりするのを見ると若い人にはおもしろいのだろうなと思います。それにしても若者向けと思われるmixiをおもしろいと言っている根来先生の方が僕にはよっぽどおもしろいです。

明日から、ヨーロッパに行ってきますので、しばらく書き込みは不定期になります。ごめんなさい。

ちなみに根来先生は「mixiと第二世代ネット革命―無料モデルの新潮流 」という専門書を東洋経済新報社から出しています。興味がある方はごらん下さし。

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2007年4月26日 (木)

BCG日本代表

早稲田ビジネススクールの「戦略とリーダーシップ」の昨日のゲストはボストン・コンサルティング・グループ日本代表の御立尚資(みたちたかし)氏でした。ちなみに彼はテレビ東京のワールドビジネスサテライト(なぜか略すと早稲田ビジネススクールと同じWBSになる)のコメンテーターとしても有名である。

Mitachi

盛りだくさんの内容でしたが、南極点到達一番乗りのアムンゼンと、二番手に終わった上に帰路に遭難死したスコットの比較がおもしろかった。御立氏によれば両者の成否を分けたのは戦略でも装備でもなく、意思の差が大きかったという。彼によればリーダーに必要な条件は3つあり、①Tenacity(しつこさ)、②Holistic View(全体観)、③Optimism(楽観)とのことだ。アムンゼンは犬ぞりに徹底的にこだわったのに対し、スコットは犬ぞりだけでなく、馬のそりや雪上車まで用意したという。ところがそれらが3つとも機能せず、最後は人が引く羽目になったという。さらに楽観・悲観については、スコットが南極点について「ここは本当に恐ろしいところだ」と書き記したのに対し、アムンゼンは南極点を目指す当日に「さあそろそろ行こうか」と行った明るいのりで出発したという。

講演の最後に出た質問がおもしろかった。日本の経営者はどうも引き際が悪いのではないか、それもリーダーシップの大事な条件にあげて欲しいという質問だったが、御立さんの答えが振るっていた。日本人の経営者の何十倍もの報酬をもらって、後顧の憂いのないはずのアメリカの経営者も往生際の悪さでは負けていない。日本の経営者が今の何倍かの報酬をもらうようになったら、アメリカの経営者よりよほどきれいにやめるのではないかという意見で、教室の笑いを誘っていた。

聴講していた先生のコメントによれば、非常に親しみを感じる兄貴分のようなリーダーだったと言うことだ。

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2007年4月25日 (水)

勝ち馬を作る

勝ち馬シリーズ最後のオプションは、自ら勝ち馬になるのではなく、勝ち馬を作るである。
これは自社だけでは十分な経営資源がない場合には、他社と組んで勝ち馬を作っていくということになるし、あるいは放っておくと他社が勝ち馬になってしまうので、自社に有利な勝ち馬を作ることで自社を有利にしよう、あるいは自分は事業リスクが取れないが他社を勝ち馬に仕立てることで自社にも利益をもたらそうとか、いろいろな理由が考えられる。
勝ち馬を作るためにはいくつかの条件が必要と思われる。筋の良い馬に目をつける、良い調教する、自信をつけさせたり、障害から守ってやったりする。
ビジネスで言えば、優れたビジネスプランを発掘する、経営資源特に人と金を調達する、企業や人材を紹介したり、相談に乗ったり、時には叱咤激励することに相当する。
自分一人が頑張ればよいのと違って、主役が別にいるわけであるから、彼らをその気にさせないといけない。第三者をその気にさせたり、予想外の事態が発生したときにそれを乗り越えさせるためには、自社内で発揮するよりさらに強力なリーダーシップが必要とされる。ところが強力なリーダーシップを発揮すればするほど、その人物や企業にすべて持って行かれてしまうのではないかという疑心暗鬼が他社に生じてくる。例えばマイクロソフトが、みんなで一緒にスタンダードを作りましょうと言ったときに、どれだけの企業が本気にするであろうか?

勝ち馬を作るというのは、一見リスクが分散できて有利そうであるが、利害関係者がいろいろ存在する中で、それらをとりまとめて勝ち馬に仕立てていくのは並大抵のことではない。これを非常に上手にやった人がいる。京セラの稲盛さんは、一代で京セラという優良企業を育て上げた大変優れた経営者であるが、私が尊敬している理由は別にある。それは第二電電(現在のKDDI)を生み出したことである。
海のものとも山のものともつかぬNCC(New Common Carrier、旧電電公社に対する新しい通信会社という意味)を始めたこと自体驚きである。しかもそれを成功させてしまった。既に京セラの経営者としての名声は築いていたので今更新しい会社を成功させる必要もなかったと思われるし、仮に失敗すれば名経営者としての名声も地に落ちていたかもしれない。
もしNCCは国の規制緩和策に沿って作られた会社で誰がやっても成功したという人がいればそれは間違いである。現に同時にスタートした残りの2社は失敗している。トヨタ自動車が作り出した日本高速通信は実質経営が破綻し、日本テレコムは所有者が転々としてとても成功しているとは言えない。誰がやっても成功したわけではないのである。

ということで、勝ち馬を作る作戦は実際にやって成功するのがもっとも難しいかもしれない。コンサルティング会社が手伝っていることと言えば、顧客を成功させるという意味では勝ち馬を作ることと同じであるが、所詮自分では経営しないので、このカテゴリーには入れない方が良いであろう。

さて、今日まで3通りの勝ち馬作戦を提唱してきましたが、皆さんはどれがお気に入りですか?後日、アンケートを採りたいなと思っていますが、とりあえず是非ご意見をください。

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2007年4月24日 (火)

勝ち馬になる

勝ち馬に乗るのがせこい、あるいは嫌だという企業にとっては、自ら勝ち馬になるという戦略があり得る。人のふんどしで相撲を取るくらいなら、失敗しても良いから世界初を目指すあるいはダントツナンバーワンを目指すということである。ソニーなどはこのタイプだろう。ウォークマン、CD、プレーステーションなど、様々なナンバーワン製品を生み出してきている。と言っても最近はiPodなどにやられて精彩を欠いているが。

新しい事業を始めるときに二つのリスクがある。一つは市場リスクといい、新しい市場がそこに本当にあるかどうか分からないリスクである。もう一つのリスクは競合リスクである。そこに市場があったとしても競争に勝てるかどうか分からないことをいう。
たとえば、私の祖父は自転車につける方向指示器の特許を持っていたが、こんなものは手があれば済んでしまうし、自転車のバランスも悪くなるので全く普及しなかった。市場リスクの最たるものであろう。
一方で、市場リスクはなかったが競合リスクのためにせっかく創り出した市場を他社に取られてしまった例でいえば、IBMのPCがあげられる。アップルのクローズドなPCに対して、オープンな規格のPCを創り出し大ヒットした。しかし最終的にはコンパック、デルなどの競合に追い落とされてしまった。
日本企業はどちらかというと、他社との競争は歓迎だが、市場があるかどうか分からないところに一社だけ出て行って新しい市場を創り出すというのは苦手なようだ。ソニーとは逆のパターンだ。一人だけブルーオーシャンに漕ぎ出して失敗するよりレッドオーシャンでみんなと戦う方が安心するのだろう。(チャン・キムの「ブルー・オーシャン戦略」については別途取り上げます。)

もう10年は前のことであるが、アメリカから来たシニアのコンサルタントと日本の錚錚たる企業の経営者たちを訪問したときに、多くの経営者の口から「第二のマイクロソフトはどこですか」という質問が出て失望したことがある。彼らは第二のマイクロソフトになるような企業をいち早く見つけてそこと組めば、御利益があるあるいは他社に先駆けてはやりのビジネスの乗り出せると考えたようである。なぜ私が失望したかといえば、日本の経営者から「どうしたら第二のマイクロソフトになれますか」という質問を期待したからである。

個人的には成功確率は低くても、勝ち馬に乗るよりは自ら勝ち馬になる戦略を選びたい。それにつけても坂村健さんのTRONはすごかったな。
コンサルタントだから、そんな勝手なことを言うと怒られそうであるが・・・。

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2007年4月23日 (月)

勝ち馬に乗る

経営者にとって大事なスキルに潮の流れを読むことがある。
今が自社にとって順風が吹いているのか、あるいは逆風なのか。それによって打ち手は変わってくる。順風であれば、少しくらいのリスクをとってもうまくいくことが多い、仮に外れてもケガが少なくて済む。一方で逆風の時は、下手にリスクを取ると裏目に出ることが多い上に、その損害に耐えられないケースも出てくる。いわゆる弱り目に祟り目のケースである。

しかしいつも自分だけ順風と言うことはない。そうしたときによく使われる手が他の勝ち馬を見つけてそこと一緒にやる、あるいはおこぼれ頂戴の作戦である。カジノなどでも自分は直接賭けないのに、ついている人に相乗りして賭けている本人よりもっと稼ぐ輩は一杯いる。
何も恥ずかしがることはないが、このやり方はみみっちいと言えばみみっちい。でもマイクロソフトがIBMのPCという勝ち馬に乗っかってそのオペレーティング・システム(OS)であるMS-DOS(後のWindows)を大成功させた例などを見れば、とても小さい話とは言えない。(その時勝ち馬だったはずのIBMがPC市場から事実上退場し、逆に負け馬だったアップルが今や別の事業で勝ち馬として市場に戻ってきたのを見ると歴史の不思議さを感じざるを得ない。大げさかな?)。また、トヨタ自動車の躍進とともに業績を上げている部品メーカー、シャープの液晶テレビ用に部材を供給して成功している印刷会社なども勝ち馬にうまく乗った企業と言えるかも知れない。

経営をギャンブルと同じように考えて良いかと言えば、教科書的にはもちろんノーである。しかし、これまでに何百人という経営者と直接接してきて言えることは、人にも企業にも運というものは存在して、それをうまく利用するかしないかで結果が大きく変わるということである。別の言い方をすれば、自分がついているかいないかをはっきりとらえることは大事であり、自社がつきあう企業に運があるかないかも大事な要素である。もちろんツキだけで経営をするのは間違っている。経営の意思決定には原則があり、科学性がなくてはならない。しかしである、最後はやっぱり経営者のエイッ・ヤーがカギを握っていると思う。
こうした非科学的な要素と経営をどうリンクさせていくかが当面の私の研究課題である。

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2007年4月22日 (日)

心和むオフィス

先日所用で三田の住友不動産ツインビル西館にある会社を訪問したところ、正面入り口を入ってすぐのところが紫の花一面でとてもきれいだった。思わず、写真を撮ったのがこの一枚である。

Sumitomomita

このビルにオフィスを構えていれば、出先でいやなことがあっても自分の会社に帰ったときにとてもいやされるだろうなと思った。もちろん私のような訪問者も、入る前から癒されるので、心穏やかに仕事に臨めるのではないかと思った。
私自身は芸術や自然にあまり縁がなく、この花も何の花か分からないような無粋な人間であるが、それでも心が穏やかになる風景&時間であった。

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2007年4月20日 (金)

人間とコンピュータ

昨日早稲田大学IT戦略研究所主催の講演会があり、「仮説思考と戦略思考」というタイトルで講演してきた。もう一人の講師は昔からよく知っている元セブンイレブンのCIOで現フューチャーアーキテクト副社長の碓井誠さんだったので大変楽しい講演会になった。また聴衆にも知っている顔がたくさんいたので、こちらも講演後に懐かしく意見交換した。
私はすべての情報を集めてから結論を出すとか報告書をまとめようとすると情報洪水に溺れてしまい、仕事の効率が悪すぎるという話をした。要するに仮説思考の重要性を説き、網羅思考を戒めたわけであるが、この講演会の会場で最後に日本ユニシスの佐伯常務からいただいた質問が大変ユニークであったので皆さんにも紹介する。

要約すると人間が仕事をするのに網羅思考は効率が悪く仮説思考が優れているというのはよく分かった。では網羅思考、すなわちしらみつぶしに調べる、が得意なコンピュータが進化すると、人間の直感や仮説にコンピュータの方が勝つことになるのではないかという質問であった。とてもおもしろ問いだ。

私は人間の直感・勘が勝つと信じたいと答えたが、一方で気になることもある。実は、先月(3月21日)、将棋のプロ棋士*渡辺竜王とコンピュータ将棋の世界チャンピオンが対戦するというイベントがあった。もっと人間の楽勝かと思ったら結構コンピュータが強かったというのでマスコミでも話題になったが、その時に私が驚いたのがコンピュータは1秒間に400万手も読むことが出来るという点だった。いくら人間の直感が優れていると言ってもこれだけ徹底的に網羅思考で来られたときに、人間はどう振る舞うべきなのかというのは結構難しいなと思った。

当日の司会役の根来先生は上記の質問に、コンピュータはすでにフレームワークが出来ている中で思考したり、計算したりするのは得意だが、全く新しいものは苦手だと答えていたがそれも一つの答えである。しかし、人間が普段従事している仕事はそんなにクリエイティブな仕事ばかりではないと思うので、普通のホワイトカラーに残された仕事がどんなふうになっていくのか大変興味がある。

この問題に関する皆さんの意見を是非聞かせてください。

おまけ
*:"ぷろきし"と入力したらまず"プロキシ"と変換されたのに驚いた、プロ棋士という言葉よりコンピュータ用語のプロキシが先に出てくるなんて・・・。プロキシを知らない人はこの話は忘れてください。それくらいマイナーな言葉です。

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2007年4月19日 (木)

7人の侍

早稲田ビジネスクール「戦略とリーダーシップ」論に登場の今週のリーダーはNTTドコモの常務取締役辻村清行さんだった。

辻村さんは現在プロダクト&サービス本部の本部長をしており、ドコモのi-mode、音楽配信などのサービス並びに新しい携帯電話の開発・マーケティングなどを担当している部門の責任者だ。

講演の内容は、ドコモがこれまでやってきたことの足跡をたどると同時に今後のモバイルが目指していく世界について、単なる一企業の枠を超えて、世の中を変えていくのだという強い自負と共に話してもらった。
ドコモが携帯電話でナンバーワンになれたのは運が良かったという世間の見方があるが、実はそうではなくて彼らが携帯の市場を創り出し、ユーザーに新しい使い方を提案し実現していったイノベータでありパイオニアであったということがよく分かるプレゼンテーションだった。
辻村さんは実はドコモ創業時からのメンバーで、当初の社員(と言ってもNTTの一部門だったが)は7人しかいなかったそうである。と言うわけで私は勝手に7人の侍と呼んでいる。
講演が終わった後の質疑応答もたくさん出たのであるが、最後の質問が大変印象に残った。それは、創業当時の熱い思いをどうやって現在の大勢の社員に伝承するのかという質問だった。辻村さんもそれが今の課題であり、何とかしたいと思っているのでコミュニケーションに努めていると答えていた。しかしそれだけで解決するのは少し難しいのではないかとも感じた。と言うのも多くのベンチャー企業で似たような悩みを抱えており、なかなか有効な解決策が見つかっていないからである。豊かな家に生まれた子供に親が貧乏だったときのことを思い出させるような難しさがあるためだ。同じような悩みを持ちながら、昔のカルチャーをそれなり維持しているホンダとDNAの継承に苦しんでいるソニーの両方がある。ドコモはどちらになるのであろう。私としては是非成功してもらいたいと思っている企業であり友人である。

先日も別のところで触れたが、辻村さんはドコモの取締役で本部長という要職にありながら、東工大で先日博士号(PhD)を取ったばかりという勉強家でもある。

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2007年4月18日 (水)

日科技連

今週月曜日に日本科学技術連盟(通称:日科技連)で「仮説思考」の講演を行った。仮説思考の本を出してからちょうど1年になるが、こうして仮説思考の考え方が確実に広まっていくのはうれしいことである。

さて、仮説思考の講演でいつも出る質問が3つある。一つはもし仮説が間違っていたらどうするのかという質問であり、二つ目はどうやったら仮説思考を身につけることが出来るかであり、三番目が自分が仮説思考をやろうとしても上司が網羅思考(すべてをしらみつぶしにやらないと気が済まないタイプ)だった場合にどうするのかである。
今回の講演会では2番目の質問が出た。簡単に答えておく。

一つは自分が意思決定しなくても良い案件、すなわち上司や経営者がしなくてはならない意思決定でも自分で意思決定のシミュレーションを行うやり方である。例えば、新規事業のゴーサインを出すかどうか、新製品の価格やプロモーションをどう考えるかなど、企業活動で意思決定をすることは山ほどある。大半は、上司ないしは組織で意思決定をする場合の材料を提供するまでが自分の仕事ということが多いと思うが、その場合でも自分で仮説を立てて、仮の意思決定をしてしまうのである。そして、上司の意思決定と自分の意思決定が同じだった場合には、結果が予想通りだったか文字通り検証すればよい。一方で、上司の意思決定と違った場合は、結果が出たときに自分の意思決定と上司の意思決定を比較してどちらが優れていたかを密かに検証する。密かにやるのが大事で、これをおおっぴらに述べれば嫌みと取られるか上司批判になるのでやめた方がよい。

次に簡単にできる訓練は仕事に関係ない日常の出来事を題材に、頭の中でいろいろな仮説を立ててみる。例えば、近所のレストランで評判なところがあれば、その理由を考えてみる。味の場合もあるだろうし、サービスの場合もあるだろう、あるいはインテリアかもしれない、もちろん価格が安いのが理由の場合もあるだろう。単に競合店がそばにないだけのケースもあり得る。こうした考えられる可能性をいろいろ上げてみて、一つ一つ検証していくのである。例えば、自分の好きな他のレストランに比べて、味はどうなのか、サービスはどうなのかといった点である。

最後の訓練は会社の仕事に直結したやり方である。例えば自分が製造部門に所属しているとして、営業に対する不満あるいは問題点はたくさん抱えているはずである。なぜなら、こうした部門間の対立はほとんどの企業に共通の課題であるからだ。そこでまず自部門が持つ相手部門への不満を羅列してみる。普通はその次にそれらの課題の重み付け(重要度の判断)を行い、最後に解決策を考えるというように進むはずである。
しかし、私の提案はちょっと違う。問題点を羅列した後に、相手の立場に立ってその問題を見直してみるのだ。要するに彼らはなぜそう考え、行動するのかを推察してみるのである。これを私は「相手のめがねをかけてものを見る」と言っている。そうすることによって解決策が見つかることも多いが、それより大変優れた頭の体操になる。違う視点からのものの見方を学べるからである。仮説を立てる上で大事な視点である。

ちなみに今週はもう一件、早稲田大学IT戦略研究所主催のエグゼクティブリーダーズフォーラムというところで、やはり「仮説思考と戦略思考」というタイトルで講演する。

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2007年4月17日 (火)

東京ミッドタウンとWeb2.0

昨日は知り合いのIT業界の経営者に六本木の東京ミッドタウンで食事をごちそうになりながらWeb2.0の議論に花を咲かせました。
テーマは企業がWeb2.0をビジネスにどのように活用すべきかというものでしたが、私の持論は企業がWeb2.0と騒いでいるうちはダメで、もっと自然に使いこなせるようにならないと本当の意味で既存企業の武器にはならないだろうというものです。
ファックスが今ほど普及していない時代には、うちの会社はファックスをこんな風に使いこなしているとか、ファックスが一つのフロアに1台おいていない会社は時代遅れだとか言ってましたが、今時「うちは電話とファックスを仕事に活用しています」なんて自慢する企業はどこもない。それくらい電話やファックスは企業にとって使いこなして当たり前の技術となっている。これはWeb2.0にも当てはまる。
というのは、「Web2.0って何」とか、「こんなにすごい」とか言っているうちはどの技術やアプリケーションがどれだけビジネスに結びつくのかが誰も分からない時代です。実際のビジネスに活用するのはほとんどが新興企業ないしはITベンチャー企業に限られます。大企業から見ると様子見の時代です。
次に来るのがトライアル(試用)の時代で、大企業がおっかなびっくり実際のビジネスに使ってみる時代で、たとえばSNS(mixiに代表されるソーシャルネットワークシステム)を社内システムに応用してみたり、トライアルでマッシュアップ(3月9日参照)を導入してみたりする。ここでは先にトライした企業とそうでない企業、使いこなせた企業とうまくいかなかった企業などに結果分かれると思いますが。
そして第3段階がインターネットを自家薬籠中のものにして、自由に使いこなすステージとなる。この頃には今Web2.0として話題になっている技術やアプリケーションはどの企業にとっても当たり前になっているであろう。

ところで、せっかく訪問した東京ミッドタウンはあいにくの雨模様でしたが、ショッピングエリアは大変な賑わいで人気のほどが伺えました。今後も結構いけるのではないかという気がしました。少なくとも私には六本木ヒルズよりは落ち着きます。リッツカールトンの最上階からの雨の夜景も楽しんできました。
中高年&地方客の丸ビル、若者の六本木ヒルズ、その中間層のおしゃれな街ミッドタウンというのが私の印象です。

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2007年4月15日 (日)

清水エスパルス

私はサッカーが大好きで、BCGでは自分のフットサルクラブを持っているくらいだ。
さすがに身体はほとんど動かないが、たまにはプレーすることもある。と言っても昨年スキーで膝の靱帯を切ってからはまだ再開していない。

なぜ、今日サッカーの話かと言えば、1993年のJリーグ発足以来私は清水エスパルスを応援している。その大好きな清水エスパルスが今日勝てば首位に立つ可能性もあったのに残念ながらというより案の定負けてしまったので、悔しさをブログにぶつけておくことにしたわけである。

東京に勤め先があり、横浜に住んでいながらどうして静岡県のチームである清水エスパルスを応援しているかと言えば、そんなにたいした理由があるわけではない。しかしもっともらしく説明するとすれば、93年の発足当時ほとんどのJリーグチームが企業チームを母体にしていたのに、清水エスパルスだけが純粋な地域クラブチームだったからである。たとえば日産を母体にした横浜マリノス、読売を母体にしたヴェルディ川崎などである。こうしたチームは当然のことながら、潤沢に金を持っており有力選手を抱えるだけでなく、海外からも有名選手を呼んできた。住友金属を母体にした鹿島アントラーズの呼んできたジーコが代表例である。
そうした中で、静岡というサッカーどころで本当の意味で地域密着型のチームが出来たのですぐにファンになった。さらに一時は日本代表のエース番号10番を背負った澤登という大好きな選手もいた。(残念ながら彼は昨シーズンで引退してしまった)。
もう一方で判官贔屓だったとも言える。その後清水は一度もJリーグ一部から陥落はしていないのであるが、そうかと言っていつも優勝戦線にいるチームでもない。とても冷や冷やしながら応援するチームなのである、野球で言えば横浜か広島のような感じであろうか。
要するに期待はさせるが決して夢を叶えてくれるわけではない。と言うことで勝つだけでうれしくなり、陥落の心配がなくなっただけでうれしくなるといった応援のしかたをしている。
一度だけステージ優勝したことがあるが、そのときは本当にうれしかった。
がんばれ、長谷川健太(去年からの監督である)!そして優勝の夢をもう一度。

下の写真(左)は2002年の日韓ワールドカップのチケット(ICカード)である。日本戦全試合と準決勝まで見ることが出来るとても良いチケットだった。同じく写真(右)は清水エスパルスのファンクラブ会員証である。

Spulse_1 

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2007年4月13日 (金)

恐竜と隕石の話

ゼミ生の朝川君のリクエストに応えて、20の引き出しの「恐竜の絶滅は隕石衝突」を紹介しよう。これは以前にも取り上げたジョエル・バーカーの「パラダイムの魔力」の中で紹介されている。恐竜が地球に衝突した巨大隕石のせいで絶滅したというのは今日では定説になっているが、それ以前には恐竜は地球の環境変化に適応できなくなって徐々に絶滅したと信じられていた。
そうした中で、従来の常識に全く反する恐竜隕石絶滅説を提唱したのは、生物学者でも考古学者でもないノーベル物理学者のルイス・アルヴァレズだったそうである。彼は、恐竜が絶滅した時代の地層の中から、奇妙なイリジウム層を発見し、そこから恐竜の絶滅は地球に巨大隕石が衝突したときに起きたという仮説を立てた。しかし、従来の説を信じ切った、すなわち従来のパラダイムにとらわれた専門家たちはついにアルヴァレスの説を受け入れることなく、彼に名を成さしめてしまったという話である。
ここから学べる教訓は専門家であればあるほど自分たちの持っている既存の知識や常識にとらわれて、新しい考え方を受け入れるのが難しい。とりわけ新しい説も提唱するのが門外漢の場合には、既存のエスタブリッシュメントは拒絶反応を起こす可能性が高い。
企業が新しい考え方に接した場合や、競争相手がユニークな打ち手を打ってきた場合には気をつけるべき態度である。

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2007年4月12日 (木)

経営者中田宏

今週から早稲田大学の春学期の講義がスタートした。夜間のビジネススクール(プロフェッショナルコース:MBA)では「リーダーシップ」の科目を担当している。企業経営者に来てもらってリーダーシップについて語ってもらってディスカッションをするという講義である。社会人学生にはもちろん学問・知識も大事であるが、最先端で活躍する生身の経営者の話を聞くこともまた刺激になると思って始めた講義である。そのトップバッターに私の尊敬する経営者の中田宏横浜市長に来てもらって、社会人学生80名あまりに講義をしてもらった。
なぜ政治家と書かずに経営者と書いたかと言えば、彼は経営破綻していた大企業横浜市のトップに就任して、その再建に日々奮闘しているからである。彼の経営哲学(もちろん正しくは政治哲学)を聞いていると、下手な経営者よりよほど経営者らしい。

中田宏さんは政治家としてももちろん優秀であるが、個人的には政治家にしておくのがもったいない、経営者にしたら相当な企業の経営者になれるだろうなと思う。もちろん、国家的には一企業の経営者というよりは、地域や国のトップとして活躍してもらった方が意味があるのだろうが、ほんとに政治家にしておくのがもったいない男である。

いつもながらの迫力ある話に、学生もシーンとして聞き耳を立てていた。
聴講していた日産に勤めている学生がカルロス・ゴーンのやり方とそっくりであると感心していた。

中田さん、どうもありがとうございました。

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2007年4月11日 (水)

コーポレートブランド格闘記

BtoBブランディング
消費財のブランド戦略については何十年前から世界中の学者や実務家によって研究されてきている。また、一般ビジネスマンにとっても肌感覚で理解しやすい世界である。
ところが、産業財のブランディングとなると、そもそも産業財にブランドなんか不要ではないかとか、せいぜいリクルーティングに役立つだけではないかとか、どちらかというと積極的に支持する理由は少なかったのが現実であった。

ところがここ数年、産業財においてもブランディングという考え方を積極的に捉える動きが増えてきている。例えば、単なる知名度向上ではなく、営業活動にプラスになるとか、あるいは社内のいろいろな部門の意思統一、ひいては顧客から見たときのまとまった企業イメージにつながるなどの価値が評価され始めている。こうしたBtoBブランディングの意義と方法論についての画期的な入門書が日本経済新聞出版社から出版されたばかりの「コーポレートブランド格闘記」である。著者は神戸大学のマーケティング&ブランドの大家である石井淳蔵先生と、日本経済新聞社広告局の実務家横田浩一さんという異色の組み合わせである。

Btob_branding_2 

内容の一部を紹介すると、もちろんBtoBブランドの効用や方法論は語られているが、それ以上に私が重要だと思ったのが、BtoBブランドがなぜ必要になったかの件(くだり)である。著者によれば、①自社の業容・業態の広がりにより顧客とのコンタクト・ポイントが広がったこと、②自社内の業務をアウトソーシングや子会社化したことによりコントロールしにくくなっていること、③案件の大型化により顧客先での担当者や責任者が見えにくくなったことなど5点ほど上げられているが、そのどれもがなるほどという内容である。これ以外にもいろいろ参考になる点が多いが、これ以上書いてしまうと著者に怒られそうなので、興味がある方は是非実物をご覧ください。

実は、私もごく一部だけ、この中身に関わっている。というのも一昨年から昨年にかけて、日本経済新聞社と日経広告研究所の共催による「BtoBブランド研究会」に顔を出させていただいた。私自身は、あまり積極的に参加することが出来ず心残りであったが、座長の嶋口先生はもとより、数多くの学者・実務家が参加され、その成果をまとめ上げたのが石井淳蔵先生と日経新聞の横田さんというわけである。

通常であれば、報告書あるいはそれをベースにした学術的な書籍にするところを、石井先生と横田さんはあえて小説風にまとめたという大変な意欲作である。意欲作といったが、それは本の作り方に関してであって、中身については読み物風とはいえ、BtoBブランドの本質をきちんと押さえたすばらしい入門書になっている。
特に産業財のビジネスに何らかの形で関わっている方々、例えば部品・生産財メーカーの社員の方、あるいは生産財・サービスを企業の中で購買する立場の方、あるいは顧客に産業財企業を持つ方などに、広くお薦めである。

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2007年4月10日 (火)

スター誕生

自動車レースのフォーミュラワンに新しいスターが誕生しそうだ。イギリス人ドライバーのルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton、22歳)である。
一昨日、日曜日深夜12時から2時までフジテレビで中継(録画)をやっていたが、アイルトン・セナのいなくなったF1で久しぶりに興奮した。
といっても彼が優勝したわけではない。彼は2位に入っただけだ。しかしレースを作ったのは彼だったし、アロンソを優勝に導いたのも彼だった。要するに試合を支配していたのである。
どういう話かと言えば、F1をよく知らない方のために若干補足すると、F1は1年17試合の長丁場で年間チャンピオンを争う。もちろん一試合、一試合の順位も大事であるが年間でポイントをどれだけ積み上げられるかの勝負である。しかし、全くの個人戦ではなく、同じチームから二人ずつエントリーしている。そしてその二人は、ライバルであると同時に他チームに負けないように協力し合う間柄でもある。
彼らはマクラーレンチームの同僚であるが、最大のライバルがフェラーリチームである。フェラーリチームには、キミ・ライコネンとフェリッパ・マッサという強力なドライバーがいる。

さて、試合の結果がどうなったかと言えば、予選では2・4位と1・3位だったフェラーリの後塵を拝していたマクラーレンが1・2位で試合を終えた。しかし、すごかったのはこの結果ではない。この結果をもたらすためにルイス・ハミルトンが見せたテクニックと根性である。予選の結果から想像がつくかもしれないが、マシンの性能はフェラーリの方が上だった。となると予選通りの順位で本戦が進むとマクラーレンは置いてきぼりを食らう可能性があった。そこで、マクラーレンの2台はスタートにかけた。そして、運良く最初のコーナーを回ったところで、予選2位だったアロンソがトップに立ち、4位だったハミルトンが2位になった。
おもしろかったのはその後である。ハミルトンがアロンソと同じスピードで前に行けば3・4位のフェラーリも同じようについていき、1-4位までは団子状態になってしまう。そうなると、どこかでアロンソがミスしたときにフェラーリ勢に抜かれてしまう可能性が高い。あるいは後ろから迫られているとミスをしやすい。そこで、ハミルトンはチームプレイに出た。自分の限界スピードよりもやや抑えめにして、3・4位のフェラーリ勢を押さえ込む作戦である。マシンの性能で劣る車を操って、前回優勝のライコネンや予選トップのマッサを2台まとめて押さえ込むのは並大抵のことではない。それをハミルトンは完璧にやりきった。予選トップのマッサは、頭に来て抜こうとしてスピンし、大きく後れを取ってしまった。もう一方のライコネンは最後の最後までハミルトンに迫ったが、ハミルトンは2位を守りきった。そのおかげでアロンソは悠々の逃げ切り優勝である。

何がすごいといって、彼のテクニックもあるが、それをF1参戦わずか2戦目の22歳のドライバーがやり遂げたことにある。自分が22歳であれば、隙あらば1位になろうとアロンソにくっついていっただろうし、仮に押さえ込む役に徹したとしてもどこかでミスをしてフェラーリ勢に抜かれることになったと思う。恐ろしく冷静な22歳である。しかもテクニックも持っている。将来どこまで行くのか楽しみである。

個人的には昨年・一昨年と年間チャンピオンになったフェルナンド・アロンソが大好きであるが、ハミルトンが今後彼を脅かす存在になることは間違いない。アロンソも若さ(25歳)に似合わず、冷静なレース運びで知られている。

ちなみに私は自分で車を運転するのが大好きであるが、レースはF1くらいしか見ない。ほとんどテレビ観戦ではあるが、これまで現物ではモナコグランプリと鈴鹿の日本グランプリを見ている。モナコグランプリはたまたまBCGのパートナー会議がカンヌ(モナコのそば)であったときに観戦した。日本グランプリに比べて、急な角度のコーナーが多く、その分スピードが遅いので十分一台一台を見ることが出来たのが印象に残っている。

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2007年4月 9日 (月)

たった三行で会社は変わる(続き)

昨日紹介した本の中で、他にもおもしろい記述があるので引き続き紹介しよう。
p71に「状況判断は客観的に、行動は主観的に」というフレーズがある。要するに事実認識や問題認識は出来るだけ客観的にやることが望ましいが、意思決定と行動は所詮完璧な情報を基には出来ないのだから自分でエイヤッーでやるしかないと言っている。ところが世間では、状況認識を主観的に行い(こうあればいいなという願望が入ってしまう)、一方で行動の方に客観性を持たせるからおかしくなると主張している。自分は正しい行動をしているのだと正当化しようとすることを指している。それより、所詮経営者の意思決定は主観的で独りよがりなのだから、それを自覚して仕事をした方がよほどうまくいくとのことだ。ユニークな視点である。

あるいは経営者の社用車について、これも使わない方がよいと言っており、下手に車なんかに乗って自分が偉いと勘違いするのがいけないそうだ。それを説明するフレーズがp211に「そもそも自分が偉いのではない、会社が偉いのだ。業績が順調だとしたら、それは会社が立派なのであって、自分が立派だからではない。」と載っている。おもしろい。

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2007年4月 8日 (日)

たった三行で会社は変わる

JAL時代の私の同僚が私と同じ頃会社を辞めて、奥さんのお父さんの会社を継いだ。そのことは記憶していたのだが、その後20年どうなったか知らずにいたが最近久しぶりの再会を果たした。東証一部上場企業で12期連続で増配しているサトーという会社の会長兼CEOの藤田東久夫(とくお)さんである。彼は上場企業のトップを務めながら早稲田ビジネススクールで昨年博士号を取ったそうで、それだけでもすごいことである。NTTドコモの辻村常務も東工大からこの3月に博士号を取得したというから、忙しくて勉強できないというのは言い訳にならないのかもしれない。
さて、今日はその藤田氏の話である。彼は自分の経営者としての経験と早稲田大学のビジネススクールでの研究の成果を元にして「たった三行で会社は変わる」というタイトルの本を今年初めにダイヤモンド社から出版した。

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その中にいくつかユニークなフレーズがあるので紹介しよう。p45に次のような文章がある、少し長いが引用する。『例えば何か社内に周知徹底しなくてはならないことがあるとする。中間経営層やサラリーマン経営者は、周知すべき対象者全員にそのことを伝える。むろん隈なく、そして詳しく伝えるだろう。だがその後は同じ話をくり返さない。なぜなら、「一度言えば分かる。分からなければ分からない奴が悪い、自分は周知徹底の仕事を遂行した」と考えるからである。「あ、また言っている」と思われるのを恥ずかしいとさえ思っている。企業家は違う。同じことを何度でもくり返す。一度言ったくらいで分かるはずがない。末端まで伝わったかどうか証拠が上がってくるまで執効にくり返す。相手が理解し、周知徹底がなされたかどうかが問題なのであって、自分が言ったかどうかは問題ではないからである。自分を賭けているのではなく、会社を賭けているからなのだ。』名文である。

BCGでも会社の中で何かを伝えようと思ったら、その対象となる人数の平方根(ルート)の数だけ、同じ話を繰り返さないと伝わらないという経験則をよく取り上げている。たとえば、10人の部下に自分の意図を浸透させようと思ったら、√10すなわち、3回はコミュニケーションを繰り返さないといけない。これがもし100人の組織習う√100=10になるので、10回コミュニケーションをすべきということになる。この場合はもちろん毎回全員に同じ話をするというわけではなく、100人の人に新しいことを浸透させようと思ったら、いろいろな機会を捕まえて、10回は同じ話をいろいろな人にことあるごとに伝える必要あるということになる。いずれにしても、経営者に必要なスキルの一つがしつこさであることは間違いないだろう。

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2007年4月 7日 (土)

柔らかなリーダーシップ(続き)

昨日紹介した柔らかなリーダーシップがなぜ良いのかと言えば、
①リーダーがすべて決めるのではなく、各自の自発性を尊重すると言うことは、すなわち一人一人に考えさせることになる。逆に言えば、現場や顧客接点で何か問題が生じたときや判断が必要なときに、現場が自分で考えて判断し、それがまた会社の方向性にそったものになっている可能性が高い。要するに反射神経(脊髄反射)で勝負できる。オペレーション仕事でマニュアル判断でよい場合別として、是々非々の判断が必要なときに全部本社、トップまで上がる企業に比べれば格段に変化対応スピードが速いだろう。あるいは顧客の満足度を高くできるとも言える。
②環境変化に対して強い
昨日も述べたように鋼の強さではなく、葦のようなものであるために強い風をかわすすべを知っており、ポキッと折れる心配がない。多少の逆風はやり過ごしたり、予想外の方向からの変化に対しても、柔軟に考えることが出来るリーダーである。
③後継者が育てやすい
カリスマ型の経営者をいだいたところは、その後の経営がうまく行かないことが多い。一つには前任者が偉大すぎて、後継者のなり手が見つからない。あるいは見つかったとしても、前の経営者と同じことをやろうとしてもうまくいかない。違うことをやっても以前のやり方が残像効果で残っており、うまく変われないなどの問題が生じる。
一方で、柔らかなリーダーシップの場合は、普通の人でも自分でも出来そうだと思い、なり手は比較的多く見つかる。あるいは、普通の経営者が経営しても大丈夫なような仕組みを作ることが可能である。ただし、柔らかなリーダーシップには柔らかなリーダーシップの難しさがあるので、誰が後継者になっても同じことが出来るとは限らない。

一方で、デメリットとしては、
①社員を強引にリードするのではなく、自発的に動き出すよう仕向けるのであるから、うまく回り出すまでにとても時間がかかる。
②ある程度の能力があり、自分で仕事を切り開いていこうという人間が少ないと、なかなかうまくいかない。そういう企業では、つべこべ言わずに俺の言うとおり働けの方がうまくいく場合がある。別の言い方をすれば、自律心のない社員が多いと成り立たないとも言える。

皆さんの意見を是非お聞かせください。

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2007年4月 5日 (木)

柔らかなリーダーシップ

20の引き出しのフォルダ解説のリクエストシリーズで、今回は「柔らかなリーダーシップ」である。これはまず、私の造語である。

通常、優れたリーダーシップといえば、クリアなビジョンを持ち、強力な力で組織を引っ張っていくカリスマ型の豪腕なイメージが強いと思います。これをカリスマ型リーダーまたは鋼のリーダーシップと呼びます。
例えば、日産自動車のカルロス・ゴーン、トヨタ自動車の奥田碩(前経団連会長)さん、GEの前会長ジャック・ウェルチなどマスコミに多く登場する経営者はほとんどがこのタイプです。
もちろん、企業存亡の危機にはこうした危機脱却のためのカリスマ型リーダーの必要性は否定しないが、私はあえてカリスマ型リーダーに異を唱えている。というのも、カリスマ型の経営者というのは、在職中は良いがその後に反動が来たり、大きな環境変化があったときの対応に問題があるような気がする。強引なリーダーシップで企業を大きく舵取りした結果、そう簡単には反対側に旋回出来ないのである。あるいは強いリーダーシップほど、ぽっきり折れてしまう可能性が高いと見ている。

代わりに、カリスマ型リーダーシップでないリーダーシップを「柔らかなリーダーシップ」と呼んでいる。

今日のように、環境変化の大きさとスピードが激しく、先が読めない時代には、カリスマ型の強引なリーダーシップより、実は風にそよぐ葦のような柔軟でかつ倒れそうで倒れないリーダーシップスタイルが求められていると思っている。
要するに、自分でがんがん主張し、強引に組織を引っ張っていくのではなく、人の話はよく聞くし、人にやらされ感を与えない。しかし、自分の信念はしっかり持っていてなかなかあきらめない。土俵際で踏ん張る貴乃花(先代)のようなリーダーである。そして、結局自分のやりたいことを実現してしまう。別の言い方をすれば、「お釈迦様の掌型」で人をリードするタイプとも言える。
こういうタイプのリーダーは目立たないし、マスコミ受けもしない(記事になりにくいということ)あるいはマスコミを避けているので世間に出てこないが結構いる。企業で言えば、エーザイ、一部の総合商社、リクルート、ユニ・チャーム、長島・大野・常松法律事務所などトップが前面に出てこなくても、組織に活力があり、業績が良い企業はその可能性が高いと思う。

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2007年4月 4日 (水)

機内食と駅弁(続き)

お陰様で、私のブログには企業の社長さんの愛読者がたくさんいます。その中のお一人より『機内食と駅弁』の話を読んで、下記のようなコメントをいただきましたのでご紹介します。

『ブログを拝見して思わずメールさせていただこうと思いました。機内食の有料化、いいですね。私はJALが国内線でJ-クラスを打ち出したときにまずいなと感じました。なぜなら、J-クラスのポジショニングがわかりにくかったからです。お客さまに大して平等という名の不公平さともって接客するより、公平という名のもとにお客様を区別しなければならない時代に入っていることの認識が足らないと感じました。J-クラスの導入によってJALは最も価格に反応しないビジネスエグゼクティブの客を逃し、ANAは逆にスーパーシートプレミアムのお客を搭乗手続きから区別することで、よりお金支払って高いサービスを求める顧客の開拓に力を入れてきました。両社の戦略の違いと明暗は明らかです。ここへきて、ようやくJALも国内線にファーストクラスの導入を発表したようですが・・・』
皆さんはどう思いますか。JALの方が、庶民(大衆)をターゲットにしていている分、パイも大きいのではという意見もあるかと思います。

さらに続けて『そういう意味ではJRのサービスはまだまだ顧客のターゲットに応じたサービスは出来ていないように思われます。特に新幹線は独占的なのでマイレージサービスのようなものも取り入れられていませんし、最も私が不満なのは、グリーン車のチケット購入のカウンターが別になっていないことです。50%以上も割増の運賃を支払うのに長い行列で待たされるか、自動販売機に並ばなければなりません。この辺がJRもまだまだホスピタリティーという概念に欠けたサービスレベルしかできていないと感じます。』

彼の会社は非常にブランド力のある商品を手がけているのですが、こうも言ってます。『私がブランドのマーケティングを通じて最近大切だと思うのは、「ホスピタリティー」です。商品をお買い求め頂いたお客様から、「ありがとう」という言葉を頂戴することが究極のマーケティングと考えています。お金を支払って商品を購入しているお客様から「ありがとう」という感謝の気持ちを返していただくことは稀だからです。消費財を製造販売する私どもも、サービス産業から学ぶべきものはたくさんあるなと痛感しています。』
これはどちらかというと
「本がおもしろくて、電車を乗り過ごしました。」「日本一ベンツを売る男の続編」にもつながる話だと思います。

おまけ

昨日より丸一日にわたって、システムがストップし、ブログのアップが出来ませんでした。一方で見ることは可能だったので、読者から見るとシステムダウンしていたのが分からないと来てます。こういうことって、システム的にはよく分かる(自分もITの経営コンサルタントをやってましたから)のですが、利用者にとっては迷惑ですよね。

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2007年4月 3日 (火)

働きながらMBAが取れる

今週から新学期である。私にとっては教授になって2年目の春と言うことになる。
この4月から、従来の昼間通学して2年間でMBAを取るMBAコース(通称早稲田ビジネススクール)私が昨年来世話になっている大学院商学研究科の昼間仕事を持っている人が夜間と土曜日を使って同じく2年間でMBAを取るコースが合体して一つのビジネススクールになった。
私が主に担当しているのは昨年度と同じ後者の方である。通称、プロフェッショナルコースというが正式名称は大学院商学研究科専門職学位課程ビジネス専攻マネジメント専修(夜間主)である。わかりにくいと思うが当然である、当の本人が説明できないのであるから。
でも働きながら2年間で経営学修士(MBA)が習得できるコースと覚えておいていただければ十分である。

実際にどんなことをやっているのかって?
もちろんビジネススクールであるから、通常の「経営戦略」、「マーケティング」、「人事・組織」、「財務会計」といった基本科目がたくさん並んでいる。
でも普通のビジネスクールとちょっと違うのは、コースの中がいくつかの専門分野(これをモジュールという)に分かれていて、入学前からどのモジュールに所属するのかを決めてしまう点にある。別の言い方をすれば、モジュール毎に入学者が決まるとも言える。
例えばこの4月から開講の2007年度モジュールでは「保険・年金マネジメント戦略」、「戦略的コストマネジメント」といった非常に専門性の高いものから、「マーケティング戦略」、「企業戦略系」といった汎用的なものまで7つのモジュールに分かれている。基本的なMBA科目以外に、かなり専門性の高い講義が追加で取れるようになっているわけである。
しかも全部で一学年の定員が45名しかいない上に、これだけのモジュールに分かれているので、講義当たりに参加する学生の数は数名からせいぜい20数名くらいできわめて密度の濃い講義が行われている。モジュールの詳細やその中の専門科目に興味のある方は、早稲田大学商学研究科のホームページを見てください。
ちなみに私の担当するモジュールの「市場競争戦略」は2006年度と2008年度開講であり、今年は新入生はいない(2年生のみ)。

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2007年4月 2日 (月)

20の引き出しのネタのため方

20の引き出しの中身や使い方を紹介してきたが、ここらで内田流ネタのため方を紹介しよう。ネタを貯めると言ってもあまりしっかりと作ってしまうと覚えたりしなければならず、こちらが使うと言うよりファイルに使われることになりかねない。そこで私の考えは、思い出せるものは使えばよいし、思い出せないものは使わなければよいまたはもともと使えないネタだったのだ思うことにしている。

具体的な方法は、下記にあげてあるように様々なソースからネタを拾い上げる。もちろんその場ですぐ使えるネタが手に入る場合もあれば、しばらく寝かしておくと熟成されてネタに昇格するものもある。あるいはいくつかの話を組み合わせてネタに仕上げることもある。

  • 新聞、雑誌
    • 切り抜く、破く 内田式透明袋ファイルへ
    • テーマ設定済みの場合
    • 何となく引っかかった場合
    • 線を引く、付箋を付ける、端を折る、書き込む
  • 人との会話、インタビュー
    • 必要に応じて、OKをもらう(外部で話して良いか)
  • 講  演
    • 例)サムソンの副会長から聞いた中途入社のはなし
  • 見た話
    • 企業を訪問して、現場を見たときの話
    • 街を歩いていて見聞きしたこと


新聞、雑誌、本のメモ術の所(「細身の優れもの」参照)でも紹介したが、私は線を引いたり、切り抜いたものをあとできちんとファイルしたり、デジタル化することはしない。面倒くさい上に、後で引っ張り出すのが大変だからだ。それより、これはおもしろい、役に立つと思ったら頭の中にマークするのである。街中を歩いていて気になる店があったら、そのとき軽く今度来てみようと思うのと全く同じ感覚である。それっきり忘れてしまうが、次にその当たりに来たときに思い出すこともあれば、あるいはイタリアンを食べたいと思ったときにふと思い出したりするというのと同じである。

 
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